こんにちは!Pick-Up!アフリカです。

今回は、チョコレート生産における児童奴隷に関しての記事をご紹介します。

先日2/14はバレンタインでした。チョコレートを使ったお菓子を作った方もいるのではないでしょうか。そのチョコレートがどのような方法で生産されているかについて見ていきましょう。


記事:

『This Valentine’s Day, make sure your chocolate is free from child slavery in its supply chain』

今回のバレンタインでは、生産過程で奴隷児童を使っていないチョコレートを選びましょ

チョコレートの生産に使われているカカオは主にコートジボワールとガーナで生産されています。以前投稿したこちらの記事では、コートジボワールのカカオが不当に低価格で買い取られていることについて取り上げています。低価格を実現するために、カカオ栽培では安価な労働力として子供が使われており、問題になっています。2019年時点で世界中に159万人もの子供たちがカカオ農場の現場で児童労働を強いられているそうです。

今回ピックアップした記事では、現在子供たちが「使う捨て」のように扱われ、カカオ生産の労働力となっていることについて詳しく書かれています。

19世紀にカカオがアフリカに到来して以降、西アフリカでのカカオ栽培は奴隷制と隣り合わせで行われていきました。

20世紀頃には、5年契約の奴隷制がとられ、ポルトガル人がサントメプリンシペに奴隷を送る形でカカオ栽培を行っていました。サントメプリンシペに到着した奴隷は、強制的に5年間カカオ農場で働くことが義務付けられていました。当時のチョコレートメーカーは“契約社員である”と主張し、実施的な奴隷制を否定していました。

現在のカカオ栽培では子供を「使い捨て」の労働力として使うべく、人身売買が行われているとのことです。

カカオ栽培で奴隷制が取られていることは様々な媒体で世間に知られてきました。2000年には「Slavery: A Global Investigationt」というドキュメンタリーが公開、2001年にはBBCの記事で取り上げられるなど(参照)してこの問題は公となったそうです。様々なメディアで取り上げられ、カカオ栽培における児童労働が注目を浴びてきたのにも関わらず、チョコレート業界はカカオにおける児童労働問題を否定し続けてきました。

当時、市民団体(NGOなど)がカカオの児童労働問題撲滅キャンペーンを行っており、アメリカで成功を収めていました。このキャンペーンを受けてアメリカの議員は、チョコレート製品に児童奴隷による労働で作られていないことを保証する「児童奴隷なし」というラベルを義務付ける法案を提出していました。このキャンペーンに対抗すべく、チョコレートメーカーはこれまでと態度を変え、児童労働問題を認めてハーキン・エンゲル議定書を施行することになります。ハーキン・エンゲル議定書は、一般的にカカオ栽培における児童労働を排除するべく、サプライチェーン改善を行うための協定であるとされていますが、元記事によると、チョコレートメーカーがキャンペーンやラベルに関する法案に対抗し、法的に裁かれることを避け評判を落とさないための戦略の一部でしかなかったとのことです。最終的にハーキン・エンゲル議定書の制定は延長が繰り返され事実上の放棄となっています。

ハーキン・エンゲル議定書の期限としていた2005年を過ぎると、アメリカの活動家たちがネスレのようなチョコレート企業を訴えようとしましたが、失敗に終わりました。敗因は、活動家たちが西アフリカの現状を理解できていなかったことだとされています。

様々な努力があったものの実らず、児童労働の割合は減少するどころか増加しています。こちらの記事からわかるように、シカゴ大学の発表によると、コートジボワールとガーナのカカオ栽培地域で児童労働にあたる子供の割合は、2008〜19年の間に31%から45%へと14ポイント増加しているとのことです。

児童労働が続けられている理由は三つ考えられます。一つ目は、元記事に書かれているように、カカオを栽培するにあたってその生産地を変えなければならず、生産地変更のための安価な労働力として子供たちを使わざるを得なくなっているためです。カカオの栽培においては、既存の森林地帯を使い果たすと新しい森林地帯に移動するという方法をとるそうなのですが、栽培先として使える森林地帯がなくなってきているとのことです。そのため、すでに開拓されている森林が存在せず、新たにカカオを植え替える必要があるのですが、カカオの植え替えには非常に多くの労働力が必要なため、安価な労働力を求めて児童に労働させているとのことです。

コートジボワールでは、移民の減少や森林伐採の影響で労働力不足が顕著に表れているそうです。森林伐採後の土地にカカオを植え付けるには多くの労働力を必要とするため、児童労働に頼らざるを得ないとのことです。

二つ目は、カカオの低い価格での買取が児童労働の原因になっているとのことです。この記事では、一部の大手チョコレート会社がコートジボワールのカカオを不当に低い価格で買い取っていることが取り上げられています。小規模なカカオ農家が低い価格でも利益を出すために、カカオ農園の敷地を広げようとするとチョコレートの単価がより低くなり、安価で働き手となる児童労働が必要になるとのことです。

三つ目は、こちらの記事の通り、カカオ生産には多くの労働力が必要であるにも関わらず、ガーナのカカオ農家のほとんどが家族単位の小規模な農家であることが児童労働の一つの原因であると書かれています。小さな農家は労働者を雇うことができないため、必然的に子供を労働者として働かせることになるということだそうです。

反対にチョコレートメーカー側は、カカオ農家が土壌の問題からカカオの栽培が厳しくなると他の作物を生産するようになるという、”多角化”を問題視しているとのことです。カカオ栽培を他の作物の生産と変えるとなると、カカオの生産が滞り、カカオを輸入している大手チョコレートメーカーに影響が及びます。そこで、カカオ栽培の多角化を阻止すべく、大手企業は「持続可能」プログラムを実行しています。このプログラムは表向きには児童労働や奴隷制度、人身売買といった問題を解決することを謳っていますが、実際のところ、このプログラムは生産向上を狙いとしたものであり、児童労働や奴隷制度の撤廃は形骸化しています。そのため、企業は本質的な“児童労働の撤廃”について考えなければならないでしょう。

カカオの生産過程は子供にとって危険で、成長を阻害しうるものだそうです。児童労働は子供の教育が行き渡らないだけではなく、子供の成長にまで悪影響を及ぼすということで、早めの解決が望まれます。今後、カカオ生産のみならず、アフリカ全体での児童労働・人身売買の解決を目指す必要があると考えられます。児童労働などに関する記事があり次第共有していきたいと思います。

参考記事:

On Valentine’s Day, consider the lives of the people who grow your chocolate –Link

私たちが食べているチョコレートは児童労働によるものかもしれない –Link

ガーナ・カカオ生産地の児童労働 –Link

チョコレート業界が児童労働問題に苦戦するワケは –Link

アフリカ:約束から20年たった今もチョコレート産業では児童労働が大きな問題となっている –Link

コートジボワール:低い価格での取引がカカオ農家を貧困へと追い込む【Pick-Up! アフリカ Vol. 237:2021年11月14日配信】 –Link

The Harkin-Engel Protocol –Link

Stop Chocolate Slavery –Link

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