訳 :  世界銀行、アフリカの食料安全保障の鍵は、昆虫、水耕栽培であると提言

英題:World Bank says insect, hydroponic farming key to Africa’s food security

記事リンク:https://www.independent.co.ug/world-bank-says-insect-hydroponic-farming-key-to-africas-food-security/

こんばんは!いつもPick-up!アフリカをご覧くださり、ありがとうございます。

さて今回ご紹介する記事は、先日世界銀行が発表したレポートに関する記事です。このレポートでは、昆虫栽培と水耕栽培技術の強化が、紛争や貧困に苦しむ地域の食料安全保障や栄養不足の解決策として提案されています。

その中でも本記事では、昆虫栽培に着目しました。現在環境問題に対する意識の高まりや、人口増加に伴う食料供給への不安から、世界的に昆虫食がブームとなっています。アフリカでは伝統的に昆虫食を行っている地域も多い中で、世界規模での昆虫食への参入はアフリカの農業にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

世界銀行のレポートが発表される

先日12月18日に世界銀行がケニア・ナイロビで発表した報告書によると、昆虫栽培、水耕栽培は栄養価の高い食事へのアクセスを高めるとともに、数百万人の雇用創出、環境の改善、国家経済の強化にもつながる可能性を秘めていることが分かりました。

このレポートはアフリカが抱える食糧安全保障課題に対して、包括的かつ効果的な解決策

を提示することを目的として発行されています。その中でも特に経済的な地盤が弱いところや、紛争被害を受けた国々において、循環型の食糧経済を構築することを目的として、昆虫栽培、水耕栽培の二つの新技術(フロンティア農業)に焦点を当て、それぞれのメリットとコストを評価しています。

実際に、現在のアフリカの食糧事情はどのようになっているのでしょうか。こちらの記事によると、国連食糧農業機関(FAO)と国連世界食料計画(WFP)は西・中央アフリカにおける深刻な食糧不安を抱える人々の数は約2800万人に達し、この数は過去最悪の数字であると言います。またブルキナファソ、チャド、マリ、モーリタニアでは、栄養失調レベルが緊急事態時の基準値である15%を超えており、この数値に関しても西・中央アフリカでは2014年以来最も高い値となっています。(1)

本レポート内でも、FCV各国内の全人口の29%が食料不足を経験しており、またこの栄養不足の割合はこの先10年間は増加し続けると見られています。

昆虫食のメリット

では昆虫を栽培するという農業は、実際にはどのようなものなのでしょうか。ここでの昆虫栽培とは私たち人間が食用とするものはもちろんのこと、家畜飼料用のモノやペットフード用のものも含まれています。今回取り上げたレポートによると、食用や飼料用の昆虫の市場は2030年までに最大80億ドルに達すると言われており、今後10年間の年間成長率は24%に達する見込みであるとされています。

昆虫食にはどのようなメリットがあるのでしょうか。最も特徴的なのが、栄養価の高さです。先述した様に、アフリカでは現在も深刻な栄養不足に苦しむ人たちが多く存在しており、安定した栄養の確保が課題となっています。そのような人たちの栄養改善策の効果的な一手として、タンパク質、ミネラルなど豊富な栄養素を保持している昆虫食が期待されています。

昆虫にはタンパク質、脂質、炭水化物が穀物や野菜などと同じ割合で含まれており、またカルシウム、亜鉛などのミネラルも豊富です。それに加えて、スレオニン、システインバリンと言った必須アミノ酸も含まれています。サブサハラアフリカでは、これらの栄養を野菜や果物で補給しており、これらの農作物の生産量が少ない時期の貴重な栄養源となっています。

また近年の環境問題に対する世界的な意識の変化も、昆虫食の普及を後押ししています。こちらの記事では、1㎏の昆虫タンパク質を生成するのに必要な資源を、同じく1㎏の牛肉を生産するのにかかる環境負荷と比較しています。
1㎏の昆虫タンパク質を生産するために必要な飼料、水、土地は、同量の牛肉を生産する際に必要とされる量の約10%です。さらに温室効果ガスに関しては、わずか1%の排出量しかありません。(2)

この記事で紹介されている内容によると、南アフリカにある農場では食料廃棄物を使用してクロバエの幼虫を栽培し、ペットフードとして販売しています。

2020年に行われた調査によると、世界のペットフード市場が排出している総CO2量は、フィリピンやモザンビークが年間排出量に匹敵することが分かっており、昆虫を取り入れることで環境負荷の低減が期待されています。

加えて、生育に使われる飼料に野菜の皮やもみ殻等の農業廃棄物を用いることで、栽培にかかる費用も低く抑えることができます。(3)

アフリカと昆虫食

昆虫食の文化は、世界各地で数千年前から存在しており、昆虫を食べるということ自体はそれほど目新しいことではありません。世界銀行の報告書によると、世界中で約20億人が昆虫を日常的に食していると言われており、特にアフリカは、世界でも最も昆虫食が一般的な地域の一つでもあります。種類としてはイモムシやシロアリ、バッタ、コオロギなど500種類以上の多様な食用昆虫が存在しています。

