Pick upアフリカで記事を書かせてもらっています。 2012年よりタンザニア在住です。 X → yuka_africa

タンザニアでは2025年10月29日に大統領選挙がありました。

日本でも報道されているように、抗議デモが各地で行われ、治安部隊の発砲により数百人が死亡しました。投票日の午後よりネットが数日にわたり遮断され、また外出禁止令が出されるなど、混乱が続きました。しかし、政府は選挙は自由かつ公正に行われたと主張し、デモは行われたが死亡者は20人であったと発表しています。

(参照:タンザニア大統領選めぐる抗議デモ、少なくとも240人を反逆罪で起訴 暴力的弾圧で多数死傷

このことに関して、ダルエスサラームに在住している筆者が実際体験したこと・感じたことなどを時系列でお伝えしたいと思います。

背景

まずは、背景をざっくりお伝えします。

タンザニアの大統領の任期は1期5年で、最大2期までと決められています。大統領の任期が2期までと定められてからは、通常2期務めるのが慣例となっています。前任のジョン・マグフリ大統領の急死に伴い、当時副大統領だったサミア・スフル・ハッサン大統領は、2021年3月に大統領に就任し、残りの任期を引き継ぎました。今回の大統領選挙は、このサミア・スフル・ハッサン大統領の再選をかけた大統領選でした。

主要野党の指導者が4月に反逆罪で逮捕され、他の有力野党候補も今選挙への出馬資格を剥奪された状態での選挙戦でした。候補者を出すことを認められなかった野党支持者が当初より抗議デモを行うらしいという話は聞いていました。

10月29日(水)投票日当日

この日は祝日になり、家から出ないように友人からも言われていたため、家で過ごしていました。タンザニア人の友人も投票に行くと言う人はほとんどおらず、デモ等に巻き込まれたくないので家にいるという人が多かったです。息子の学校もこの週は一週間休みになりました。ちょうど私の住んでいる通りに投票場が設置されたこともあり、外出はしないほうが良いだろうと判断しました。正午ごろより、ネットがつながりにくくなり、午後1時ごろにはネットが完全に遮断されました。ちょうどその前にピザのデリバリーをお願いしていて、配達してくれたお兄さんが、今日はデリバリーが多くて大変と話をしていました。やはり外出を同じように控えた人が多かったのだと感じました。

夕方ごろから、頻繁に何かが爆発する音や銃声が聞こえ始めました。状況が把握できていない息子が「花火だよきっと!」などと話をしていました。

電話もつながりにくく、何度もかけてやっとつながる状態でした。

10月30日(木)

ネットは引き続き遮断されている状態で、友人からの電話で近くでも銃撃をうけ亡くなった人が多数いるという話を聞きました。また抗議デモにより、多くのガソリンスタンドや高速バスの駅やバスなどが焼き討ちの被害に遭ったと知りました。来る予定だったお手伝いさんから電話があり、バイクやバジャジの運転手さんが恐がって大通りを渡ってくれないから遅れる、でもこちらに向かっていると連絡がありました。お手伝いさんは、何時間か遅れて無事に家に着きました。大通りに銃を持った警察が沢山いて、全く車の通りもなかったとのことでした。

近くのショッピングモールでも投石などで被害があり、激しい銃撃戦があったようでした。大通りには遺体が放置されている状態だったと、友人が教えてくれました。1日を通して、爆発音や銃声が近くで聞こえていました。

タンザニアのデモで焼き討ちの被害に遭って燃やされるガソリンスタンド
焼き討ちの被害に遭って燃やされるガソリンスタンド
タンザニアのデモで焼き討ちの被害にあった高速バス
高速バスの駅も被害に
タンザニアのデモ被害で黒煙や炎が上がっている様子
黒煙や炎があがっている様子

10月31日(金)

ネットは引き続き遮断されている状態。我が家にはテレビもないので、友人たちからの電話から得られる情報に頼っている状況でした。とはいえ、国内のテレビでは暴動のことは一切報じられていないということでした。この日も1日を通して、爆発音や銃声が近くで聞こえていました。

11月1日(土)

ネットは引き続き遮断されている状態。果物や野菜がなくなってきたので、バイクタクシーの運転手さんに状況を聞き、市場が少し空いているということで、お手伝いさんに買いだしに行ってもらいました。野菜、果物、牛乳などを購入しましたが、どれも大体倍の値段で売られている状態でした。銃を持った警察に見張られながら、皆買い物をしている状態だったとのことでした。また、ガソリンスタンドが空いていないため、闇で1L10,000Tsh(通常は2,750Tsh)という金額で販売されており、そのため色々な値段が上がっているようでした。

