題:コンゴのルンバーアフリカの歴史のサウンドトラックがユネスコ無形文化遺産に登録

英題:Congolese rumba, soundtrack of African history, added to UNESCO heritage list

記事リンク:https://www.france24.com/en/africa/20211214-congolese-rumba-soundtrack-of-african-history-added-to-unesco-heritage-list

内容と背景:

こんばんは!Pick-Up!アフリカをご覧いただきありがとうございます。

本日は、コンゴのルンバがユネスコ無形文化財として登録されたことについての記事をピックアップしました。

「コンゴのルンバ」は、コンゴ民主共和国とコンゴ共和国の都市部で一般的な音楽、ダンスのことを指します。キコンゴ(コンゴの言語)でンクンバと呼ばれる伝統的なダンスから派生したこの音楽スタイルはお祝い、葬儀、宗教など、公私を問わず日常的に用いられており、コンゴ人のアイデンティティーの象徴としての役割を果たしています。また、現代ではオーケストラやアーティストによる商業活動にも用いられるようになり、世界にその影響を拡散させつつあります。(文末記事1

こうした影響力を踏まえて、コンゴ民主共和国とコンゴ共和国が共同でユネスコに対する提案を投げかけた結果、12月14日のサミットで「コンゴのルンバ」が無形文化遺産に登録されることが決定しました。これは、音楽の無形文化財としては、中央アフリカピグミーのポリフォニー(2003)、ブルンジの太鼓(2014年)、キューバのルンバ(2016年)などに次いだ登録となりました。(文末記事2

ユネスコは今回の登録の理由として、ルンバがコンゴのアイデンティティーや共同体の象徴であること、そして地域の社会的、文化的価値を伝え、世代間の社会的結束や連帯を促進する手段として認識されていることを挙げていますが(文末記事1)、コンゴのルンバがこのような社会的重要性を持っているのはなぜなのでしょうか。今回は、その理由を歴史的視点からお伝えしていきます。

海を渡ったコンゴのルンバ

ルンバの歴史は長く、かつてはンクンバとしてコンゴの人々に脈々と受け継がれていましたが、今回の記事では、それは早くも植民地化以前の時代から世界に影響を与えていたことが述べられています。奴隷貿易によってアフリカから大西洋を渡り、北アメリカや南アメリカへ連れてこられたコンゴ人や他のアフリカ人は、ンクンバの文化をアメリカ大陸にもたらして黒人文化に影響を与え、北アメリカでのジャズ、南アメリカでのルンバの開花を促しました。

またそれとは逆に、アメリカ大陸からジャズ、ルンバの文化がディスク、ギターという形で逆輸入されることで、コンゴの音楽も変容を遂げました。新たな楽器や機器の導入によってンクンバが現代的要素の強いルンバへと変化し、アーティストの演奏により、それが国内で影響力を持つ音楽文化となりました。

グラン・カレとコンゴのルンバ

こちらの記事では、アーティストの中でも、ジョセフ・カバセレ・ツァマラ、通称グラン・カレ(1930-1983)という人物がコンゴのルンバに対してとりわけ大きな影響をもたらしたと述べられています。コンゴルンバの創始者の一人とも言われている彼は、コンゴ音楽を他の黒人音楽と結びつけることで現代音楽へと昇華させるとともに、個人ではなく集団で音楽を作るという新しい方法を生み出し、その後大陸で盛んになるオーケストラの原型を作り出しました。

また、基本的に恋や愛の歌が多かったルンバに、政治的メッセージを付け加えたのも彼だと述べられています。植民地支配による不正、不平等が蔓延る中、ルンバに政治的メッセージをのせることで民衆を奮い立たせるとともに、彼らの団結や結束を促したと言われています。

集団での音楽と政治的メッセージという要素が付け加えられたことで、ルンバがさらに強い影響力を持つようになりました。そのために、政治性の強い曲が取り締まられることもあったようですが(主記事)、コンゴが独立する際にカレが作った“Indépendance Cha Cha”という曲により、ルンバはさらに大きな社会的重要性を持つことになります。

コンゴ独立とコンゴのルンバ

先ほどの記事(文末記事3)では、この曲がコンゴ民主共和国が独立した1960年6月30日の夜に、カレが率いる楽団によって演奏されたことが紹介されています。ベルギーの植民地支配者や初代首相のパトリス・ルムンバ、初代大統領のジョセフ・カサブブといった大物たちが集う中で流されたこの曲は独立の象徴となり、独立を祝福する国民の間で絶大な人気を集めました。また、みながこの曲を通して国の独立を祝う中でルンバの影響力は国全土に浸透し、これを契機にルンバがコンゴのアイデンティティーや共同体の象徴へと変わっていきました。

そして、この時に国民に深く浸透したルンバは形を変えながら若い世代へと継承され、現代へ続く重要な音楽文化となりました。実際に、ファリー・イプパ(Fally Ipupa)、フェレ・ゴラ(Ferré Gola)、エリティエ・ワタナベ(Héritier Watanabe)などの数々のルンバアーティストが存在し、彼らはルンバをコンゴに留まらず、世界へと発信し続けています。

コンゴのルンバの社会的重要性

こうした歴史の流れを見ていくと、コンゴのルンバが社会的重要性を持つようになったのは、グラン・カレによって政治的なメッセージ性を与えられたルンバが人々を結束させる効果を持つようになり、独立時の“Indépendance Cha Cha”によってその効果が国民全体まで行き渡った結果、ルンバがコンゴのアイデンティティーの象徴となったためだと考えられます。

このようにコンゴ国内で影響力の高い文化がユネスコ無形文化遺産に登録されたことは素晴らしいことだと思います。これを契機とした音楽文化のさらなる発展に期待したいです。

参考記事:

1.Congolese rumba-Intangible heritage-Cultural sector-UNESCO-Link

2.La rumba congolaise, patrimoine culturel immatériel de l’humanité-Link

3.Musique : comment la rumba congolaise a conquis l’Unesco-Link

4.コートジボワールのモスク、世界遺産に登録!【Pick-Up! アフリカ Vol. 199:2021年7月29日配信】-Link


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