こんにちは!Pick-Up!アフリカです。先日、日本では参院選が行われ、今回はSNSを活用した選挙戦略がとても印象に残りました。

また、選挙期間中にSNSの規制を設けるべきかどうかも、今回の参院選では注目される論点の一つとなりました。

私たち日本人は、気軽に政治に関する情報や意見を発信・受信することができますが、Reporters Without Bordersの報道の自由度ランキング(2025)によると、日本は世界で66位にランクインしており、自由度が特別高いとは言えないようです。

一方で、アフリカ大陸においては南アフリカ(27位)、ナミビア(28位)、ガーナ(52位)など、日本よりも自由度が高いとされる国もいくつかあります。

タンザニアでは、5年1回の大統領選挙が2025年10月に行われる予定ですが、今年5月20日に突如X(旧Twitter)へのアクセスが遮断されるなど、選挙をきっかけに報道の自由度が下がったり、報道のあり方が問われるケースは世界的に見られる現象だと言えそうです。(例として、タンザニア、ルワンダのケースも後半で説明していますのでぜひご覧ください)

今回はReporters Without Bordersが発表している報道の自由度ランキングと各国のファクトファイルを基に、日本とアフリカにおける報道の自由度や、政治的な動きについて見ていきます。

最後までお付き合いください!

世界における日本とアフリカの報道の自由度ランキング

各国は、自由度のスコアによって「非常に良い(緑)」「良い(黄色)」「問題あり(薄いオレンジ)」「悪い(濃いオレンジ)」「非常に悪い(赤)」の5つにグループ分けされています。

https://rsf.org/en/index

報道の自由度の測り方(参考

報道の自由度ランキングは、以下の4つの分野における報道の自由度を、それぞれ定量的なデータと専門家への質問を通して得られる質的な分析を基に、0〜100のスコアをつけ、算定されているとのことです。

分野1 : 政治

  • ・政治的な圧力に対する、メディアの自律性への支持と尊重の度合い
  • ・様々な報道のアプローチを受け入れる度合い
  • ・公益のために政治家や政府の責任を追及するというメディアの役割に対する支持の度合い

分野2 : 法的枠組み

  • ・メディアが、検閲や司法制裁、表現の自由に対する過度の制限を受けることなく、自由に活動できる度合い
  • ・ジャーナリストが平等に情報へアクセスできるかどうか
  • ・ジャーナリストに対して暴力を行使した者に対する免責の有無。

分野3 : 経済

  • ・政策に関連した経済的制約(ニュースメディアを設立することの難しさなど)
  • ・非国家主体(広告主や商業パートナー)に関連する経済的制約
  • ・ビジネス上の利益を促進・擁護しようとするメディア所有者に関連する経済的制約

分野4 : 社会文化

  • ・性別、階級、民族、宗教といった理由から、報道機関が攻撃されることで生まれる社会的な制約。
  • ・その国や地域の一般的な文化に反するという理由で、特定の権力や影響力の牙城に疑問を投げかけたり、特定の問題を報道したりしないようジャーナリストに圧力をかけること。

分野5 : 安全性

ジャーナリストが不必要なリスクなしに情報を特定、収集、発信できるかどうかを、以下の基準で計測。

  • ・身体的危害(拉致、殺人など)
  • ・脅迫、強要、嫌がらせ、監視、品位を傷つける言論、憎悪に満ちた言論、中傷などから生じうる心理的・精神的苦痛
  • ・業務妨害や失職など

日本における報道の自由度 〜政治と主要メディアが深く関わる構造が自由度を下げている?〜

ファクトファイルによると、日本は議会制民主主義国家として報道の自由が尊重されている一方で、伝統的な利害関係やビジネス上の利害関係、政治的な圧力や男女不平等によってジャーナリストが監視役としての役割を果たすことが阻害されているとのこと。

政治的な文脈においては、日本の記者クラブという制度が主要メディア以外のメディアを差別するものだとして、問題提起されています。

記者クラブとは、既存の確立された報道機関(新聞社、通信社、テレビ局など)が会員となって構成された組織で、記者クラブの会員のみが記者会見に参加することができ、さらに政府高官との関わりも認められています。

これは記者クラブの会員でないフリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別を形作っている、との指摘がされています

さらに、社会文化的な文脈においては、政府や企業が日常的に大手メディアに圧力をかけており、その結果、汚職やセクハラ、健康問題、公害といった『センシティブ』と見なされかねないテーマの報道について、強い自主検閲(不快に思われるような内容を報道しないようにすること)が行われている、とされています。

世界でも上位、27位の南アフリカ

南アフリカはアフリカ大陸の中では1位、日本より39位も高いランクです。それでは、南アフリカの報道の自由度はどのようにして担保されているのでしょうか?

