アフリカのデータギャップを調べる:死者を数えないことの代償とは?

英題:Measuring Africa’s Data Gap: The cost of not counting the dead

記事リンク:https://www.bbc.com/news/world-africa-55674139

内容と背景:

昨日、タンザニアの大統領の死が伝えられました。記事にもありましたように、2月下旬から公の場に姿を見せていなかったことから、コロナなのでは?という噂が国内外でも広がっていました。

また、昨年6月にもこちらでお届けしました、ブルンジの当時の大統領の死もお伝えさせていただきましたが、その際もコロナなのでは?というような意見も聞かれました。両者とも心停止、心臓病などの病気が伝えられました。

そんな中で今回ご紹介しますのは、BBCの記事です。この記事では、そもそも死者登録を義務付ける仕組みがないというものです。記事では54か国中、たった8か国でしか同システムがないとしています。

また、世界に目を向けると、ヨーロッパでは2か国(アルバニアとモナコ)が、アジアでは半数の国でしかユニバーサル死亡登録システムを持っていないという国連の調査結果を共有しています。

そして、アフリカでは、エジプト、南アフリカ、チュニジア、アルジェリア、カーボベルデ、サオトメ・プリンシペ、セーシェル、そしてモリシャスの8か国が同様のシステムを持っているとしています。

ただ、国連の調査があった国々では「何かしらの」死者登録システムは持っているものの、紙ベースのものであり、デジタルなどではアクセスできないような状態のことが多いともしています。

しかし、数年前にアフリカで流行りました、エボラ伝染病の際に、「誰が」、「何が原因で」、そして「どこで」亡くなったのかを知ることが重要になったことを例にあげ、今回のコロナの場合も同様にこれらの点を知る・明らかにすることが重要としています。

そして、国民の出生登録がしっかりと行われていないことにもふれ、これが母子の死亡の登録などにも影響を及ぼすだろうとしています。

国連人口基金(UN Population Fund)の人口統計学者のRomesh Silvaさんは「生きている人を助けるためには、死者を数える必要がある」と話し、死者を数える必要性の高さを話しています。そしてさらに、このような出生などの登録が漏れてしまう人たちのが貧困層にいること、そして社会的にも疎外されていることが多いことを指摘し、彼らの死因を把握できないことで、時に社会で起こっていることを把握できずそれに取り組むことができないことに繋がるとしています。

カナダに本拠地をもつ、Centre of Excellence for CRVS(Civil Registration and Vital Statistics) Systemという団体のIrina Dincuさんによると、「CRVS(住民登録・人口動態統計)システムは機能不全にあり、各国政府が様々な機関が行なった調査などに依存してしまっていて、それらのデータが参考にする時にはすでに古いものになっている」と話しているように、各国での出生・死亡登録などが世界的にもしっかりと仕組みとして作りきられていない様子を語っています。

そして、この記事が一番言いたいのは、アフリカでのコロナの感染者、そして死者数の把握が行われていないのではないか?という問題提起です。アフリカでの死者の記録が世界の様々な国と比較し低いことに触れ、CRVSシステムがしっかりと整備されていないことで、超過死亡率(Excess death)による死亡件数のデータが効果的に得られないことに繋がり、それにより、社会における、死亡の原因やその影響などを全体的に把握できないことに繋がるとしています。

ある一定期間の死亡者数を、同時期の違う年と比較することで、実際に天災や疫病などが原因の死亡者数がどれだけなのかを把握することができるのですが、このためには、その時期の死亡原因がしっかりと登録されている必要があり、そうでない場合は、今回のようなコロナが原因での死亡数がどれくらいなのかわからなくなってしまうのです。

Lancetの中低所得国118か国で行なった研究によると、コロナによる死亡件数は、約115万人の子供の死亡件数、そして5万6千件の産婦死亡件数の追加に繋がるのではないかとしています。

実際、様々なコロナに関するデータの中で、アフリカでは南アフリカやエジプトでの死亡率が他の国々よりも相当多いように見受けられますが、これは彼らがしっかりとした登録システムを有しているからとも言えるのかもしれません。

記事では、南アフリカと、エジプトの死亡に関するデータを共有しており、そこから、コロナと診断された死亡であったり、コロナによる死亡(普段の検診が受けられなかったなど)の数、そして、死亡予測とそれらを比較し、昨年の死亡に関する様子がわかるようになっています。

記事ではさらに、アフリカでは、14か国では10の死亡件数のうち、1件しか実際に登録されていないだろうとしており、さらには、サブサハラアフリカの半数の国では手書きの記録しかないとしています。そしてエリトリアやブルンジなどではそもそも死亡者を記録することを義務付けていないことを指摘しています。それもあり、エリトリアではコロナによる死亡は7件、ブルンジでは3件しか報告されていないという状況に至るのです。

記事では、これまで行われてきた取り組みとして、BBCとアフリカ経済委員会(UN Economic Commission for Africa: UNECA)の研究で死亡登録システムに関する包括的な調査を行なったとしています。中央アフリカ共和国でのCRVSシステムが全く機能していない(2017年の死亡者のうち2%しか登録されていない)が、近年それを改善しようとしていることや、セネガルやルワンダがVital StrategiesというアメリカのNPOとのパートナーシップで、そして、トーゴ、ブルキナファソ、シエラレオネ、リベリア、ガーナがAfrican Field Epidemiology Network(アフリカ実地疫学ネットワーク)というNGOと同システムの改善に取り組んでいることを共有しています。

国によってそれぞれの方法で、この死者に関するデータを集め、記録する方法を確立しようと試みているともしています。そして、ウガンダではモバイルアプリケーションを導入してこの記録を取ろうとしているとも共有しています。

これらの社会問題にどのように取り組んでいくのか、そしてイノベーションがどのように関わっているクノか楽しみなものです。

実際、アフリカでは様々なデータが足りないと言われていますので、この出生・死者の登録からさらに多くのデータが効率的に取られることが期待されます。


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