「アフリカ外交シリーズ」を開始いたします!

こんにちは!Pick-Up! アフリカです。

本日から私たちPick-Up! アフリカは、アフリカと世界の国や地域との関わり方を分析するべく、「アフリカ外交シリーズ」を開始いたします!

このシリーズでは、ビジネスとも大きく結びついているアフリカの外交を、ミクロ・マクロ両方の視点から見ることを通して、現地のビジネス環境やアフリカと他の国々・地域との繋がりなどをお伝えすることを目的とします。ぜひご覧ください!

まず第一弾では、それぞれの国や地域とアフリカとの関わり方を分析する最初のステップとして、アフリカのFDI(対外直接投資)の全体像を、直近の20年間で比較してみたいと思います。

「次の投資先はアフリカ」と言われている中、各地域は実際にどのような形でアフリカに進出しているのでしょうか?


対アフリカFDI規模の変遷

FDIとは?

まず、FDI(Foreign Direct Investment)とは、海外直接投資とも言われ、海外の企業に対して行う直接投資のことを指します。

FDIの形態は主に2種類あります。一つ目は、新規投資(グリーンフィールド投資)と呼ばれるもので、投資先に現地法人や子会社を作り、現地工場や販路を1から作るものです。二つ目はクロスボーダーM&Aと言って、投資先の企業を買収する形態です。(参考記事

また、FDIの概念として、インフローストックという指標が使われます。インフロー=流入とは、指定期間に受け入れた投資額のことで、ストック=残高とは、外国人投資家が持つ株・純貸付の額を指します。 FDI は、経済間の安定した長期的なつながりを生み出すものとして考えられます。

対アフリカFDI規模の変遷

1990年代まで、アフリカ(特にサブサハラアフリカ)は世界経済から疎外され、2000年時点でFDIのインフローは世界のうちたったの1%合計で100億ドル弱でした。(ちなみに1970年代は約8億ドルでした。参考記事

しかし2000年代からアフリカ経済が好転し、新たなビジネスチャンスの場として目を向けられるようになったことをきっかけに、欧米、アジア、そして最近はインドからの直接投資が増加しました。

そして新型コロナを乗り越えた2021年には、アフリカに対するFDIインフローは830億ドル、世界全体のFDIの5.2%に到達しました。下のグラフからも、アフリカへのFDIがぐんぐんと伸びてきたことがわかります。

対アフリカFDIのインフローおよびストック額の変遷
対アフリカFDIのインフローおよびストック額の変遷(2000-2015) Source: Compact with Africa Fostering private long-term investment in Africa
地域別FDIインフローの変遷(1990-2017)※アフリカは四角の棒グラフ

※ちなみに、アフリカと同じく新興独立諸国が多いアジアは、世界のFDIインフロー総額のうち、2004-08年は18%、2014-2018年には30%を獲得しました。これは、アフリカと比べるとはるかに大きな額になっています。

投資先の変遷

2000年代は、南アフリカとナイジェリアへの投資額が、アフリカにおけるインフローのほとんどを占めていました。しかし2010年代から投資先が多様化し、特に東アフリカ(エチオピア、ケニア、タンザニアなど)および西アフリカ(ガーナ、ナイジェリアなど)への投資が急増し、一方で南アへの投資額が減少しました(下のグラフ参照)。東アフリカは、2004〜2008年にはアフリカ全体FDIの5%以下しか獲得していませんでしたが、2014-18年には30%以上を獲得したことがわかります。

このような多様化の背景には、国内の経済成長や治安改善、インフラ整備の進展などといった、ビジネス環境の改善があります。例えばケニアでは、2007年から国をあげて民営化が行われ、電気通信産業と鉄道敷設が進みました。また、エチオピアでは低賃金・豊富な労働力・マーケットの大きさが注目されるようになりました。このような要因が、ビジネス開拓の場として人気を集めるきっかけとなりました。

アフリカ大陸内における地域別FDI額の変遷(インフロー/ストック)(2004-2018年)

サブサハラアフリカの上位20カ国におけるFDIインフロー額(黒色:2000-2017年の平均、灰色:2000-2009年、白色:2010-2017年)

アフリカへの投資国の変遷

概要

2019年の対アフリカFDI額が大きかったのは、一位から順に、オランダ、イギリス、フランス、中国、アメリカでした。

アフリカに対する投資は、伝統的にはイギリスとアメリカが上位を占めていました。今もヨーロッパが最大の投資元である(2021年の対アフリカFDIストックはイギリスが650億ドル、フランスが600億ドルにのぼる)という事実は変わらないものの、近年は中国・インドを中心とするアジアからの投資が増え、ヨーロッパ・アフリカが占める割合は減りつつあります。実際、2018年はアジアがヨーロッパに次いで2位の投資額を誇りました。

対アフリカFDIストックの国別ランキング(1-30位、2014-2018年)

各地域ごとの変遷

欧米

ヨーロッパ

ヨーロッパからのFDIは2002年は全体の3/2以上を占めましたが、2018年には50%以下に減少しました。

現在はオランダ・フランスが多額を投資しています。2014-2018年には、アフリカ全体のFDIストックの24%をオランダとフランスが占めています。オランダは2010年代に投資額を急増させ、2004-2008年にはアフリカにおけるFDIストックの6%しか占めていなかったのが、2014-2018年には16%まで増えました。

