なぜ農業は若者にとって魅力的な産業になれないのか?

Why agriculture remains unattractive to youth – Heifer report

記事リンク:

https://www.standardmedia.co.ke/farmkenya/article/2001420456/why-agriculture-remains-unattractive-to-youth-heifer-report#

内容と背景:

アフリカ大陸における農業分野は、サブサハラアフリカのGDPの約30%、アフリカ大陸のGDPの約32%、アフリカ全体の労働力の約54%を占めるように、重要な産業となっています。また、アフリカ大陸の人口の約60%が25歳以下であり、アフリカ大陸が発展していくためには、若者たちの力が不可欠です。今後さらに人口が増加すると予測されているアフリカ大陸では、食料供給や雇用の面から、農業はますます欠かすことのできない分野になるでしょう。

そうしたなか、本日ピックアップいたします記事では、「アフリカの若者が農業に対してそれほど魅力を感じていない」ということが指摘されていました。このことは、Heifer Internationalが実施した、“The Future of Africa’s Agriculture – An Assessment of the Role of Youth and Technology” と題した研究によって明らかになりました。

こちらの研究は、零細農家の農業生産性の低下と収入の減少をもたらしている課題を理解すること、また、アフリカの若者が農業活動に積極的に参加するうえでの障壁を特定し、彼らの参加を促進・改善するための解決策を提案することを目的としています。ウガンダ、エチオピア、ガーナ、ケニア、マラウィ、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、タンザニア、ザンビア、ジンバブエの11カ国の3万人の若者と、新興企業や零細農家などの50のステークホルダーが対象となり、アフリカ大陸の広い地域で実施されました。

研究報告によりますと、イノベーションとテクノロジーを活用した様々な社会課題解決の台頭が若者を農業から遠ざける上で大きな要因となったと共有しています。また、多くのアフリカの国で、若者たちは農業に従事する代わりに都市部へ移住し、”white-collar job”といわれる仕事(オフィス環境のなかで行われる、コンピューターを用いた仕事や行政に関わる仕事などのある程度のトレーニングや教育を必要とする専門的な仕事)に就くことを希望しているなど、若者の就職希望職種の変化も影響しているようです。

こうしたアフリカの若者の農業分野への消極的態度は、従来と比べ土地へのアクセスが困難なことが1番の要因となっており、この要因を構成する細部化された原因の中でも資金不足が大きな障壁となっているためだと研究報告では指摘されています。実際に、研究の対象となった若者のおよそ37%が資金調達の問題を抱えているようです。若者は融資を得るための不動産を有しておらず、伝統的な慣習や家族の価値観が若者による土地のアクセスやその土地への所有権を制限することもあります。これにより、農業に強い関心を持つ若者がいるにもかかわらず、農業ビジネスへの参入が困難になっています。

資金不足や土地へのアクセスへの制限に加え、気候変動や農業の技術・知識不足、害虫や作物の病気による低生産性も、若者の農業参加を妨げる要因と考えられています。また、テクノロジーやイノベーション要素の欠如、普及率の低さも農業分野の抱える課題として指摘されています。

若者の農業への参加を妨げている上記のような課題に対処するためには、土地の権利や財政政策の面で政府と協力すること、若者の農業スキルトレーニングを実施することのほか、イノベーションテクノロジーが重要な役割を果たす、とHeifer Internationalのディレクターを務めるGeorge Odhiambo氏は強調し、若者たち自身も、技術革新や政府の支援強化が必要なインセンティブであると捉えています。

農業技術の導入は若者の農業分野への参入を促進し、将来的にはアフリカ地域における食糧不安定性や貧困の抑制につながると期待されています。ですが、現在、調査対象国における農業技術の普及率は低く、農業に従事する若者のうち、アプリやSMS、ウェブサイト、ソフトウェアなど、何らかのかたちで農業技術を利用しているのはわずか23%であるという結果が明らかになりました。

そこで、研究報告では、政府に対しては、農家を取り巻く環境の改善へ取り組み、主に規制の緩和や優遇策の制定などを奨め、また、スキルトレーニングを通した育成への取り組みのほか、国内外のマーケット(生鮮野菜食品の市場)の整備・連携強化とそれらへの農家のアクセスの確保、携帯電話で農作物の市場価格の変動などの情報を配信するようにするなど、デジタルリテラシーへの投資を増加させることを農家に関わることとして推奨しています。

しかし、現状を改善させるには、ただ農業技術を開発して導入するだけでは上手くいきません。イノベーションやテクノロジーの導入や普及には、人びとの識字率や社会経済的地位やサービスの利用可能性が大きく関係しているためです。教育水準の上昇や経済的余裕、その地に適した農業技術の開発も必要であることから、おそらく短期間での改善は難しいでしょうが、そのような支援も含まれたプログラムがなされれば、イノベーションやテクノロジーが普及し、若者の農業離れが緩和され、将来の食糧供給の安定をももたらされることが期待できそうです。

これまでにもPick-Up! アフリカでは、農業分野にイノベーションやテクノロジーを導入する様々な取り組みをご紹介してきました。ぜひ以下の関連・参考記事のリンクからチェックしてみてください!

関連・参考記事:

  1. The Future Of Africa’s Agriculture-Youth And Tech – Link
  2. What is a white-collar job? – Link
  3. ケニアの農家、アプリで困難を乗り越える!?【Pick-Up! アフリカ Vol. 191:2021年7月6日配信】 – Link
  4. 米国ネブラスカ大学:サハラ以南アフリカで灌漑農業を促進へ【Pick-Up! アフリカ Vol. 141:2021年3月31日配信】 – Link
  5. ドローンと衛星を活用する農業セクターでの動きを紹介!【Pick-Up! アフリカ Vol. 96:2021年2月2日配信】 – Link
  6. 農業バリューチェーンの強化を目指す”Farm to Market”アライアンスとは?【Pick-Up! アフリカ Vol. 75:2021年1月7日配信】 – Link
  7. アフリカの農業セクターにおけるマイクロソフト社の取り組み【Pick-Up! アフリカ Vol. 55 :2020年12月5日配信】 – Link
  8. 食料の安全保障維持に向けたアフリカ諸国政府とイスラエル企業らの連携【Pick-Up! アフリカ Vol. 2: 2020年10月6日配信】 – Link

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