なぜアフリカは自前でのワクチン製造を必要としているのか?

英題:Why Africa needs to manufacture its own vaccine


記事リンク:https://www.logupdateafrica.com/why-africa-needs-to-manufacture-its-own-vaccines-logistics


内容と背景:

今回ご紹介する記事は、アフリカCDCとして知られるAfrica Centres for Disease Control and Prevention(アフリカ疾病予防管理センター)の所長であるDr. John Nkengasong氏のインタビューを元に書かれたものです。インタビューの中ではアフリカでの医薬品製造工場の欠如に触れるとともに、どうすることでワクチン製造工場をアフリカに設置することができるのかなど話されています。

さて、記事では初めに、現在アフリカ54カ国中、5カ国でしかワクチン製造工場が見られないとしています。これらには様々なレベルがあり、工場によっては薬品を詰める作業を行なっていたり、調剤や最終的な完成に至るまでの作業を行なっていたりするようです。その例としてセネガルにあるパスツール研究所で長年黄熱病のためのワクチンが製造されていることや、ナイジェリア、エチオピア、カメルーンなどの国で動物用のワクチンが製造されていることが共有されています。

しかし同時に、アフリカが世界のワクチンの消費量の25%を占めているにも関わらず実に99%が輸入品に依存していることが共有されています。それによって、アフリカでのヘルスセキュリティーの保証がとても難しいことになっているとしています。

これまでもこういった製造工場をアフリカに誘致することに努めてきたものの、様々な理由で望まれる効果が得られていないことも共有されています。特にワクチン製造工場を持つためには、研究、開発、そして製造の3つのことを同時に行うことが必要とされていながらも、アフリカではそれらが同時に行われてこなかったこと理由としてあげています。そしてそれを実現するためにはアフリカが自らのリソースで投資を行なっていくことが必要と続けられています。

そしてこれを実現する一つの方法として、アフリカCDCがアフリカ連合と協力して医療ハブを設置することに取り組んでいると続けています。そして目標は2040年までに最低でもワクチンの60%をアフリカ大陸内で製造できるようになることと続けています。

今見られるような医療やワクチン製造工場設置への各国関係者の関心のありようがこれまでのものと比にならないものであるとも共有されており、コロナがこの動きに少なからずとも影響を与えているとしています。エボラ出血熱やコロナなどの例が伝染病やパンデミックが、これらの病気がすぐには終わらないものであるということを示す一つ一つの印であり、アフリカ全体としてこれらに応えられるような状況に自らを置かなければいけないと続けられてます。

今後のワクチン製造工場設置のためには、医療・医薬品に関する研究開発ができるキャパシティーを備えることはもちろんのこと、需要と供給を確保することが最低限であるとし、それに合わせた市場の再構築が一番必要なこととしています。そしてそのためにGaviアライアンスやGates Foundationなど医療の分野で活躍活動している様々な機関とこれらに取り組んでいると共有しています。

そしてさらには、これらの工場設立がアフリカ大陸内の需要に応えるためだけのものでなく、国際的な貢献をも提供できるものになるようなことも重要であるとしています。

コロナ以外にアフリカで対応したい病気に関しての質問では、今回のようなコロナだけでなく、アフリカ特有の病気や伝染病などもあることから、このような取り組みは重要になってくるとするとともに、いつ起こるかわからない病気やパンデミックに備えるための工場や研究機関となるのではなく、現在大陸が直面している課題に取り組み解決策を見いだすことができるようになることで、将来の同様の課題にもいくらか対応できていくのではないかとも共有されています。

今後の病気などの観察や今後の展望、必要なことに関しては、まずは各国が医療研究機関を設立することが最初のステップになり、「regional integrated surveilance and laboratory networks」と、アフリカCDCが表現する、各国での取り組みをこれまでアフリカCDCなどを中心として築かれてきたネットワークや地域間での共同研究などへと発展させる動き、さらにはこの分野での労働力の確保が重要なステップになってくるとしています。

こちらの記事では展望などが中心に話が展開されましたが、他の記事でも有益な情報が共有されていました。

例えばこちらの記事では、アフリカが医療品の輸入に依存していることを指摘し、最終価格の大部分が仲介手数料が占めている自体を共有しています。例えばケニアではその割合が50%であるのに対し、ケニアよりもサプライチェーンが整っていないような国になるとその割合が90%を占めると書かれています。対して、OECDの国々との比較では、その割合が24%程度であることに触れられています。

さらに記事では、現在南アフリカ、ケニア、ナイジェリア、ジンバブエのような限られた国にしか工場を構えるキャパシティーを持っていないことに触れ、輸入するよりも現地で生産することによるコストや医薬品の品質の確保などもアフリカに工場を設置するうえでの重要な検討事項になると続けています。

さらにこちらの調査では、サブサハラアフリカの国々を4つのステージにマッピングし、工場建設設立の可能性を経済面から検証しています。全体のうち約半数の国では経済的に工場設置が意味合いを持つだろうとしつつも、南アフリカのみがブラジルやインドなどの国と競合できるような工場誘致のための経済環境を備えていると続けています。しかし、可能性を否定はしておらず、5つの分野(①品質基準、②生産キャパシティーを伴った計画作り、③地域経済圏ごとのハブ作り、④薬品製造へのフォーカス[その後テクノロジーへも]、⑤既存のサプライチェーンの改善)での改善が見られることで可能性が高まる打倒とまとめています。

そんな矢先、ファイザー社が南アフリカでコロナワクチン製造という記事もあり、ここまでの展開が実現に向かっているようにも感じられます。こちらの記事ではファイザー社がBioNTech SE社とともに、南アフリカのケープタウンのBiovac Institute Ltd.とコロナワクチンを南アフリカで製造することを盛り込んだLetter of Intent(基本合意書)に調印したことを伝えています。こちらの記事ではルワンダがコロナワクチンの製造拠点の誘致を目指していることを伝えていました。

コロナを一つのきっかけとして、アフリカCDC関係者が伝えていたように、今取り組めることに対応することで、将来的な課題に対応できるキャパシティーを身につけることが一歩ずつ実現に向かっているようにも思われます。


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