再度、お昼ごろに住んでいる通りに買い物に出ようとしましたが、ご近所さんに警察が棒を持って巡回していて、さっきも誰かが殴られていたから、早く家に戻りなさいと言われ、急いで帰宅しました。相変わらず、電話がつながりにくく、ショートメッセージも届いたり届かなかったりという状態が続きました。

サミア・スフル・ハッサン大統領の再選が決まり、投票率が97.66%らしいという突っ込みどころ満載の報道が政府からあったと友人から報告を受けました。

11月2日(日)

ネットは引き続き遮断されている状態。銃声などはたまに聞こえてくるが、大分減った印象がありました。とにかくネットが繋がらず現状が分からないこと、場所によっては食べ物の調達が命と隣合わせであることで、皆相当ストレスが溜まってきている状況でした。

明日、大統領就任式があるから、きっとこれで落ち着くという希望を皆持っていました。

場所によっては、まだ頻繁に銃声が聞こえてくる状況のところもあったようでした。

11月3日(月)

今日は、大統領就任式があるから、おそらくネットも回復するだろうという期待を胸に待ちました。午後に一斉送信で、尊厳を傷つけるような写真やビデオのシェアは犯罪にあたり罪に問われるという内容のショートメッセージが警察から届き、その後午後6時ごろにネットが戻ってきました。WhatsAppやインスタグラムなどの画像や動画の拡散に使われそうなアプリはVPNを使用しないと使えない状態でした。ちょうどこの時期にタンザニアを離れていた友人たちと安否確認がようやくできました。

11月4日(火)

ネットは不安定だけれども、使える状態でした。周りの状況をバイクタクシーの運転手に確認すると、ガソリンスタンドが開いているということで、自分のオフィスの様子も心配だったため、車を運転して外出しました。通常の平日と比べると、人通りや車の通りは10%くらいといったところでした。焼き討ちにあったガソリンスタンドや破かれた選挙ポスターなどから、実際に暴動があったことを感じさせられました。場所によっては、銃を持った警察が道路におり、徐行運転をしなくてはいけない状態でした。店もまだ多くは閉まっていてATMも使用できない状態で、早めに帰宅をしました。

タンザニアで暮らしはじめてから3人大統領が代わりましたが、今まで大統領選挙は比較的穏やかに終わっていました。(一部、暴動が起こった地域はありました)

ネット遮断も一時的にはありましたが、このように全く外部と連絡が取れなくなる状態が何日も続くことはありませんでした。近くから爆発音や銃声が聞こえてくる日が続き、改めて日本とは異なる環境に暮らしているのだなと実感させられました。

今回の被害者は暴動に参加した人たちだけでなく、食べ物がなくなり探しに外に出た人、家の中にいて撃たれた人、お金を稼ぐためにやむを得ず外に出た人たち等が多く被害に遭われました。また、行方が分からず今も家族を探している人が沢山いると聞きます。

 貯金もなく毎日の稼ぎで暮らしている人にとっては、物の値段が倍以上になったり、1日でも働けない日があるというのは死活問題であり、改めてこのような事態が発生した際、一番大きな被害を受けるのは経済弱者だなと感じました。実際、知り合いから食べ物を購入するお金をモバイルマネーでお金を送って欲しいという連絡が沢山ありました。

12月9日の独立記念日に再度デモを行うという話もあり、同じようなことが起こらなければいいなと祈るばかりです。

【追記】

11月21日にCNNより今回の大統領選挙投票日に起こったことを報道するドキュメンタリーが発表されました。それによると今回の抗議デモで亡くなった方は約2,000人とのことです。この報道後、タンザニア政府はCNNが虚偽の報道をしていると非難し、死者は20名であると発表しました。

また11月中旬に発表した新人事で、サミア・スフル・ハッサン大統領の娘が教育副大臣、義理の息子が保健大臣に任命されました。これにより、さらに緊張が高まっているのを感じています。

(参照:なんてことだ、これが我々のタンザニアか」CNNの調査が抗議者に対する警察の決定的な銃撃や、多数の犠牲者の姿を明らかに

かなりショッキングな映像になっていますので、見る際は気をつけてください。

タンザニアのデモで、停めていたトラックや車も焼き討ちの被害に遭っている様子
停めていたトラックや車も焼き討ちの被害に

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