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2025年11月、南アフリカのヨハネスブルグでG20サミットが開催され、アフリカ大陸としては初のG20開催となりました。
今回の記事では、G20の内容やアフリカに関連するポイントなどをご紹介します。
G20とは?
G20は、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)に加え、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、アフリカ連合(AU)から構成される国際枠組みです。アフリカ連合(AU)は2023年9月のインドで行われたG20サミットで正式に常任メンバーとして認められました。

1999年から原則毎年開催されており、正式名称は「金融・世界経済に関する首脳会合」です。
世界GDPの8割以上を占めるG20は、経済協調を主要目的としてきましたが、近年ではマクロ経済や貿易にとどまらず、開発、気候変動・エネルギー、保健、テロ対策、移民・難民問題など、地球規模の課題も議論の対象となっています。G20はこうした課題への対応を通じて、包摂的で持続可能な世界の実現を目指しています。
G20に南アフリカが選出された経緯
G20の議長国は、各国が属する地域グループ内での持ち回り方式で、サミットの2年前にコンセンサスで決定されます。近年は「グローバル・サウス」への議長国の回帰が続いており、2023年はインド、2024年はブラジルが議長国でした。
その流れの中でアフリカ大陸初の議長国として南アフリカが選ばれ、アフリカや途上国の視点からの議論が期待されていました。
G20当日
今回のG20は「連帯(Solidarity)」「平等(Equality)」「持続可能性(Sustainability)」を掲げて開幕しました。
ラマポーザ大統領は、故ネルソン・マンデラ氏の言葉を引用し「南アフリカが国際社会で正当かつ責任ある役割を果たす時が来た」と宣言しました。南アではマンデラ氏への敬意から、公の場でその言葉を引用することが多く、南アらしい開会となりました。
一方で、今回のG20では異例な事態が発生しました。
1.アメリカの欠席
今回のG20には、アメリカの大統領および政府関係者が一切参加しませんでした。そのため、G20創設以来の原則である「全会一致」によらず、他の参加国のみで首脳宣言が採択されました。
さらに、次期議長国であるアメリカへの議長国引き継ぎが行われないまま閉幕したのです。
トランプ大統領は以前から「南アフリカでは白人が迫害されている」と主張し、南ア政府を強く批判してきました。2025年5月に行われた米南アの貿易協議では、トランプ大統領がラマポーザ大統領に対し、白人が虐待されているように見える動画を提示するなど、異例のやり取りが行われました。
これに対しラマポーザ大統領は、「白人だけでなく黒人を含む多くの国民が同様に困難に直面している」と反論し、加えて動画の解釈そのものが一部誤っていると指摘しています。
南アフリカの白人団体アフリフォーラム(AfriForum)は、警察の手が届きにくい広大な農園での殺人発生率は10万人あたり156人と、全国平均の約4.5倍に達するため、白人農園主が多く被害に遭っていると主張し、アメリカ側の懸念を支えるような主張を展開しています。しかし、人種別の殺人率に関する公式データは公開されておらず、「白人が特段多く殺人被害に遭っている」という根拠は示されていません。
さらに、南アフリカ全体で犯罪率が高いことも背景にあります。2023年度には殺人と殺人未遂の合計が56,022件に上り、日本の約30倍に相当するとされ、人種に関係なく凶悪犯罪が横行しているのが現状です。南ア政府も「特定の人種が標的になっているわけではない」と明確に否定しています。
アメリカが南アに対して厳しい態度を取る背景には、大きく2つの要因があります。
① 2024年に採択された南アフリカの土地収用法への反発
トランプ大統領は「政府が補償なしに民間の土地を没収できる」と批判しています。しかし南ア政府は、補償なしの収用が認められるのは極めて限定的な状況に限られており、「白人の土地を奪う法律だ」という主張は誤りだと反論しています。
南アフリカでは、白人は人口の約7%しか占めない一方で、耕作可能地の約73%を所有しているとされ、歴史的経緯による土地保有の偏りが大きな課題となっています。今回の土地収用法は、アパルトヘイト期に生じた土地所有の不平等を、土地改革によって是正することを目的としたものといえます。
さらに南ア政府は、この法律に基づいて補償なしの土地収用が実際に行われた事例はまだ存在しないと説明しており、「白人だから土地が収用される」というような状況は起きていないとしています。
② イスラエル批判とイラン接近による外交方針の乖離
南アフリカはイスラエルの行動を「ジェノサイド」としてICJに提訴し、さらにイランとの関係も強化していることから、米国および同盟国との立場の違いが顕著になっています。
こうした姿勢が「米国の国益に敵対的である」とみなされ、関係悪化につながりました。
その結果、アメリカは2026年に自国が議長国を務めるG20について「南アフリカを招待しない」とまで表明しており、両国関係の緊張の深さを示しています。
2.首脳宣言の採択
今回のG20では、通常では考えられない展開が起きました。首脳会合の初日に首脳宣言が採択されたのです。
