Pick-Up!アフリカのメンバーです。アフリカ歴は2週間です!これからルワンダ留学1年間予定です!ルワンダ大好きです!

こんにちは!Pick-Up! アフリカです。

この記事を書いている2026年10月現在、私はルワンダに滞在しています。地方へ足を運ぶと、畑で作物を育て、日々手入れをする人々の姿を目にします。そこでまず見えるのは、人が土地や作物と向き合う農業の風景であり、AIやドローンがどこでも使われているわけではありません。

もちろん、これは私がルワンダで見た範囲の光景であり、国や地域、作物、農業の規模によって状況は異なります。

一方、農業は多くの人の仕事と暮らしに関わっています。国連食糧農業機関(FAO)によると、2023年にはアフリカの就業者の約46%が農業分野で働いていました。この農業分野には林業と漁業も含まれます。

参照:https://www.fao.org/statistics/highlights-archive/highlights-detail/employment-indicators-2000-2023-%28july-2025-update%29/

また、世界銀行の2025年データでは、サブサハラ・アフリカの就業者の約49%が農業分野に従事し、農林水産業はGDPの約17.9%を占めています。就業者の割合とGDPに占める割合は同じ指標ではありませんが、農業が経済だけでなく、多くの人の生計にも関わる分野であることが分かります。

参照:https://data.worldbank.org/indicator/SL.AGR.EMPL.ZS?locations=ZG

参照:https://data.worldbank.org/indicator/NV.AGR.TOTL.ZS?locations=ZG

こうした農業の現実がある一方で、作物の診断や農業助言にAIを取り入れる技術開発も進められています。アフリカ連合(AU)は「デジタル農業戦略・実施計画2024–2030」で、AI、機械学習、IoT、ビッグデータなどの技術を農業へ取り入れる方針を示しています。

以前の記事「アフリカの課題に取り組むAIの実態とは?」では、農業、金融、ヘルスケアの3分野で展開されるAIビジネスをご紹介しました。

アフリカの課題に取り組むAIの実態とは?

今回は「アフリカ AI Vol.2」として農業分野をさらに深掘りします。ここで紹介する事例は、アフリカの農業全体を代表するものでも、AIがすでに広く普及したことを示すものでもありません。農業を支える技術の一部として、どのような試みがあるのかを見ていきます。

公式資料では、作物の画像を使う病害診断、ドローン画像による果樹園の分析、土壌や天候などの情報を用いたWhatsAppでの農業助言といった活用例が紹介されています。

それぞれの事例では、どのようなデータが使われ、AIは何を判断し、その結果は誰へどのように届くのでしょうか。今回は、画像とともに仕組みを理解しやすい3つの事例をご紹介します。

AUの同戦略は、アフリカの農業におけるデジタル技術の導入を進める方針を掲げ、その対象としてAI、機械学習、IoT、ビッグデータなどを挙げています。

本記事では、その方針に関連してどのような技術やサービスが開発・提供されているのかを、各運営元と研究論文が公開している情報から見ていきます。

参照:https://au.int/sw/node/43481

ここからは、「病害診断」「果樹園の管理・収穫予測」「圃場別の営農アドバイス」という3つの用途を見ていきましょう。

事例1:PlantVillage Nuru—スマホで作物の病気を診断

最初にご紹介するのは、スマートフォンを使って作物の病気や害虫を見つける「PlantVillage Nuru」です。

※スマートフォンを活用した作物確認のイメージ。PlantVillage Nuruの実際の画面ではありません。

どのように診断する?

研究論文によると、利用者がスマートフォンのカメラを状態のよくない葉へ向けると、Nuruは画面に映った画像をリアルタイムで分析します。識別した状態を葉ごとに枠で示し、株全体の確認後には診断結果と、検出した病害虫への管理上の助言を表示します。

Nuruは深層学習を使った物体検出モデルです。同論文では、キャッサバの病害虫症状などを含む2,756枚の葉の画像を使ってモデルを訓練したと説明されています。

参照:https://www.frontiersin.org/journals/plant-science/articles/10.3389/fpls.2020.590889/full

またFAO(国連食糧農業機関:Food and Agriculture Organization of the United Nations)は、PlantVillage Nuruを、スマートフォンによる害虫・病害の識別と、衛星データを利用した作物の成長状況の確認に使うサービスとして紹介しています。

