毎週火曜日はアフリカから農業関連の話題をご紹介していますが、本日はサハラ以南アフリカで灌漑農業を促進しようとする米国からの取り組みをご紹介しています。

ぜひ関連記事と合わせてお読みください。


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記事:「ネブラスカ大学:サハラ以南アフリカでの灌漑農業促進に向けて動く」

「Nebraska team aims to improve irrigated ag in sub-Saharan Africa」

記事リンク:

https://news.unl.edu/newsrooms/today/article/nebraska-team-aims-to-improve-irrigated-ag-in-sub-saharan-africa/

内容と背景:

本日ピックアップしている記事によりますと、現在米国の州立大学、ネブラスカ大学 Daugherty Water for Food Global Institute(DWFI)に所属する研究者らが、サハラ以南アフリカにて灌漑農業を取り巻くビジネスエコシステムを向上させようと、ルワンダを足がかりに取り組みを実施しているようです。

DWFIの政策責任者であり、ネブラスカ大学リンカーン校の農業経済学教授でもあるNicholas Brozovic氏の話によれば、気候変動が進むなか増加する人口を十分に養う必要性に迫られている現代では、持続可能な灌漑農業の拡大は食糧と栄養の安全性改善と、回復力のある農村経済構築を実現するための重要な道筋であると考えられています。

しかし記事では、アフリカでは既存の灌漑システムのメンテナンス不足や水利組合の低いパフォーマンスが原因で、灌漑農業の採用は世界の他の地域に遅れをとっているのが現状であると紹介されています。さらに、灌漑農業の普及が進んでいない要因の一つとして、これまで行われてきた研究が顧客のニーズ、マーケティングチャネル、顧客の獲得、また専門知識普及のサプライチェーンなどに関連する潜在的な問題を考慮せずに、灌漑農業の収益性分析に焦点を当ててきたことが挙げられています。

そんななか、記事の冒頭では灌漑農業の成功には農民や技術の力だけでなく、灌漑農業を取り巻く強靭なビジネスエコシステム(企業間の連携)の構築が必要であるとの見解が示されており、エコシステム構築を支援する動きとしてDWFIのプロジェクトを紹介しています。

記事によると、DWFIは数年前から新しい農業保全研究所の支援を含め、ルワンダで長期的な取り組みを行ってるようです。また今年初め、DWFIに所属する研究者らはサハラ以南アフリカにて小規模農家の灌漑に関する教育とアクセスを促進する目的で、国連の専門機関の一つである国際農業開発募金(IFAD)から3年間に渡る100万ドルの助成金を受け取っています。

記事によると、DWFIはこの助成金を活用し、今後エチオピア、ブルンジ、セネガル、ニジェール、ザンビアと、サハラ以南アフリカの他の5カ国でも同様のアプローチを取る計画のようです。さらに最終的にはこの中から3カ国がより多くの研究やトレーニングを行う国として選定され、他の周辺国での採用拡大に向けて、新しい灌漑ビジネスのテストが行われる見込みのようです。

助成金を受け取った主任研究者であるBrozovic氏は、農民主導である灌漑の規模や持続可能性を理解するには、農民だけでなく、農民が顧客となるすべての企業の視点を取り入れなければならないとの見解を示し、DWFIのプロジェクトの入り口は農民ではなく、サプライチェーンやマーケティングチェーンを含むより広範な農業システムの人々であると述べています。

またBrozovic氏は、灌漑農業のさらなる普及には小規模農家が灌漑にアクセスするのを支援するために使用されているビジネスモデル自体の理解、またどのようなビジネスモデルがどのような理由でうまく機能しているか、理解することが求められていると述べています。さらに、ビジネスモデルに関する知見を別の国に移す際の方法を考えることも重要であると述べています。

今後の5カ国へのアプローチ拡大に関してBrozovic氏は、それぞれの国でまず灌漑を取り巻く起業家エコシステムを研究することから始める予定であると述べています。具体的には、農民がどのように灌漑を行っているのか、何が機能していて何が機能していないか、イノベーションの最先端はどこにあるのか、政府の政策がどのようにイノベーションをサポートしているのか、また潜在的に妨害しているのか、ビジネストレーニングや起業家トレーニング、能力開発を提供する方法に関して詳細な調査を行う計画のようです。

コロナウィルスの蔓延が人と人との移動を制限し、各国の農業セクターにも少なからず影響を与えているなか、ルワンダを足がかりに他の周辺国へもアプローチを拡大させていくには大きな体力が必要であると考えられます。ただ、Brozovic氏は専門家やパートナーのもつ文化的知識やデジタルスキルセットを活用し、YoutubeやWhatsAppなどのプラットフォームを使用して一連の他言語プログラムやトレーニングを作成することで、対面時よりも多くの人々にリーチしたいと考えていると述べ、コロナ禍でも周辺国へのアプローチ拡大に向けて積極的な姿勢を示しています。

関連記事によると、灌漑は雨季と乾季のサイクルを排除し、一年中にわたる作付けを可能にします。天水を使用する農民が通常1年に1つの作物しか栽培できないのに対し、灌漑業者は1年に3つ以上の作物を栽培することができます。したがって、灌漑を行う大規模な商業的農業生産者は典型的な小規模農家と比較し、4~10倍の収穫量を得ることができると言われています。

このように、農業生産性を向上させ、収穫量を増大させるために重要なアプローチである灌漑ですが、世界全体の農地の20%が灌漑されているのに対し、サハラ以南のアフリカでは農地のわずか5%しか灌漑されていません。サハラ以南のアフリカでは労働人口に占める農業セクターの従事者が多く、その従事者に占める小規模農家の割合も非常に高いものとなっています。灌漑を活用し、農業生産性が向上すれば、小規模農民の収入が向上するだけでなく、国のGDPへの貢献度合も高まると予想されます。

灌漑農業を取り巻くビジネスエコシステム全体の改善に焦点を当てている点がDWFIの取り組みの優位性であると考えられます。今後のルワンダ周辺国へのアプローチ拡大にも期待したいところです。

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