本日はフランスのマクロン大統領のルワンダ渡航に際して報じられた記事をコラムとしてご紹介します。

ルワンダのカガメ大統領は、今回の訪問の目的について「過去ではなく未来のためである」とコメントしています。

アフリカや海外メディアの見解では、この訪問を受けて両国の関係性やビジネス環境においても大きな変化がみられるということを多く報道しています。ではなぜ、今回のタイミングでフランスの大統領がルワンダに渡航したのか、その真相についていくつかの記事を取り上げて紹介していきたいと思います。


マクロン大統領ルワンダ渡航の経緯

フランスのマクロン大統領が今年5月末にルワンダに渡航し、1994年の起こったジェノサイドについて「フランスは、大虐殺を引き起こした体制の側に立っていた。最悪の事態に至った重い責任を負う」という旨を表明しました。

マクロン大統領はルワンダ滞在中、キガリ大虐殺記念館を訪れ、記念碑に献花を捧げ、1分間の黙祷を捧げた後、「フランスは、歴史に立ち向かい、歴史がルワンダの人々に与えた苦しみの一部を認識する義務がある」と述べました(文末記事1)。

フランスは2019年4月にルワンダ内戦時のフランスの対応について調査を行うために調査委員会を発足しています。その調査委員会は、8名の研究者によって構成され、「1990年ー1994年に何が起こったのかより良い理解と知識に貢献すること」を目的とし、2年後である2021年までに調査報告の開示をすることを目標としていました(文末記事2)。

ルワンダの専門家が排除され、ルワンダ人研究者がチームに属さなかったという点での論争や、その上でどの程度実効的な調査が可能なのか疑問視する声が上がっていたものの、フランス大統領自らの指示であらゆる政府関連書類へのアクセスが許可された調査委員会が設立されることは前向きに評価されていました(文末記事3)。

フランスでは、法律でルワンダの虐殺当時の大統領時代の機密情報は死後25年以内には公開できないと定められています。そのため当時の機密文書へのアクセスが妨げられ、公に情報を開示することができなかったようです。当時の大統領が死去したのが1996年であったため、2021年はその25年後に当たります。そこで、今回のタイミングで調査報告の開示を行ったのではないかと考えられています。

調査結果は今年4月にルワンダに最終提出が済み、その内容をもとに今年5月27日にフランス大統領がルワンダ訪問をするに至ったということです。

ルワンダも同様に国内での調査を行なっています。その調査結果がフランスとほぼ同等の結論に至ったことから、今回フランスは公の場で責任の所在を明らかにし、責任を認めるという運びになったということが考えられます。


ルワンダでのフランス語の変遷

今回のルワンダ訪問に際しマクロン大統領は、ルワンダの首都キガリに「フランス文化センター」の新設も行いました。フランス文化センターは2014年に閉鎖されていましたが、フランスの文化と教育を復活させるために、過密なスケジュールを縫って、今回の滞在中に無事ローンチできたということが報道されています。(文末記事4)

この背景には、ルワンダの教育言語が2008年にフランス語から英語に変わったこと、それに伴い英語人材の育成が図られ、フランス語人材が減少したことなどをフランス側が問題視しているということが可能性として考えられます。

教育言語がフランス語から英語に変わったことの理由としては、公には東アフリカ共同体としてルワンダのプレゼンスを高めるために、周辺国に位置するウガンダやタンザニアの影響を加味して英語に国力を注ぐ必要があるためであると判断されたことや、ビジネス面での影響を考慮したことが一因であると示されています。(文末記事6)

同時に、1994年以降のフランスとの関係悪化がこの変化に大きく影響を及ぼしたのではないかとも言われています。

一方で2018年にフランスメディアから出された記事によると、ルワンダ国内でのフランス語の需要が高いということが示されていました。ルワンダ人の大多数はキニヤルワンダ語を主に話すものの、2015 年にOIF(Organisation of la Francophonie) によって行われた調査によると、700,000 人(人口の 6%) がフランス語を話していると推定し、フランス語は英語に次いで最も人気のある外国語であり続けていると示されています。また、2010 年に再開したキガリのフランス語学校は、定員を超えているという話も示されています。(文末記事6)

今回、マクロン大統領がフランス文化センターを新設したことによって、両国間の関係が改善されているということが強調されました。また、このセンターではフランス語やフランス文化がルワンダ国内で浸透するための大きな役割を担うことが予測できます。