参照:https://www.fao.org/in-action/remote-sensing-for-water-productivity/applications-and-uses/applications-catalogue/product-detail/PlantVillage-Nuru_1331767/en

オフライン対応が持つ意味

Nuruの大きな特徴の一つは、インターネットに接続していない状態でも病害診断を利用できることです。

研究論文は、アフリカの農村部ではインターネット普及率が低いため、インターネットを必要としない診断ツールが重要だと説明しています。Nuruでは、病害診断と管理上の助言の両方を、モバイルネットワークがない場所でも利用できます。

実証研究で分かった精度と限界

2020年に発表された東アフリカでの研究では、キャッサバの病気や害虫の症状を識別するNuruの能力が、農家、農業普及員、専門家と比較されました。

研究では、Nuruの診断精度は農家や農業普及員より高い結果となり、1株あたりに確認する葉の枚数を増やすと精度が向上することも報告されています。スマートフォンを一度向けるだけで常に正解が出るのではなく、適切な使い方によって結果が変わることが分かります。

参照:https://agris.fao.org/search/en/providers/123818/records/67236e6fb605bda15e0b01c2

ただし、この研究が評価したのは、東アフリカにおけるキャッサバモザイク病、キャッサバ褐色条斑病、キャッサバ緑色ダニによる被害などの識別です。したがって、この結果だけから、あらゆる作物や地域で同じ精度になるとは判断できません。

PlantVillageの技術はサバクトビバッタ対策にも

アフリカの農業被害として、サバクトビバッタの大量発生を思い浮かべる方もいるかもしれません。今回確認した資料には、Nuruがサバクトビバッタを画像から識別するという説明はありません。ただし、Nuruを開発したPlantVillageは、FAOと協力し、サバクトビバッタの監視に使う別のスマートフォンアプリ「eLocust3m」を開発しています。

FAOによると、eLocust3mは、訓練を受けた担当者などがサバクトビバッタの現場データを入力・送信するアプリです。2020年の大量発生への対応では、PlantVillageと開発したスマートフォンアプリから送られる情報について、AIを使って利用できないデータや誤ったデータを取り除きました。確認された情報は、群れの場所を把握し、地上や上空から行う防除活動の計画に利用されました。

つまり、Nuruが農家の目の前にある作物を診断するのに対し、eLocust3mは各地の目撃情報などを集め、サバクトビバッタの動きを把握するための技術です。同じPlantVillageの技術でも、AIの使われ方が異なります。

参照:https://www.fao.org/science-technology-and-innovation/resources/stories/detail/application-of-modern-technologies-revolutionizes-desert-locust-monitoring-and-control/en

参照:https://www.fao.org/newsroom/detail/A-high-tech-response-is-helping-countries-win-battle-against-Desert-Locusts/en

サバクトビバッタが農業へ与えた被害については、こちらの記事でも紹介しています。

サバクトビバッタはどうなった?2023年現在の状況

事例2:Aerobotics—ドローンと画像AIで果樹園を可視化

次にご紹介するのは、James Paterson氏とBenji Meltzer氏が設立したAeroboticsです。同社によると、2人は南アフリカ・ケープタウン郊外で育ち、航空工学や機械学習の知識を農業に応用しました。

参照:https://aerobotics.com/about-us

※画像は農業ドローンの活用イメージであり、Aeroboticsの機体・サービス画面ではありません。

空から集めた画像をどう分析する?

Aeroboticsの「Drone Scan」は、マルチスペクトルカメラや熱センサーを搭載したドローンで果樹園やブドウ畑を撮影し、その画像をAIで分析します。

Aeroboticsによると、撮影したデータはAIで処理され、樹木単位・区域単位の情報として示されます。栄養不足、害虫、病気、灌漑の問題が疑われる場所を確認し、対応後の変化も追跡できると説明されています。

参照:https://aerobotics.com/drone-scan

Drone Scanによって数百エーカーを調査し、問題が疑われる区域を地図上で確認できると紹介しています。

スマートフォンで果実を測定

Aeroboticsは「TrueFruit Grade」というサービスも展開しています。同社の公式ページによると、スマートフォンで果実を撮影すると、AIが果実ごとの大きさ、色、傷の程度を測定します。同社は、この標準化された測定結果を収穫予測の改善に利用できると説明しています。