同国には新聞やオンラインメディアなど多様なメディアが存在し、権力者のスキャンダルなどもためらわず報道する姿勢から、報道の自由度が高いと評価されています。この背景には、アパルトヘイト時代において人権侵害を報道する上でジャーナリストが果たした重要な役割を国民が認識していることが挙げられます。また、政治、治安、司法、社会政策といったテーマに対する国民の関心の高さも、自由な報道環境を支える要因となっています。

一方で、抗議活動の取材時などにジャーナリストが妨害を受けるケースもありますが、南アフリカではジャーナリストの逮捕や殺害といった深刻な被害はほとんどなく、安全性の高さも報道の自由度が高く評価される理由のひとつです。

また、「2024年の総選挙のタイミングで取材が自由に行われたこともこの結果に反映されているのではないか」と南アフリカ国家編集者フォーラム(South African National Editors’ Forum)の「報道の自由小委員会(Media Freedom Subcommittee)」委員長・Slindile Khanyile(スリンディレ・カニレ)氏は述べています。(参考

今年の大統領選挙に向けメディア使用の自由度が変わったタンザニア

タンザニアは180カ国中95位にランクインしました。国内には数多くのメディアが存在する(257の新聞、46のテレビ局、474のオンラインテレビチャンネルなど)ものの、多くは政治家によって所有されていたり、政治的影響を受けたりしているため、編集の独立性を損ね、偏った報道につながっているとのことです(参考)。

そして今年は、オールドメディアだけでなくソーシャルメディアにも政治的な影響が出ています

タンザニアでは今年2025年10月、5年ぶりの大統領選挙が行われます。この最中で、なんと5月20日に突如X(旧Twitter)へのアクセスが遮断されました。

政府の発表では、X上のポルノコンテンツ蔓延を理由としていますが、実際は選挙戦を前に政府批判や言論の封じ込めではないかと言われています。タンザニア政府は無許可でのVPNへの接続を禁止しており、使用した場合は罰金または懲役を課す可能性があると発表していますが、Xが使用できないことによる国民の不満があるようです。また、音声アプリであるClubhouseやチャットアプリであるTelegramもアクセス制限がされているようです。

今年「非常に悪い」グループに入ったのはウガンダ、エチオピア、ルワンダ

アフリカ大陸の分析ファイルによると、ウガンダ(143位)、エチオピア(145位)、ルワンダ(146位)の3カ国は今年「非常に悪い(赤)」に落ちてしまいました。

★ウガンダ(143位)

ウガンダは数多くの報道機関が存在するものの、政府と関係のある政治家や企業、牧師が経営している多くの報道機関を厳しく規制しています。

政府に対して説明責任を求めるジャーナリストは、法的な手続きなしに職を追われたり、自己検閲を強要されたりするそうです。(ウガンダのファクトファイルはこちら

★エチオピア(145位)

エチオピアでは、ノーベル平和賞を受賞したアビー・アハメド氏が首相に就任して以来、言論は以前よりもオープンで多様になったものの、依然として偏向が残っているとされています。

エチオピアでは2022年にティグレ紛争が正式には終結しましたが、その後アムハラ州では紛争が再発しており、政府当局と反政府武装勢力の双方がソーシャルメディア上で偽情報を流しており、そういった情報に基づいた報道がメディアによってされているようです。

また、メディアのほとんどはビジネスパーソンが経営しているものであるため、メディアの独立性にも問題があるようです。(エチオピアのファクトファイルはこちら

★ルワンダ(146位)

ルワンダでは、メディアの数が非常に少ないのが特徴的です。テレビ番組は政府や与党に入党しているシェアホルダーが統制しており、ラジオにおいては内容を音楽やスポーツに限定しています。

2024年にポールカガメ大統領の再選選挙によって検閲がより厳格になりました。メディアの経営者は政府への忠誠を誓うことが求められ、ジャーナリストは愛国教育プログラムへの参加や与党への入党を強いられているそうです。(ルワンダのファクトファイルはこちら

世界でも最下位のエリトリア

アフリカ大陸、そして世界で最下位になっているのが北アフリカのエリトリアです。

エリトリアは2001年にイサイアス・アフェウェルキ初代大統領による独裁体制へと移行してから、政府から独立したメディアはありません

唯一の「メディア」と呼ばれるものは、情報省(Ministry of Information)が統制する通信社・出版物・テレビのみだそうです。

エリトリアの歴史や国の概要、隣国との関係性については、こちらの記事で詳しく扱っておりますので、興味のある方はご一読ください。

⇧クリックで記事を見る⇧

おわりに

今回は、やや書きにくい政治面にも触れながら、選挙と報道の自由度との関係性やトレンドにも焦点を当てつつ、解説してみました。

日本でもアフリカ諸国でも、形は違えど選挙と連動して報道のあり方が変化する現象がみられるようです(選挙時期に情報統制が厳しくなったり、SNS上での誤情報の拡散が問題視されたり)。


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