Pick-Up!アフリカ メンバーです。 ルワンダ共和国に1年間留学していました。 Instagram→@o0yr021 X→@Ayumi_Africa

こんにちは!Pick-Up!アフリカです。

トランプ米大統領が和平に関心を示すコンゴ民主共和国東部(以下コンゴ)の紛争は、1994年のルワンダ虐殺を契機に1996年に本格化し、形を変えながら30年近く続いています。

2025年はじめには、ルワンダの支援を受ける「M23」というコンゴの反政府武装勢力が戦闘を繰り広げ、コンゴ東部の都市を占領したことで、ルワンダの関与が国際社会からの強い批判を招きました。

ルワンダへの圧力が強まった流れの中で、トランプ米大統領が12月4日、ワシントンでコンゴ・ルワンダの首脳と会談し、6月に成立した和平合意の履行に尽力することを再確認しました。

一方、12月はじめにM23が再び攻勢を強め、400人以上が死亡、50万人以上が避難民となる人道危機が起こっているようです(参考)。

今回の記事では、和平合意が紛争の収束に繋がらない、複雑な背景を、国際メディアの記事などを参考に、筆者の視点から読み解いていきます。

最後に解説している鉱物資源については、次回の記事でより詳しく扱います。最後までぜひお付き合いください。

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なぜコンゴ東部の紛争は終わらないのか 紛争の複雑さと「響かない」和平合意の背景

これまでの和平合意が実効性をもって地域の安定に繋がっていない理由を一筋縄に語ることは難しいですが、筆者の見解では、コンゴ東部の紛争の背景には非常に複雑な要因が絡んでおり、根本的な問題解決を中央の和平合意ひとつで図ることが難しいためだと感じています。

※コンゴ東部の紛争を簡潔に説明することはできないため、ここでは部分的な説明になります。

※ルワンダにおいては、「トゥチ」「フトゥ」「トゥワ」という民族区分がありましたが、1994年の虐殺以降、区分が廃止されていますが、ここでは便宜上説明のために使用しています。

複雑要因① 民族間対立がルワンダから流入したコンゴ東部

1994年にルワンダで大量虐殺が起きた後、虐殺の対象となった少数派「トゥチ」中心のカガメ政権が発足しました。虐殺を首謀し復讐や逮捕を恐れた多数派「フトゥ」は、隣国のコンゴ東部に避難し、武装勢力(現在はFDLRという組織が代表的)となりました

ルワンダのカガメ政権は、この武装勢力がいつかルワンダを侵略して政権奪取を試みる脅威的な存在だと捉え、FDLRの掃討作戦を行ってきました。

複雑要因② コンゴ東部では以前から「トゥチ」迫害が起こっており、対立が激化する温床ができていた

コンゴ東部には、植民地宗主国によってコンゴとルワンダ間の国境が引かれる前から、もともとトゥチ系の人々が住んでいました。コンゴ人ではないと迫害されたり国籍を剥奪されたりしていた状況の中、1994年にルワンダ虐殺が起こり、フトゥの加害者たちが流入してきた結果、さらに命が脅かされる状態となりました。

こうしたトゥチ系住民の人権を守る名目で武装勢力が作られ、2012年以降は「M23」という反政府武装勢力が台頭し、コンゴ政府軍(FARDC)やフトゥ系武装勢力・FDLRなどと戦闘を続けてきました。コンゴ東部には120以上の反政府武装勢力がいますが、M23とそれに対抗する組織との紛争がこの地域の不安定さに大きく寄与しています。

また、コンゴ政府軍(FARDC)も、一部地域では民兵との協力や違法課税、人権侵害を行ってきたとの報告があり、『国家 vs 武装勢力』という単純な構図では捉えきれない状況があります。

カガメ政権がM23を支援していることは国連や国際社会から指摘されてきましたが、カガメ氏は否定していました。

しかし、25年初頭にコンゴ東部で激しい衝突が起き、M23がコンゴ東部の都市・ゴマやブカブを占領すると、国際社会からのカガメ政権への圧力が強まり、和平合意への動きが進みました。