これについてホワイトハウスは、「南アフリカは議長国の立場を“武器”として用い、G20のコンセンサス原則を破壊した」と強く非難し、2026年にはトランプ大統領が「G20の正統性を取り戻す」と主張しました。
さらに、アルゼンチンも首脳宣言を承認しない姿勢を示し、G20運営の限界が露呈した形となりました。
一方で、2023年のインドG20で声明調整が難航したことや、G7の足並みが乱れつつある状況を踏まえ、「アメリカが不在でも会議が破綻せず、首脳宣言をまとめられたことは評価できる」とする報道も見られます。
首脳宣言の内容
今回の議長国スローガンは 「連帯 (Solidarity)」「平等 (Equality)」「持続可能性 (Sustainability)」であり、包括的かつ持続可能な成長を目指すというものでした。
また、アフリカ文化に根ざす価値観であるUbuntuの精神に言及し、「国際社会は単なる国の集合ではなく、相互に支え合う共同体」であるという認識を確認し、すべての人を取り残さないという「no-one-left-behind」の原則が打ち出されています。
首脳宣言の内容は、「災害対応」、「低所得国が債務持続可能性を確保するための行動措置」、「包摂的な成長及び持続可能な開発のための重要鉱物の活用」、「人工知能、データガバナンス及び持続可能な開発のためのイノベーション」など地球規模の課題が幅広く取り上げられ、全部で122の項目が公開されました。
全文・日本語訳はこちらから→(仮訳) G20 南アフリカサミット:首脳宣言
アフリカに関連するポイント
今回のG20は、初めてアフリカ大陸で開催されたことに象徴されるように、アフリカの優先課題がこれまで以上に首脳宣言へ反映されました。様々な分野でアフリカについて言及されていますが、ここではアフリカに大きな影響を与える三つの分野をご紹介します。
①債務問題・開発資金への焦点
多くのアフリカ諸国では、中国・民間金融機関・国際開発機関などからの借入が増え、債務返済負担が国家財政を圧迫しています。
今回のG20首脳宣言では、「低所得国が債務の持続可能性を確保するための行動措置」 が明確に盛り込まれ、債務管理を進める枠組みの強化や債務の透明性向上といった、借り入れ国側視点から見た債務課題を解決するための枠組みを設ける姿勢が見て取れます。
②エネルギー転換・重要鉱物でアフリカが注目
アフリカ大陸内には、電力にアクセスできていない人が多く存在し、日々の生活で薪や木炭などといった環境に負荷のかかる燃料を用いて調理を行っています。
宣言では、「世界のエネルギー情勢において、特にアフリカやその他の開発途上地域で、不平等や課題が存在する一方、成長の機会もあることを認識する」としています。
そこで、以下のような内容が明記されており、エネルギー移行のための資金調達を促進する方針を示しています。
・特に途上国において、持続可能なエネルギー移行のための資金調達を促進
・2030年までにアフリカで3億人に電力を提供する取組を歓迎
・クリーンで、持続可能な、公正かつ負担可能で、包摂的なエネルギー移行を促進
また、アフリカで採掘できる重要鉱物についても、
・鉱物探査への投資促進、現地での原料加工の推進、持続可能な採掘慣行のためのガバナンス強化
・より多くの生産国がバリューチェーンに参加し恩恵を受けられるよう確保する
といった文脈が宣言に含まれ、アフリカの産業化を後押しする要素が盛り込まれました。
③AI・デジタル技術分野でアフリカ参画の余地が拡大
「アフリカ諸国におけるコンピューティング能力へのアクセス促進、並びに AI 人材育成・訓練、高品質で代表性のあるデータセット及びインフラ整備を推進することを奨励する」とし、アフリカでのAI人材の育成、AI関連のインフラ整備を奨励するとのことが明記されました。
特にデジタル分野に積極的な国であるルワンダのような国では、追い風となるような宣言となりました。
おわりに
今回、初めてアフリカ大陸で開催されたG20は、これまで周縁化されがちだったアフリカの優先課題が、国際議題の中心に据えられた象徴的な機会となりました。債務、エネルギー、テクノロジー、気候変動といった分野で、アフリカ自身の視点がより明確に反映されたことは大きな前進と言えるでしょう。
もちろん、首脳宣言で合意が得られたとしても、実際の政策や資金支援がどれだけ実現されるかは、今後の国際社会の取り組みにかかっています。今回の成果が一過性のものに終わらず、持続的な協力への基盤となることが期待されます。
参考:
http://www.anzen.mofa.go.jp/m/mbcrimesituation_122.html
「南アフリカで白人が大量に殺されている」ー外国の分断も煽るトランプ大統領
The Rotating G20 Presidency: How do member countries take turns? | Heinrich Böll Stiftung
トランプ氏、南アフリカで「白人が迫害されている」 ラマポーザ大統領との会談で主張 – BBCニュース
G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トランプ政権反発 | ロイター
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アフリカ初のG20サミット 南アフリカ 実効性に疑問も – 世界日報DIGITAL

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