参照:https://aerobotics.com/true-fruit-grade

同社によると、Aeroboticsは18カ国以上で事業を展開し、ソフトウェアで1億3,000万個を超える果実を分析しています。

参照:https://aerobotics.com/about-us

事例3:Virtual Agronomist—圃場別の助言をWhatsAppへ

3つ目は、農家へ圃場別の農業助言を届けるサービスです。

※画像は農業におけるスマートフォン活用のイメージであり、Virtual Agronomistの実際の画面ではありません。

一般的な生成AIとの違い

iSDAが展開する「Virtual Agronomist」は、WhatsAppを通じて農家へ圃場ごとの農業アドバイスを届けるサービスです。

Virtual Agronomistは、土壌の養分、地域の情報、農場の履歴、天気予報、作物や地域に関する科学的知識を組み合わせ、対象の圃場に合わせた助言を作ります。

参照:https://www.isda-africa.com/

iSDAによると、大規模言語モデルは農家と対話する層として使われ、その下で、あらかじめ定めた計算に基づく農学モデルが提案を作ります。提案は、圃場の位置、土壌の養分状態、作物、目標収量に合わせて調整されます。

参照:https://www.isda-africa.com/posts/one-million-plots-just-getting-started/

土壌データから提案が届くまで

基盤の一つが「iSDAsoil」です。iSDAによると、これはアフリカ全域について20種類以上の土壌特性を30メートル解像度で推定した土壌地図です。13万点を超える土壌サンプルのデータと、気候・植生・地形・衛星画像などの情報を使い、複数の機械学習手法を組み合わせて作られています。

参照:https://www.isda-africa.com/isdasoil/

参照:https://www.isda-africa.com/isdasoil/technical-information/

iSDAの公式記事によると、Virtual Agronomistは、圃場の位置、土壌の養分状態、作物、目標収量に合わせた栄養管理計画を作り、WhatsAppを通じて届けます。利用者は専用アプリを新たにダウンロードする必要がないと説明されています。

iSDAは、2026年6月公開の公式記事で、Virtual Agronomistが8カ国、130万を超える圃場で使われたと発表しています。

3事例から見えるアフリカ農業AIの特徴

今回紹介した3事例では、AIの役割がそれぞれ異なります。

– PlantVillage Nuru:スマートフォン画像から病害虫の兆候を見つける

– Aerobotics:ドローンやスマートフォン画像から農園の状態と収穫量を分析する

– Virtual Agronomist:土壌、天候、農地情報から圃場別の助言を作る

3事例を、各資料に記載された「入力する情報」と「利用者へ返す情報」で整理すると、共通点が見えてきます。Nuruはスマートフォンの葉の画像を診断結果と管理上の助言に、Aeroboticsはドローンやスマートフォンの画像を農園・果実の測定結果に、Virtual Agronomistは土壌などの圃場情報を栄養管理の助言に変換しています。

また、情報の届け方も異なります。Nuruはオフラインで動くスマートフォンアプリ、Aeroboticsはドローンやスマートフォンを使うサービス、Virtual AgronomistはWhatsAppを採用しています。これは本記事で3事例を比較した整理であり、各サービスの優劣や、特定の農場への適性を示すものではありません。

おわりに

今回確認した資料からは、スマートフォンによる病害診断、ドローンを使った果樹園分析、WhatsAppによる圃場別の農業助言が、サービスや支援手段として開発・提供されていることが分かりました。

ただし、これらの事例は、AIがアフリカ農業全体に普及したことや、すべての農家に同じ効果をもたらすことを示すものではありません。その違いを踏まえて見比べると、農業AIが扱う情報や利用者への届け方が、用途に応じて異なることが分かります。

ルワンダで日々目にする農業の風景と、公式資料で紹介される技術開発の間には、まだ距離があるように感じます。だからこそ、技術そのものの新しさだけでなく、誰が利用できるのか、農家の判断や暮らしをどのように支えられるのかを、今後も見ていく必要があります。

これからもPick-Up! アフリカでは、アフリカの農業とAIをめぐる動きを追っていきます!

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