題:増加するアフリカアグリテック市場への投資:加速するスタートアップへの期待と課題(シリーズ:アフリカの農業とイノベーション 其の4)

訳 : 2021年アフリカのアグリテックスタートアップはどうなった?

英題:‘HOW AFRICAN AGRI-TECH STARTUPS FARED IN 2021

記事リンク:https://venturesafrica.com/how-african-agri-tech-startups-fared-in-2021/  

キーワード:アグリテック スタートアップ 資金調達 アフリカ

こんばんは!pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。

過去3週に渡ってお送りしているアフリカの農業とイノベーション」シリーズ、今回はシリーズ第4回目です。

シリーズ3回目となった前回の記事では、アフリカアグリテック市場の現在のトレンドをひも解き、アフリカ農業の未来をのぞき見ました。(まだ読まれていない方はこちら

今回も前回に引き続き、アフリカのアグリテック市場におけるキーファクターであるスタートアップ企業に注目し、同市場への投資額アグリテックスタートアップ企業の資金調達という視点から、気になるニュースをお届けします。

内容と背景:

増加するアグリテックスタートアップ企業への投資

引用元の記事によると、2021年のアフリカにおけるアグリテック市場のスタートアップ企業が獲得した年間資金調達総額は約9.5億ドルを達成したようです。この数字は2020年の約6億ドルから58.5%上昇しており、さらに2015年の数値からは2100%の増加であると報じられています。

また2021年に資金調達を行ったスタートアップ企業は22に及んでおり、この数は2020年の16、2019年の17よりも増加しています。

アフリカ諸国の中で特にアグリテック分野において強い影響力を持つ国が、ケニアとナイジェリアの2か国です。ケニアはアフリカのアグリテック市場におけるパイオニア的な役割を担っており、引用元の記事によると、2020年に資金調達を行ったアグリテックスタートアップ企業の4分の1、総資金調達額の70%以上がケニアの企業であったと述べられています。ケニアのTwiga Foods社は2021年に最も多くの資金調達を行った企業であり、アグリテック分野の全資金調達額の半分以上を占めています。

ケニアとナイジェリアの企業による資金調達総額は、アフリカのアグリテック分野における資金調達額全体の96.8%を占めています。記事によると、例年この分野の資金調達の割合はすでに経営が安定しつつある大規模な資金調達が可能な企業1,2社が専有することが多く、2021年も先ほどご紹介したケニアのTwiga Foods社、ナイジェリアのAgricorp社がそれぞれ5000万ドル、1750万ドルの資金調達を行っており、この分野における投資総額の71%を占めています。

しかし近年は投資先であるスタートアップ企業の増加していることから資金調達における占有率も変化しつつあり、上位2社による投資額に対する占有率も2019年は88.4%、2020年は76.5%と年々減少しています。

例えばこちらの記事では、ザンビアのスタートアップ企業がリリースした新たなデジタル農業プラットフォームサービスについて紹介されています。このサービスをリリースしているHRVSTは、地域の農産物を消費者や地元のレストランと直接繋ぐことで中間業者にかかるマージンを撤廃し、極めてローカルな食のサプライチェーンを構築することで、アフリカの食糧の品質と多様性を高めることを目的とした事業を行っています。

Seedling growing step in garden with dollar icon and chart on sunny background. Concept of business growth, profit, development and success

アフリカアグリテック市場躍進の理由と今後の課題

アフリカにおいてアグリテック市場がこれほどまでに盛んになっている理由として、一つにアフリカ農業が持つ投資先としてのポテンシャルの高さが挙げられます。

引用元の記事によると、サブサハラ地域の総人口における約60%は小規模農家であるほか、同地域において農業分野のGDPは全体の23%を占めています。また今後さらなる人口の増加が予想される世界において、世界の未耕作地の60%が存在しているとされているアフリカ大陸に大きな投資の可能性が向けられています。

またアグリテックに限らず、アフリカのテック産業全体に注目が集まっているという点も重要です。こちらの記事によると、2021年にはアフリカ大陸全体で564社のテック系スタートアップ企業が20億ドル以上の資金調達を達成したと記されており、アフリカのテクノロジー産業そのものに注目が集まっているとも言えます。

その一方で課題として挙げられているのが、アグリテック関連の意思決定者における女性の少なさです。記事によると、アフリカの農業部門における女性労働者の比率はウガンダで76%、ナイジェリアで70%と非常に高い数字を示しています。しかしながら、アフリカで2021年に資金調達したスタートアップ企業568社のうち、創業メンバーに女性が参画しているのはわずか121社(21.5%)であると記されています。

先ほどご紹介したようにアグリテック産業が特に盛んであるナイジェリアとケニアにおいては、ナイジェリアでは161のベンチャー企業のうち39(24.2%)、ケニアでは32.2%のスタートアップ企業の創業メンバーに女性が含まれており、いずれもアフリカ全体の平均値を上回っています。

一方で、アフリカのテック産業においてナイジェリア、ケニアよりも盛んであるとされている(こちらの記事を参照)南アフリカ、エジプトでは、各国のスタートアップ企業のそれぞれ14.6%、13.9%しか女性創業メンバーがいないと記されています。

またこちらの記事では、アフリカのスタートアップ投資におけるシード期以降への投資額の少なさが課題として挙げられています。記事によると、2021年のアフリカのスタートアップ企業への投資件数のうち、80%は事業立ち上げ期のシード投資であり、その次の段階であるシリーズAの資金調達件数はシード期よりも84%減少したと記されています。これはアメリカの37%、東南アジアの70%、ヨーロッパの66%と比較しても低い値です。

今回ご紹介しているアグリテック部門においても同様に、資金調達段階を公開しているスタートアップ企業の半分がシード投資であると記されており、事業を拡大していく段階での資金調達が課題であると見られます。

いかがでしたでしょうか。来週は、アグリテックとスタートアップ企業に関連する記事の最終回として、今注目のアフリカのアグリテック企業をいくつかご紹介します。お楽しみに!

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参考文献:

1.Agritech start-up launches new digital farmers’ market in Zambia; Plans expansion to 5 countries and network of container farms – Link

2.African Agritech funding for the first half of 2022 – Ventures Africa – Link

3.Top 10 Most Technologically Advanced Countries in Africa » Egypt Scholars – Link

4.Where is the gap in African startup funding? — Quartz Africa – Link

関連記事:

1.コロナ禍でアフリカの農業に変化?eコマースが農業の流通を変える【Pick-Up! アフリカ Vol. 2:2022年1月21日配信】 – Link

2.Master cardがアフリカ農業バリューチェーンのデジタル化に向けたプロジェクトを始動!(シリーズ:アフリカの農業とイノベーション 其の1)【Pick-Up! アフリカ Vol.42:2022年6月17日配信】 – Link

3.アフリカのスタートアップの買収やパートナーシップ案件を見る【Pick-Up! アフリカ Vol. 162:2021年5月12日配信】 – Link

4.アフリカ的な投資スタイルとは?《アフリカのスタートアップへの投資の現状と傾向 其の7》【Pick-Up! アフリカ Vol. 120:2021年3月3日配信】 – Link

5.アフリカのスタートアップ企業とスタートアップへの投資が牽引するデジタル化!【Pick-Up! アフリカ Vol. 167:2021年5月19日配信】 – Link

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