こんにちは!Pick-Up! アフリカです。

本日は、ウガンダの国会で可決された2023年反同性愛法の法案に関するニュースを取り上げます。

もともとウガンダでは反同性愛の思想が強く、既存の法律でも反同性愛者は犯罪者として扱われていました。しかし、先週新たに国会で可決された法案は、反同性愛者に対する抑圧を一層強化するものであり、国際社会からの批判を浴びています

また、同性愛者に対する抑圧が見られるのはウガンダだけではなく、アフリカの30カ国以上が同性愛関係を持つことを禁止しています。

そこで、本記事ではニュースの内容に加え、アフリカにおけるLGBTQに対する姿勢・取り組みの現状をご紹介します


ウガンダの新法案、反同性愛法の概要

元記事:Uganda Anti-Homosexuality bill: Life in prison for saying you’re gay

法案の概要

2023年2月22日、ウガンダの国会にて、「世界最悪」とも言われる反同性愛法が可決されました。なぜ「世界最悪」とまで呼ばれるのでしょうか。なぜなら、この法律は、そもそもLGBTであると自認すること自体を罰する、初めての法案だからです。国会においてこの法案に反対した議員は389人中たったの2人であり、この法律はヨウェリ・ムセベニ大統領が署名をすると、施行が決定します

法案に含まれる具体的な内容は以下の通りです。

★同性愛に関わらせるために子供に近づいたり人身売買をしたものを終身刑に処する。

★LGBTの権利を守るための活動(資金提供、同性愛者向けのメディア資料や文献の出版・放送・配布など)をした者は起訴や投獄の対象となる。

★メディアグループ、ジャーナリスト、出版社は、同性愛者の権利を擁護したり、同性愛を助長する内容を発信する場合、訴追や投獄の対象となる。

★「加重型同性愛」に値する場合(児童・障害者・弱者に対する性的虐待、同性愛の性的暴行を受けた被害者が生涯続く病気に感染している場合など)は死刑が適用される。

★土地所有者が、所有地を同性愛行為のための「売春宿」として使用した場合、または性的マイノリティの権利保護の活動に使用した場合、投獄される可能性がある。

ウガンダでは、実は2014年にも類似した法案が可決され、大統領によって署名されました。しかしウガンダの憲法裁判所によって却下され、施行には至りませんでした。

大統領はつい最近、LGBTを「異質者」と呼ぶ発言をしており、選挙が迫る中、今回の法案にも署名をするのではないかという憶測が飛び交っています

そして、最近国民の中でも高まりつつある反同性愛の風潮により、ウガンダのクィアを含む同性愛者コミュニティはエスカレートする差別に苦しんでいます。例えば、周りの人々から脅迫を受けたり、金銭の要求をされたりしています。


なぜ反LGBTQが支持されるのか  ー根強い宗教観、植民地支配の遺産、その政治利用ー

根強い宗教観

ウガンダにおいて反同性愛を支持している主なグループは、保守的なイスラム教徒やキリスト教徒です。イスラム教の基本的な教義は、同性愛を禁止しています。なぜなら、同性愛という文化は、「神によって定められた自然な規範を否定し、性的な違いを消し去り、ユートピア的、イデオロギー的、反宗教的、反科学的な両性具有を支持する文化だ」と信じられているからです(参考記事)。また、カトリック教会の教義でも、同性愛を逸脱した行為だと規定されています。

このような思想を持った人たちはLGBTQという文化は「西洋からの輸入物」であり、自然に反するものだとして差別してきました。

植民地の遺産として残る反同性愛

こちらの記事(アフリカのLGBTQ、根強い差別意識とその背景)によると、当時同性愛を否定していた西欧のキリスト教国家がアフリカを植民地化する過程で、元々は同性愛に対して寛容だったアフリカで、法律などを通して反同性愛の考え方を浸透させたという背景があるようです。例えば、植民地支配下のケニア・タンザニアでは、同性愛者の性行為は最大 14 年の懲役刑の対象となっていました。