複雑要因③ 和平合意に紛争当事者が全員参加しない、部分的な和平合意

今年の6月にワシントンで成立した和平合意は、重要な紛争当事者であるM23が参加していません

M23は、カタールが主導するコンゴとの協議には参加していますが、12月初旬には姿を表さなかったことは和平を確実に進めることが難しくなることが予想されます(参考)。

先行研究によると、紛争後の和平プロセスを確実に進めるためには、紛争に関わる全てのアクターが和平合意に参加することが重要です(研究例)。

複雑要因④ 政府や国際機関を信頼できない現地住民と「上の政策」との乖離

紛争が長く続くコンゴ東部では、今までも幾つか和平合意が成立し、国際機関による平和維持活動などが行われてきたものの、実際に地域の安定に資する結果とはなりませんでした(和平合意の参考文献平和維持活動の参考文献)。

また、コンゴでは政府関係者の汚職も深刻な問題であり、現地住民は「紛争によって利益を得ているのは政治家、エリート層だ」という認識が強い傾向があるようです。

実際に筆者が多くのコンゴ人学生から聞いた話では、和平合意がなされても、現地住民としては「また上(政府)が何かやっている」という程度の感覚であり、和平プロセスが実行されないこともあり、「上の政策」との乖離があるとのことです(参考)。

複雑要因⑤ 紛争の長期化によって「紛争鉱物」利益を得る人がいる

コンゴ東部の豊富な鉱物資源が「紛争鉱物」と呼ばれることをご存じの方も多いと思います。スマホや電気自動車(EV)、防衛装備品の製造に欠かせないコルタンをはじめとする多種の資源がコンゴ東部に集中しています。

では、紛争によって誰が鉱物資源の利益を得ているのでしょうか。ここでは主なアクターを紹介します。

  1. コンゴの権力者

コンゴでは汚職や賄賂が蔓延っています。例えば国軍が鉱物資源を不正取引したり、反政府武装勢力に武器を売ったりして利益を得ている例が報告されています(参考)。

実際に筆者も、和平への動きをアピールする政治家自身が、資源によって私服を肥やしているとの不満の声を、現地学生から聞きました。

  1. ルワンダ

コンゴや国連の報告では、ルワンダ政府が紛争を利用して金やコルタンを入手していると指摘されています

特に近年、M23がコンゴ東部の鉱山を占領したことで、毎月120トンのコルタンがM23からルワンダに流れていると推定されています(国連専門家パネルによる推計、24年12月時点)。ルワンダ政府はこれを否定しています。

  1. コンゴ東部の武装勢力

武装勢力は、コンゴ東部の鉱山を占領し、非公式(違法)に採掘・密輸し、武装勢力は税の徴収などによって利益を得ていると報告されています。

実際こうした状況に対してコンゴ政府の監視は行き届いておらず、世界の市場に流通している鉱物資源のうち、どのくらい違法に採掘されたものかは明らかになっていないのが現状のようです。

密輸される先はタンザニア、ザンビア、ブルンジなど国境で汚職が蔓延っているところが多いです(参考)。つまり、鉱物の密輸を黙認する代わりに賄賂を得ている国境付近の警備隊なども、間接的に利益を得ているそうです。

この他にも、Appleや中国の企業なども、違法・非公式な鉱物がサプライチェーンに混入している可能性を指摘されているとの疑惑があり、国際団体やコンゴ政府などから指摘を受けています。

次編では、この鉱物資源についての近況をさらに深堀りしていきたいと思います。

<コンゴ紛争をもっと詳しく知りたい人におすすめの本 3選>

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参考文献

  1. Congo, Rwanda leaders affirm commitment to Trump-backed peace deal | Reuters
  2. How DR Congo’s Tutsis become foreigners in their own country
  3. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN04CV90U5A201C2000000/
  4. https://www.bbc.com/news/articles/cgly1yrd9j3o.amp
  5. https://www.unav.edu/web/global-affairs/who-profits-from-conflict-in-the-dr-congo
  6. https://issafrica.org/iss-today/rampant-cobalt-smuggling-and-corruption-deny-billions-to-drc


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