「緑の壁」の完成はいつ?モーリタニアの砂漠化対策

訳 :  モーリタニア、植林による農業保護に踏み切る。

英題:‘Mauritania takes steps to protect agriculture by planting trees ’

記事リンク:Mauritania takes steps to protect agriculture by planting trees | Africanews

こんばんは!pick-up!アフリカです。

本日取り上げるニュースは、サハラ砂漠周辺地域で問題となっている砂漠化と、アフリカ全域で行われている「緑の壁プロジェクト」についての話題です。

アフリカでは2007年から国連やアフリカ連合が主体となって、大陸を横断する植林プロジェクトを行っています。一方で、国土の約85%、約100万km²を砂漠が占める西アフリカの国モーリタニアでは、農村への砂漠化の影響が深刻化しており、プロジェクトの進行も現時点で目標の4%しか達成できておらず、さらなる改善が求められています。

緑の壁プロジェクトとは

近年サヘル地域では砂漠地域の拡大による、居住区域への影響、荒廃が問題となっています。

記事によると、モーリタニアでは2018年以降深刻な雨不足が続き、農民の生活、特にパーム畑の栽培に悪影響を及ぼしているようです。

これらの砂漠化を防ぐために2007年に始まったのが「緑の壁プロジェクト」です。この計画は国連とアフリカ連合が中心となり、国連砂漠化防止条約(UNCCD)に基づいて開始されました。西はセネガルの首都ダカールから、東はジブチ共和国まで、全長約8000㎞、幅約15㎞に渡って植林事業を行い、サハラ砂漠とのそれより南の地域の間に巨大な緑化地帯を作り上げるという壮大な計画です。(1)

このプロジェクトのゴールは、2030年までに以下の三つを達成することと位置づけられています。

1.劣化した土地1億haの回復

2.2億5千万トンの炭素の隔離

3.1000万人のグリーンジョブ雇用の創出

サヘル地域に森林が戻ることによって、特に気候変動に対する緩衝材としての役割が期待されています。森林には水分の蒸散によって雨雲を生み出し、大陸に大量の降雨をもたらすという効果があります。これは実際にアフリカ大陸の貴重な水資源となっており、海水に次ぐ水へのアクセスとして機能しています。

また森林のメカニズムとして、水を地中に蓄える天然の貯水槽としての役割が大きな意味を持っています。スポンジのように雨水を地中に蓄え、それらが河川を通じてゆっくりと大陸全土に流れており、水不足を防止する役割を果たしています。

近年ケニアの自然公園などでは、森林伐採によってこの貯水槽としての機能が著しく低下しており、将来的にアフリカ各地での水不足の原因になるとみなされています。(2)

モーリタニアではプロジェクトの遅れが

モーリタニアは西アフリカに位置する国で、国土の大部分をサハラ砂漠が占めています。

記事によると、モーリタニアでは2018年以降雨不足が地域の農業に悪影響を及ぼしており、砂漠化の深刻化が心配されています。

しかしながら、現時点でモーリタニア国内での緑の壁プロジェクトの進捗は達成目標の4%ほどにとどまっており、プロジェクトをより精力的に進めていく必要があります。

一方で現地の農民たちは、この状況に別の視点から自分たちの生活を守る工夫を行っています。モーリタニアの主要農産物であるヤシ畑では、水不足による被害を最小限に抑えるためにソーラーポンプを使用した灌漑を行うようになりました。

またヤシの木の周囲に小さい穴を開け、穴を水で満たしたあと、毛布で蓋をすることで、風の影響による蒸散量の増加を抑え、植物の保水力を生かした節水農業に取り組んでいます。

またこちらの記事によると、緑の壁プロジェクトに加え、自然保護区域を新たに20万ha指定することで、森林保全による砂漠化の防止や水資源の確保に努めています。(3)

緑の壁プロジェクトの今後

今後、緑の壁プロジェクトはどのような動きを見せていくのでしょうか。

今回ご紹介したモーリタニアでの事例のように、このプロジェクト自体が想定よりも進行の遅れが問題視されています。当初掲げていた2030年までに約1億ヘクタールの劣化した土地の回復という目標に対して、プロジェクト開始から約13年が経過した2021年始めの時点で、約1800万ヘクタールの植林しか完了していません。

また一方で、実際にはサヘル地域の植林は統計データ以上に進行しているという主張もあります。政府が主導する緑の壁プロジェクト以外に、NPO団体などが主導する草の根レベルでの植林、再緑化事業が統計データに反映されていないということが主な理由です。

植林という方法自体が費用に対する効果が低く、見直すべきであるという意見も多く見られます。今回のプロジェクトにかかっている費用が非常に高価であるほか、外部から持ち込んだ植物を植えるのではなく、すでにその土地に自生している植物の再生を促すことで高い発芽率が期待できるという考え方です。ニジェール南部では、1985年以降住民たちが主導となって500万ha以上の土地の再緑化を成功させました。この地域では、植林ではなく、切り株から自生した苗を保護し、適切に管理を行うことでこのような成果を得ることに成功しました。

このようなアフリカでの植林に対する費用対効果の実際については、私たちの過去の記事でも取り上げていますので、ぜひそちらもご覧ください。(4,5)

アフリカ地域の砂漠化はアフリカ地域の都市化、開発の進行に伴い、近年急速に悪化しています。今回取り上げたような農業分野以外にも様々な場面で影響を与えており、長期的な視野での開発が求められています。

私たちは引き続き、あらゆる視点から砂漠化に関するニュースを取り扱っていきます。今後の動向に、ぜひご注目ください。

1.Growing the Great Green Wall | Tree Aid – Link

2.How Widespread Deforestation In Africa Risks Our Climate Future – Link

3.環境系の取り組みもアフリカではビジネスチャンス!?【面白記事 Vol. 82(2020年7月11日配信)】 – Pick-Up! アフリカ (pickup-africa.com) – Link

4.ナイジェリアのEden Life及びケニアのKomazaが新たな資金調達を実施【面白記事 Vol. 90: 2020年7月21日配信】 – Pick-Up! アフリカ (pickup-africa.com) – Link

5.New protected area buffers Mauritania’s shifting sands (unep.org) – Link

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