今や西欧諸国では積極的に同性愛を肯定する動きが見られていますが、アフリカの人々にとっては、同性愛を否定する態度が、西欧の新植民地主義(経済的支援や軍事同盟により間接的に支配する姿勢)を拒否することに繋がると考えているようです。

このように、植民地時代に定着した反同性愛の思想や、西欧諸国の介入・影響に抵抗する現在のイデオロギーが、反同性愛の考えが払拭されない原因でもあるようです。

政治利用されてきた反同性愛の思想

参考記事によると、反同性愛の傾向が強いタンザニアでは、政治リーダーが政権を獲得するためにキリスト教の価値観を支持し同性愛者の権利を排斥してきたということです。このような強硬路線を取る背景には、強硬路線を取ることでリーダーとしての信頼・権威を高め、政治の安定を図るという目的があります。

ウガンダでも、活動家は新法案が国民の懸念事項となっている経済問題から目を逸らすために規定されたとの意見もあるようです。


アフリカ諸国におけるLGBTQ+に対する態度・取り組みの現状

アフリカの54カ国中、同性愛の関係性を持つことを禁じている国は現在30カ国以上にのぼります。ここでは、反同性愛の態度が強い地域と、同性愛を支持する取り組みが進んでいる地域の両方をご紹介します。

反LGBTQ+の傾向が強い東アフリカ

アフリカの中でも、東アフリカは特に反同性愛者への抑圧が深刻なことで知られています。

ソマリア・ナイジェリア・南スーダン・モーリシャスでは死刑、ウガンダやタンザニアでは終身刑に処せられる場合もあるそうです。(例:昨年のナイジェリアにおける同性愛男性3名に対する死刑判決

ケニア

過去記事にもあるように、ケニアでは元々同性愛を違法としていましたが、同性愛の行為に関与・促進した人の量刑を終身刑に引き上げるため、現在法律が作成されています。最近のニュースでは、同性愛に関する人権団体を最高裁がNGOとしての登録を認めたことを受け、大統領、宗教指導者、国民から批判が殺到し、デモも計画されました。(参考記

タンザニア

周辺国ケニアやウガンダに乗じ、LGBTQ+に対する抑圧を強めています。最近は、LGBTQ+に関する内容を含む人気の児童書を、学校に置くことが禁止されました。そして、LGBTQ+の内容を含む本の監視を強化しています。

LGBTQ+を受け入れる国々

必ずしもアフリカの全ての国がLGBTQ+を受け入れていないわけではありません。ここでは、LGBTQ+に対する肯定的な政策を取っている国をご紹介します。

南アフリカ共和国

過去記事によると、南アは憲法において性的指向に基づいた差別を禁止している世界初の国であり、アフリカ大陸の国で唯一法律で同性婚を認めている国だそうです。(そもそも同性婚を認めている国は世界で34カ国です。参考記事

また、2021年の過去記事では、南アでIDカードに登録する性別に関して、男性か女性か2種類のみに限られていた従来の表記方法を変更し、ジェンダーについての柔軟性を高める方向であるというニュースが書かれています。

そして2022年4月には、南ア内務省はNGOと連携し、トランスジェンダーの国民にIDカードを配布しました。これにより、自分のジェンダーアイデンティティがIDカードに反映されないことによってLGBTQの人々が抱える保健・雇用・投票などの面の問題を解決する希望が見えてきました。(参考記事

過去10年で同性愛を合法化した国々

アフリカは他の地域に比べ同性愛を否定する傾向は強いものの、同性愛を合法する国は増えつつあります

こちらの記事によると、2021年までの10年間では、アンゴラ・ボツワナ・モザンビーク・レソト・セーシェル共和国の5カ国において同性愛関係が合法化されたようです。


おわりに

今回はウガンダにおけるニュースを受け、アフリカにおけるLGBTQに対する姿勢とその背景を見てみました。

LGBTQの受け入れが遅れていると言われているアフリカですが、国によって国民の考えや政治との関係性、受け入れの進度が異なることがわかります。

今後もPick-Up! アフリカは様々なトピックのニュースを発信していきますので、お楽しみに!

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