他方、イギリス・アメリカは減少傾向にあります。イギリスは2004-08年にアフリカにおけるFDIストックの17%、アメリカは15%を占めていましたが、両方とも2014-2018年には6%まで減少しました。

アメリカ

アメリカは、2000-2020年における対外投資総額のうち、たったの1%しかアフリカに充てておらず、そのプレゼンスは低下しつつあります。

また、投資分野に関しては、2000-2014年は50%以上を採掘が占めていたものの、2020年には32%まで下がりました。これは、自国での石油・ガス生産が増えたことが背景にあります。

一方、増えている投資分野は食品の製造業です。食品部門の中でも、ソフトドリンクとアイス、菓子、砂糖、穀物、油料種子、スナックに力を入れています。この背景には、アフリカでも食の多様化が見られ、加工食品の需要が増えたこと、そして都市化・インフラ整備によって運営コストが低下したことがあります。

アジア

アジアの対アフリカFDIストックは、2002年は5%でしたが、2018年は23%になりました。このストックの半分以上は、中国によるものです。ここでは、代表的なアジアの投資国の特徴を見ていきます。

中国

中国は2003年からアフリカへのFDIを増加させ、そのストックは2020年までで100倍に増加しました。中国といえば、アフリカの天然資源を目的に進出しているイメージが強いですが、資源国のみならず非資源国(エチオピア、ケニア)にも多額を投資しています。

天然資源やインフラだけでなく、サービス業、科学研究、技術サービス、交通、倉庫、郵便など広範囲な分野に投資しています。そして新規投資(グリーンフィールド投資)への割合が大きいのも特徴です。

特に、建設部門(中国が運営する特別経済特区、有料道路、橋)への投資は総投資額の35%を占め、電気網やエネルギーインフラなどは中国が力を入れている部分です。

中国は、アフリカの16カ国・25箇所に経済貿易協力ゾーンを設け、そこで623のビジネスを行っていますが、ビジネスを通して天然資源、農業、建設、ロジスティクスの産業化を促進しています。

インド

インドは、近年の経済成長に伴い、中国に対抗する狙いでアフリカへの進出を推し進めています。インドからアフリカへのFDI額は、2004-2008年はアフリカにおけるストックの0.4%しか占めていませんでしたが、2014-2018年には4.2%にまで増加しました。

インドでは、サービス業が対アフリカFDIの75%を占めているのが特徴的です。2017-2019年において、インドの対アフリカFDIのうち、44%が輸送・貯蔵・通信サービス、20%が金融・保険・ビジネスサービス、15%が製造業で、そのほかに農業、採掘などにも投資しています。

インドの主な投資国はモーリシャスで、その額は8割以上に上りますが、これはモーリシャスが取っている投資家への厚い優遇税政策により、投資の経由地として使われているという背景があります。

日本

日本は2014-2018年において、アフリカに対する世界20位の投資国でした。また日本の貿易額の規模​​は10年前と比べ半分になり、急成長している中国と比べると1/10と差が開いています。(2018年時点)

そこで既存のODA援助によるアフリカとの関わり方の限界を感じた日本は、投資を通した新しい関わり方への方向性を打ち出しました

特にTICAD8(2022年開催)では、今後3年間で300億ドル規模の資金を投入し、人材育成や持続的な開発を念頭とし、スタートアップ、開発金融、保健・衛生、食糧安全保障などに投資することを宣言しました。

アフリカ諸国

アフリカ大陸内でも投資が盛んに行われており、その割合は増加傾向にあります。

中心となっている投資国は南アフリカとモーリシャスで、特に南アは2004-2008で年平均120億ドル、2014-2018は340億ドルを投資してきました。

対アフリカFDIストックの投資元の内訳(地域別、2004-2018年)

投資分野の変遷

最後に投資分野の変遷を見ていきます。アフリカでは、以前は天然資源への投資が大きい割合を占めていました。2006-2010年には、新規投資プロジェクトの半分以上が、資源採掘・石油・石炭加工のプロジェクトに充てられていました。しかし2016-2020年には4分の1以下になり、投資分野の多様化が見られます。

特に飲食、再エネ、ITサービス、製造業などといった分野への投資が増えている傾向があります(グラフ参照)。

新規投資プロジェクトのうち各分野が占める割合(2006-2010年)
新規投資プロジェクトのうち各分野が占める割合(2016-2020年)

終わりに

いかがでしたでしょうか?今回は、各国・地域のアフリカへの関わり方を、FDI=ビジネスの視点から概観しました。

アフリカが世界経済の仲間入りを果たした当初は、ヨーロッパが突出して投資していましたが、近年の動向を見ると、アジアのプレゼンスが増していることが分かります。またアフリカへのFDIは急増しており、ビジネスチャンスとして注目され、天然資源に限らずさまざまな分野に投資されています。

また、こちらの記事『世界とアフリカ、日本とアフリカのこれから』Pick-Up! アフリカを運営しているレックスバート・コミュニケーションズ株式会社の田中秀和代表取締役による寄稿では、各地域の動向、そして今後の日本の展望がまとめられています。あわせてご覧ください!

今後は、順番にそれぞれの国・地域、あるいは分野にフォーカスし、アフリカの外交を掘り下げていきます。お楽しみに!

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