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トランプ米大統領がナイジェリアへの援助停止を表明。軍事介入も示唆

25年11月1日、トランプ米大統領はナイジェリアでイスラム過激派が行っている「キリスト教徒の殺害」を止めなければ、米国がこれら勢力への軍事行動を取る可能性があると警告し、ナイジェリアに対する援助の停止も表明しました(CNN)。

トランプ氏の表明はXの投稿から→https://x.com/WhiteHouse/status/1986195249769697516?s=20

ナイジェリアのティヌブ大統領は、Xの投稿で同国が宗教的に不寛容だとするトランプ氏の主張を否定しています。

実際にナイジェリアでは、イスラム過激派によってキリスト教徒とイスラム教徒の双方が被害を受けており、犠牲者の大半はイスラム教徒だという報道もあるようです。

ナイジェリアにとって米国は重要な援助パートナー

米国は援助停止で対応するとのことですが、そもそもナイジェリアにはどのくらい援助してきたのでしょうか。

米国の対ナイジェリア援助総額、サブサハラアフリカ地域の中では3位にランクインし、米国としても大切な援助先パートナーとして捉えていたことが伺えます。

2023年(バイデン政権下)は10億ドル(約1540億円)でしたが、25年は暫定で約2億5000万ドルにとどまり、今回の表明以前から大幅な減少を見せていました(Bloomberg)。

米国政府のデータより

もともとトランプ米大統領の就任に伴い援助が急減していたこともあり、援助の停止による影響は不明ですが、ナイジェリアは保健・疾病対策(特にナイジェリアで罹患の多いHIVやマラリア)を米国からの援助に頼ってきた部分があるため、援助の停止により、従来の医療サービスを国民が受けられなくなると懸念されています(参考)。

また、援助の停止はナイジェリア国内のインフラや経済全般に影響を及ぼすため、ひいてはナイジェリアの原油生産が不安定化する可能性もあります。世界的な影響は限定的との見方もありますが、原油価格に一定の影響を及ぼす可能性はあるようです(参考)。

そもそも、トランプ氏の発言の背景となるナイジェリアの情勢はどのようなものなのか?ナイジェリアのイスラム過激組織、「ボコ・ハラム」にとりわけ焦点を当てながら、紐解いていきます。

ナイジェリアの人口と民族構成、宗教分布

アフリカで最も人口が多いことで知られるナイジェリア

国土面積は日本の2.5倍(923,773平方キロメートル)、人口は2億3,268万人(2024年)です(外務省)。

ナイジェリアは250以上の多様な民族を抱える多民族国家で、割合の多い民族としてはハウサ(30%)、ヨルバ(15.5%)、イボ(15.2%)とのことです。

言語は英語が公用語ですが、500以上の言語が話されるそうです。

宗教分布としては、イスラム教徒(ムスリム)が53.5%、キリスト教徒が45.9%(うちカトリックが10.6%)、その他が0.6%です(CIA)。

ナイジェリアでは、イスラム教徒が北部中心に、キリスト教徒が南部中心に固まっている分布となっています。

ナイジェリア北部でテロ行為を続ける「ボコ・ハラム」とは

2009年から、ナイジェリア北東部(ボルノ州など)を中心に、「ボコ・ハラム」をはじめとするイスラム過激組織が、ナイジェリア政府関係者・軍部隊・キリスト教徒を標的に、テロを多発させているそうです。(参考

「ボコ・ハラム」とは、ハウサ語で「西洋教育は罪」という意味です。1980年代の構造調整計画実施後に進んできた急速な市場の自由化や西欧的な教育指向に対する反発が原動力となり、それまでにも起こっていたナイジェリア北部の原理主義運動の1つとして、2000年代に立ち上がりました(参考)。

2014年には、200人以上の女子学生を誘拐するという事件が起き、国際社会にも注目されニュースで取り上げられているため、覚えている方も多いかもしれません。

政治面でもナイジェリア北部の人々の不満を汲み取るかのように見えるボコ・ハラムの運動

上記のように、汚職や利権によって一部の富裕層が肥やされ、経済格差が広がっていくことに対する一般大衆の不満を背景に、ボコ・ハラムは拡大してきました。

ボコ・ハラムはイスラム原理主義運動の一環として、イスラム国家の樹立やシャリア法(イスラム法)の全国的導入なども要求しました。

ボコ・ハラムは、宗教的・経済的な社会変革だけでなく、政治的な主張もしています。

ナイジェリアでは、1999年以降、(2007年〜2009年を除き)キリスト教徒の多い南部出身の大統領が選出されてきました

ボコ・ハラムは、南北の政治への影響力の格差を理由に、2003年ごろから南北間で代表を交互に選出する制度(輪番制と呼ばれる)を提案してきました。

こうしたボコ・ハラムの意向が汲み取られることはなく、南部出身の大統領が続いてきたことを背景に、ボコ・ハラムは反政府武装闘争を展開してきたとのことです(参考)

★ナイジェリアでは南北間で経済格差が大きい
ナイジェリアにおける南北間の経済格差は、以下のような統計の差からも伺うことができます。
①南部と北部で総合大学(University)の数が2倍近く異なる(南部が多い)

→教育格差の大きさが、大学の数に直結していると考えられます。


②国民にかける予算の大きさは、南部の方が多い(↔︎人口規模や面積は北部が大きい)

南部の方が産油量が多いことも明らかなため、南北間の経済格差の大きさが見て取れる。

※参考:Zuhumnan Dapel (2018)  “Poverty in Nigeria: Understanding and Bridging the Divide between North and South”, Center for Global Development

ボコ・ハラムによる犠牲者はイスラム教徒も多数

Al Jazeeraによると、トランプ大統領がナイジェリアについて発言する前も、ソーシャルメディアやテレビなどでは、ナイジェリアで「キリスト教徒の虐殺」が話題になっていたようです。

アメリカのコメンディアン、ビル・マー氏も、自身の番組でボコ・ハラムがキリスト教徒を「虐殺」の試みだとの見解を示していましたが、Al Jazeeraは実際の犠牲者の大半がイスラム教徒だと述べています。

↑ビル・マー氏

ボコ・ハラムによる犠牲者の宗教構成はまだ正確に調査されていませんが、こちらの論文では犠牲者の3分の2がイスラム教徒であったことが示唆されています。


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