主記事:https://africamda.org/wp-content/uploads/2022/06/Benchmarking-Africa-Minigrids-Report-2022-Key-Findings.pdf

こんにちは。Pick-Up!アフリカをご覧いただきありがとうございます。今回は近年アフリカで注目が集まるミニグリッド(小規模な発電系統)に関してコラムを執筆しました。上記のレポートの内容をご紹介しながら、電力アクセスの問題を改善する上でのミニグリッドのポテンシャル、その普及に向けた取り組みや今後の課題など、アフリカのミニグリッドにまつわる状況を全般的にご紹介していきたいと思います。

アフリカの電力事情

本題に入る前に、まずアフリカの電力アクセスの状況についてお伝えしたいと思います。

アフリカでは深刻な電力アクセスの問題が存在しています。実際にこちらの記事では、現状サブサハラアフリカでは約5.6億人が電力にアクセスすることができず、また、世界規模で見た場合、世界で電力を利用できない人口の80%がアフリカに居住しているというデータが示されています。また他の調査では、現状の普及ペースだと2030年時点でも5.9億人のアフリカ人が電力を利用できないという推測がなされています。

こうしたアクセス不足の原因としては、政府や公営企業が運営する大規模発電系統(火力、水力といった大規模な発電施設とその送電網)の整備が多くのアフリカ諸国において不十分であることが挙げられます。実際にルワンダでは、2022年時点でこうした電力網へのアクセスがある人口は全体の47%にとどまっているとこちらのデータで示されています。

この理由として、以前の記事では大規模発電系統の整備にまつわる様ざまな課題をご紹介しました。具体的には、大規模な発電系統の整備には莫大な資金がかかる上、政府の汚職も相まって必要な資金が集まらないこと、政府や様ざまなステークホルダーが関わるうえ、規模が大きくなるために意思決定や建設に多大な時間がかかることが課題として挙げられ、そのために整備が十分には進んでいません。

ミニグリッドとは?ーそのポテンシャル

ミニグリッドとは、大規模発電系統とは別の小規模な電力源と送電網を用いて、特定の地域のみに電力を届ける発電網のことを指します。電力源としては、太陽光や風力などの自然エネルギー、時にはディーゼル発電などが用いられますが、日光の強いアフリカでは太陽光を用いたソーラーミニグリッドが主流となっています。

今回ご紹介するレポートでは、このミニグリッドが不十分な大規模発電系統に打って変わり、安定した電力アクセスを拡充するポテンシャルを持っているという主張がなされています。こうしたミニグリッドのポテンシャルを裏付ける理由としては主に以下の3つを挙げることができます。

1.コストエフェクティブネス

コストダウンにより現状では1キロワット時あたり約0.4ドルであるミニグリッドの発電コストが2030年には0.2ドルまで減少し、これが人口の60%にとって最も低コストな発電方法になるという推測がなされています。そのため、ミニグリッドが農村部の貧しい人々に対して電力を拡充することができるようになると考えられています。

2.スピーディーな普及

ミニグリッドは政府、公営企業が運営する大規模発電系統とは異なり、民間企業や小規模な団体が参入しやすいため、こうしたアクターによる迅速な普及が可能だと考えられます。

3.安定供給

またレポートでは、ミニグリッドによる電力供給の安定性についても言及されています。具体的に、ナイロビとナイジェリアでの調査では、国の電力系統がミニグリッドと比べて1.75倍停電を起こす回数が多く、ミニグリッドの電力供給の方が大幅に安定性が高かったことが示されています。

ミニグリッド普及の取り組み

こうしたポテンシャルを踏まえ、近年アフリカでは国際機関、政府、民間団体、民間企業など様ざまなアクターによりミニグリッドの普及に向けた取り組みが行われています。ここではそのうちのいくつかをご紹介していきます。

1.国際機関ー世界銀行

今回の記事では、世界銀行によるミニグリッド普及のための活動について示されています。具体的には、世界銀行が今後7年間に行われる38のプロジェクトに対して14億ドルの資金提供を行ったということが記事では紹介されています。この資金提供により、2029年までに3000台のミニグリッドを新たに設置し、1.3億人に対して電力へのアクセスを提供することが目標とされています。