特にアフリカには、食用と認められている昆虫約2100種のうち400種以上が消費されており、コンゴ、中央アフリカ共和国、カメルーン、ウガンダなどアフリカの一部の国では、昆虫食は古くから一般的な食事として親しまれています。(4)

昨今の昆虫食への世界的な関心は、このようなアフリカの国々にとって大きなビジネスチャンスとなる可能性を秘めています。

ガーナのLegendary Foods社では、ヤシゾウムシの幼虫を養殖し、食用として販売している企業です。ヤシゾウムシは西アフリカや中央アフリカなど、アブラヤシが生息している地域で古くから食されており、この企業では以前はヤシの伐採時に収穫していたものを、昆虫食の人気の高さから養殖に挑戦しています。

このように、このビジネスの特徴として地域の伝統的な食文化の保護にも寄与しているという点があげられます。(5)

また西アフリカに位置するブルキナファソでは、Cirina spというイモムシの一種が食用昆虫として人気を博しています。ファソプロという企業はこのイモムシを使用して様々な製品を生産することで、雇用を生み出し、地域経済の活性化に貢献しています。(6)

一方でこちらの記事では、昆虫食に対する豊富なノウハウを持つアフリカの国々の課題は、栽培方法が言語的に確立されていないという点であると主張されています。アフリカで慣習的に行われている昆虫食の多くは野性から採集するものであり、飼育、栽培はこれまでほとんど行われていませんでした。そのためには、地域のコミュニティがもつ昆虫の知識をどのようにして掘り起こし、栽培に応用していくのかが鍵となります。(4)

このように、アフリカが本来持つ昆虫食産業のポテンシャルを考慮すると、現時点ではまだほとんどの国がその実力を発揮しきれているとは言い難いです。

その原因としては、やはりビジネスとしての昆虫栽培のノウハウの少なさが影響していると言われています。

こちらの記事では、今後アフリカで食用または飼料用の昆虫栽培をビジネスとして活発にしていくためには、生産者、政府、加工業者、消費者と、各フェーズの人々が意思決定を行えるように、総合的に研修やトレーニングを行っていく必要があると述べられています。

生産者やビジネス関係者のフェーズでは、より安定した供給、生産を可能にするイノベーションやビジネス運用のシナリオを構築していく必要性があります。

また政策レベルでは、従来商業用として扱われていなかったアフリカでの昆虫という分野のビジネス環境を整えていくために、会議やウェブサイトなど多様なプラットフォームを整備することが求められています。加えて、国際レベルの流通、投資環境の整備も必要です。(6)

昆虫養殖の持続可能性と今後にむけて

最後に、昆虫養殖の持続可能性についても言及します。今後の世界の食料供給を担う産業として、昆虫の養殖の持続可能性は考慮しなくてはならないポイントの一つでもあります。

こちらの記事によると、昆虫栽培の最も大きなメリットの一つに消費する資源の少なさがあげられます。昆虫の栽培は少ない土地、水で行うことができ、また廃棄物となるような低品質の有機物を家畜や人間が必要とする高品質のタンパク質を生産することができます。(7)

過去の記事でもご紹介しているように、アフリカ農業が近年直面している課題に、気候変動の影響を受けやすい脆弱な気候であることがあげられます。昆虫栽培のデメリットとして、初期の設備投資が必要とされるというマイナス面はあるものの、干ばつや台風など異常気象に左右されやすいアフリカの農業にとっては、切り札となりうる産業であるといえます。(8)

また今年東アフリカに甚大な被害をもたらしたサバクトビバッタの大量発生も、アフリカ農村部に利益をもたらすチャンスとなる可能性があります。ケニアではいくつかの農家がすでに、去年大量発生したバッタを捕獲、粉末状にすることで、タンパク質の豊富な家畜用飼料として利用している事例もあります。(9,10)

今回紹介したレポートによると、アフリカ全体で農業廃棄物を使用して昆虫の養殖を行った場合、年間約26億ドル相当のタンパク質と約194億ドル相当の肥料を生産することができると報告されています。

今後、アフリカの昆虫養殖産業はさらなる発展が期待できそうです。pick-up!アフリカでは、昆虫食に関する新しいニュースを、今後も発信していきます。

関連記事

1.Conflict, economic fragility and rising food prices drive up hunger in West and Central Africa : African BUSINESS – Link

2.More people are eating bugs – but is it ethical to farm insects for food? – Link

3.The South African farm turning flies into food for pets – and maybe people – BBC News – Link

4.Eating insects has long made sense in Africa. The world must catch up – Link

5.Africa: All the buzz about edible insects – Link

6.Why we’re involved in a project in Africa to promote edible insects – Link

7.Insect Farming: The Industry set to be Worth $8 Billion by 2030 | Hive Life – Link

8.東アフリカの畜産業を脅かす気候変動:その影響とは?【Pick-Up! アフリカ Vol. 114:2021年2月23日配信】 – Pick-Up! アフリカ – Link

9.サバクトビバッタの大量発生:最新の発生・対策状況は?【Pick-Up! アフリカ Vol. 129:2021年3月16日配信】 – Pick-Up! アフリカ – Link

10.Locust outbreaks: Could farmers turn pests to profit? – Food For Mzansi – Link

コメントを残す