ルワンダ外務大臣がフランス語圏国際機関の事務局長へ就任

さらに掘り下げてみると、ルワンダとフランスの両国間をフランス語で結ぶということに機運が高まっていると推察できる出来事があります。

ルワンダの外務大臣として活躍したルイーズムシキワボ氏がIOF(International Organisation of La Francophonie : フランコフォニー国際機関)の事務局長に就任したという出来事です。ルイーズ・ムシキワボ氏は4年の任期で選出され、エジプトのブトロス・ブトロス・ガリ(1997-2002)、セネガルのアブドゥ・ディウフ(2002-2014)、カナダのミカエル・ジャン(2014-2018)に次ぐ、OIFの第4代目の事務局長を務めています。(文末記事7)

ルワンダは2008年に教育言語としてのフランス語を英語に置き換え、そのわずか一年後に英国連邦に加盟していたという歴史があります。そんなルワンダの重要人物が、フランス語圏のその民主・文化・経済価値を促進することを目標とするフランコフォニー国際機関のトップを務めるという事実は当時、世界各国からの驚きを集めました。

フランスとルワンダ両国の対立についても各所で言及されていましたが、就任当初の2018年7月のインタビューでムシキワボ氏は、ルワンダがフランス語を拒否しているという考えは「誤解」であると語りました。(関連記事10)

この84の国と地域が加盟する大きな国際機関の重要なポストにルワンダ人が就任するということは、ルワンダにとって非常に有益であると考えられます。英語圏とフランス語圏の両方の世界との強い結びつきの利点を認識し、重要ポストに自国の役人を投入しているということが理解できます。

加えて、ルワンダのカガメ大統領はアフリカ連合(AU) の議長を務めているなど、多方面でルワンダの政治的影響力は非常に高まっているということが見られます。

ルワンダ国内のフランス語教育における政治的背景には、ルワンダ・フランスの2カ国間だけにとどまる話だけではなく、フランス語圏にまたがる多数の国々にも影響を及ぼしている事象であるということが推察されます。


マクロン大統領、アフリカを外交の重点に位置付ける

マクロン大統領は、2017 年の大統領就任以来、アフリカを外交政策の重要な部分に据えてきました。 2017 年にブルキナファソで行われたスピーチでは、過去と決別し、アフリカ大陸との間に新しい関係を築くことを約束しました。

また、先月17日には、スーダンの民主化への移行をサポートするために国家元首・政府首脳会議がパリで行われました。その際にフランスは、スーダンが債務救済の基本的条件を満たし、多国間延滞金の返済を可能にするために、国際通貨基金に15億ドルのつなぎ融資を提供すると発表しました。

マクロン大統領は、ルワンダ渡航後南アフリカにも訪問し、ラマフォサ大統領とも会談を行っています。その際、アフリカでのコロナウイルスワクチンの生産拡大に投資すると表明し、アフリカと西側との供給格差の是正を目指す旨を示しました。

このように様々な方法で、フランスはアフリカの国々との間に関係を構築しているということが理解できます。

今回のマクロン大統領のルワンダ訪問は、ルワンダとの関係修復を目的としたものが大義ではあったものの、その目的の背景に様々な要素が絡んでいるということがわかりました。

引き続きフランスのアフリカ各国へのアプローチを見ていきたいと思います。


文末:関連・参考記事:

  1. In Rwanda, Macron Tries to Reset Relations With Africa – Link
  2. Rwanda genocide: Macron orders probe of France’s role – Link
  3. 現代アフリカ地域研究センター フランスがルワンダ内戦時の対応について調査委員会を設置 – Link
  4. Macron Launches French Cultural Centre In Kigali – Link
  5. Rwanda closes French cultural centre – Link
  6. Rwanda to switch from French to English in schools – Link
  7. FRANCOPHONIE: RWANDAN LOUISE MUSHIKIWABO TAKES OFFICE AS GENERAL SECRETARY – Link
  8. Rwanda’s Louise Mushikiwabo is new Secretary-General of La Francophonie – Link
  9. Rwanda wants to be a Francophone leader – even though it distrusts France – Link
  10. Tiny Rwanda boosts influence with Francophonie chief role – Link
  11. Macron Goes to Africa – Link
  12. Macron: ‘I am of a generation that doesn’t tell Africans what to do’ – Link
  13. Chair’s Statement – International Conference on Sudan – Link
  14. French presidency declassifies Rwandan genocide documents – Link

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