アフリカ：ドローンでヘルスケアに革命を起こしている企業【Pick-Up! アフリカ Vol. 30：2022年5月10日配信】

題：ルワンダの血液輸送に革命を起こすドローン

英題：Drones Have Transformed Blood Delivery in Rwanda

記事リンク：https://www.wired.com/story/drones-have-transformed-blood-delivery-in-rwanda/

内容と背景：

こんにちは！Pick-Up!アフリカをご覧いただきありがとうございます。

本日は、医療分野におけるアフリカのドローン産業の現状をご紹介します。

こちらの記事で以前、アフリカでは特に遠隔地で医療サービスが不足していることをご紹介しましたが、その原因の１つとして、インフラの欠如による医療物資の供給不足が挙げられます。

具体的には、まず輸送時間の問題が挙げられます。道路インフラの欠如によって車での物資の輸送に時間がかかるため、農村部では緊急で必要な物資の供給が間に合わなかったり、慢性的に物資の供給が不足することがあったと今回の記事では述べられています。

また、こちらの記事で紹介されているように、コールドチェーンの欠如も遠隔地への物資の供給を妨げてきました。ワクチンや血液などは低温で保管される必要がありますが、適切な冷凍保存状態を保ちながら輸送する技術が未発達なため、遠隔地にこれらの物資を届ける事自体が困難であることが示唆されています（参考記事3）。

さて、今回の記事では、Ziplineという企業のドローンによる医療物資の輸送がこうした問題を改善していることがデータを用いて紹介されています。

Ziplineのドローンの有用性

この企業は、2016年にルワンダでドローンを用いた輸血用血液や薬物の輸送ビジネスを開始したスタートアップです。5年間で13000回以上の輸送を行ってこの新たな技術の実用化に成功し、最近ではファイザーやBioNtechと提携してガーナでコロナワクチンの提供を行い、既に100万人分の配布に成功しました（参考記事4, 5）。

記事では、ルワンダでの血液の輸送時間がこうしたZiplineのドローンによって大幅に減少したことが紹介されています。具体的に記事では、車での血液輸送が平均2時間かかるのに対してドローン輸送の半分が41分以下で目的地に到着したとされています。そのうえ、ドローンが配達できる範囲はルワンダ全体の80％を占めるため、物資が不足しがちな地域にもスピーディーに安定供給ができるようになったことが示唆されています。

また、20℃以下での保存が義務付けられているファイザーのワクチン供給の成功は、ドローン輸送においてコールドチェーンが確立されたことを意味しています。実際に、Ziplineはファイザー、BioNtechからの支援を受けて−90℃から−60℃の間でのワクチン管理に成功し、遠隔地までワクチンを届けることが可能になったとこちらの記事では紹介されています。

盛んになるドローンビジネス

このような実績を通してZiplineのドローンの有用性が認められる中で、最近では他の企業もアフリカ医療分野でのドローンビジネスに参入してきています。

今回は、その中でもオーストラリアのSwoop Aeroの事業をご紹介します。こちらの記事によると、近年この企業が他の団体や企業と提携してモザンビーク、コンゴ民主共和国、マラウイで事業を拡大しているようです。

特にマラウイでは、アメリカのUPSやVillageReachと提携して300万人に医療物資やワクチンの輸送サービスを提供する見込みであることが紹介されています。さらに、ＵPSとの協働で緊急災害管理および捜索救助活動のためのドローンの実用化も目指していると記事では述べられています。

Swoop Aeroは今後もアフリカ進出を強め、2025年までに1億人に対してサービスを提供することを目標としています。こうした形で、アフリカ、ヘルスケア分野でのドローンビジネスは加速していくと考えられますが、アフリカでの成功を通して先進国に事業を展開する流れも同様に存在します。

実際に、先ほど紹介したZiplineはアフリカでの活躍が注目され、2021年11月に小売り大手のWalmartと提携して商用サービスを開始し、日本の五島列島でも豊田通商の協力で配達サービスを開始しました（参考記事7, 8）。

従来は先進国がアフリカに対して事業を拡大していくのが主流でしたが、今後はZiplineのようにアフリカから拡大するビジネスも増えていくのではないかと思います。今後のドローンビジネスの展開には目が離せません。

今後、農業分野でもドローンに関する記事をご紹介する予定です。そちらもぜひご覧ください！

また、アフリカ進出に関するご相談がございましたら下のリンクからお問い合わせください。

参考記事：

1.アフリカの医療問題を改善する遠隔医療ーその期待と課題とは？【Pick-Up! アフリカ Vol. 18：2022年3月22日配信】-Link

2.コールドチェーン網の形成：ナイジェリア起業家へのインタビュー【Pick-Up! アフリカ Vol. 117：2021年2月26日配信】-Link

3.医療用や血液バッグの低温・定温輸送に求められる厳しい条件-Link

4.Zipline, Pfizer and BioNTech Collaboration Paves the Way for Automated, On-Demand Delivery of First mRNA COVID-19 Vaccines in Ghana-Link

5.Zipline delivers 1 million COVID-19 vaccines in Ghana-Link

6.UPS, Swoop Aero partner to broaden medical drone deliveries in Malawi- Link

7.長崎県五島列島で医療用医薬品のドローン配送事業を開始-Link

8.ZiplineがWalmartと米国で商用ドローン配送、アフリカで実績-Link

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