2,国際機関ーUNDP

UNDPはアフリカ開発銀行や後にご紹介するRocky Mountain Institute(RMI)と提携して、African Minigrids Programme (AMP)を実施しています。このプロジェクトでは、約4000万ドルの資金を用いて、アフリカの21カ国においてミニグリッドの普及に向けた技術支援が行われます。そのうち、先月このプロジェクトが開始されたブルキナファソにおいては175万ドルが割り振られており、政府と協力して2027年まで地方でのミニグリッド普及に向けた取り組みが実施されるようです。

3.政府ーケニア政府

ケニア政府は世界銀行から150万ドルの投資を受け、大規模送電網の恩恵を受けられていないエリアに電力を普及するため136箇所のソーラーミニグリッドを新たに建設することを決定しました。このプロジェクトにより、学校や病院を含む567の公的施設に電力が提供され、またケニアの22万世帯、約150万人へ電力アクセスが提供されるようになると推測されています。

4.民間団体ーRocky Mountain Institute

AMPでUNDPと提携しているRMIは、ナイジェリアにおいてSharing Power Projectという地域レベルの活動を主導しています。具体的に、この組織は現地のソーラー発電システム提供業者であるNayo tropical technologies、Prado Powerとの提携、またthe Dutch Postcode Lottelyからの資金提供を受け、ソーラーミニグリッドの普及により農村部に電力アクセスを提供しようとしています。

5.民間企業ーHusk power

インド系の企業であるHusk Powerは、アフリカの中で最も影響力のあるソーラーミニグリッド提供業者であると言えます。この企業はアジア、アフリカ合わせて200以上のコミュニティーにソーラーミニグリッドを提供しており、アフリカで初めてミニグリッド事業の黒字化に成功しました。また、この企業は新たに9000万ドルの資金を集め、アフリカの新たなマーケットに進出しようと目論んでいることがこちらの記事では示されています。

取り組みの成果

この例のようなこれまでのミニグリッドの普及の取り組み全体が近年成果を上げ始めていることがレポートでは示されています。

まずミニグリッド発電施設の設置数は、サブサハラアフリカにおいて2010年の500基から現在3000基以上まで増加し(記事)、また大陸全体でミニグリッドの送電網への接続がある家庭や施設の数は2017年の5044施設から2021年には78271施設にまで増加したとレポートでは述べられています。

またコストダウンについても効果があったと述べられています。具体的には、規模の経済や運営の効率化により、ミニグリッド事業の事業運営費が2019年から1年で30%から60%低下したとレポートでは示されています。

また、こうしたことはミニグリッド事業の利益増加につながったとされています。具体的には2019年から2020年にかけてサービスユーザーごとの平均利益が1.93ドル上昇し、全体のうち70%のミニグリッドで利益が向上したと述べられています。

今後の普及に向けた課題

こうした成果が見られた一方で、十分な普及のためにはまだまだ課題があるとレポートでは述べられています。実際、世界銀行は2030年までにアフリカの3.8億人に電力を供給するため、16万台のソーラーミニグリッドを設置することを目指していますが、現在のペースでは2030年までに12000台のみしか設置されないと述べられています。

レポートでは、普及ペースを上げるために改善すべき課題として、2つのことが挙げられています。

1.ミニグリッドに関する政策の改善

現状アフリカでは政府からミニグリッドの設置許可を受けるために平均して58週間が必要であり、これがグリッドの設置ペースの改善を大幅に妨げています。実際、年間50基以上のミニグリッドの設置をライセンス化できているのはシエラレオネのみであり、これを改善するための規制緩和やプロセスの簡略化が必要だと考えられます。

2.ファンドレイジング

また、ミニグリッドの普及のために十分な資金が集まらないことも課題として挙げられています。実際にこちらの記事では、12万台のソーラーミニグリッドの設置には910億ドルが必要な一方、90億ドルほどしか投資が行われないのではないかという予測がなされています。レポートでは、十分な普及のためにはさらなる譲与的融資が必要となると述べられています。

様々なアクターの協力でこうした課題を改善し、ミニグリッドがアフリカで順調に普及していくことに期待したいです。


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