題:チャンスは海にあり!?アフリカのブルーエコノミー市場の可能性に迫る

訳 : アフリカ経済復活の起爆剤と見られるブルーエコノミー

英題:‘Blue economy seen as catalyst for Africa’s economic resurgence

記事リンク:https://allianceforscience.cornell.edu/blog/2022/02/blue-economy-seen-as-catalyst-for-africas-economic-resurgence/    

キーワード:アフリカ ブルーエコノミー 海洋資源

こんばんは!pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。

皆さん、ブルーエコノミーという言葉はご存じでしょうか?ブルーエコノミーとは、漁業に限らず、海洋資源を利用した経済活動全般を指す言葉であり、例としては水産業、観光業、海洋資源を利用した製薬、エネルギー産業などが挙げられます。(参考1

今回ご紹介する記事ではアフリカの海洋資源に着目し、アフリカにおけるブルーエコノミーへの期待、ポテンシャルについてお伝えします。

アフリカのブルーエコノミーの可能性

引用元の記事によると、現在世界中で海洋バイオテクノロジー市場が急速に拡大しており、市場規模は2020年から2024年の間に25億ドル、年平均成長率8%で増加しています。

またこちらの記事では今後のブルーエコノミーの予想される経済成長について言及されており、OECD(経済協力開発機構)が発表した試算によると、現時点でブルーエコノミーがもたらす経済効果は約1兆5000億ドルにも及んでおり、2030年にはさらに2倍以上になると予想されています。

そんな中で、今回ご紹介するアフリカのブルーエコノミー市場も大きな注目を集めています。

こちらの記事によれば、アフリカの全55か国のうち38か国が海に面しており、そのうちの70%が排他的経済水域を保有しているほか、その多くが未だ未開発の状態であることが記されています。そのため、アフリカが保有する海洋資源が未だ多く存在していると見られるほか、多くの市場に未だ参入の余地があると考えられます。

加えて別の記事によると、アフリカ連合(AU)の予測では2030年までにアフリカの海洋関連の観光業は1000億ドル、ブルーエコノミー全体では4050億ドルの市場価値を創出すると見られており、高いポテンシャルをもつ市場であることが伺えます。

引用元の記事では、アフリカのいくつかの国の実際のブルーエコノミーへの取り組みが紹介されています。

インド洋に位置する島国のセーシェル共和国では、昨年アフリカ開発銀行から80万ドルの融資を受け、国を挙げて海洋バイオテクノロジー分野の研究開発に取り組んでいます。研究施設等のインフラ整備に加え、中小企業の設立、起業家支援など、それらのテクノロジーの商業利用の環境整備を行っています。

同じくインド洋に位置するモーリシャス共和国も海洋バイオテクノロジー市場の拡大を目指しており、特に同国では海洋資源を利用したバイオエネルギーの生産に力を入れています。同国はブルーエコノミー市場のGDPを、中期的なプランで20%に増加することを目標としており、海洋バイオエネルギー産業の拡大がカギになると見られています。

3500㎞以上の海岸線を持つモロッコでは、海洋資源の研究開発と商業利用のプラットフォームとしてBioxparcを設立し、この機関を通じて食、医療、エネルギー産業など様々な業界と研究機関との関係性を深め、海洋資源の共有を促進しています。

ブルーエコノミーへの期待と課題は

このようにアフリカのブルーエコノミー関連産業には様々な形での利用が考えられ、アフリカの多くの国々が抱える食糧問題、貧困、失業者の増加などの社会課題に対する効果的な解決策となることが期待されます。

こちらの別の記事では、アフリカ沿岸部の急激な人口増加について言及されており、記事によると、2020年の時点で海岸から半径100㎞以内の範囲あたりの人口は北アフリカー中央東アフリカにおいて約4500万人、サブサハラアフリカで約5900万人であると推計されています。

この数字は2035年までにそれぞれさらに18%、42%増加すると見られており、この増加率は世界の平均値を大きく上回る数値です。人口の増加に伴い、さらに市場規模、アフリカ沿岸部の経済圏が拡大していくことが予想されます。

このことからアフリカ連合(AU)は、2030年までにブルーエコノミー市場の市場規模を4050億ドル拡大、新たに570億人の雇用を創出することを目標に掲げています。

一方で、沿岸部の人口の増加は懸念材料の一つとしても取り上げられています。沿岸部の人口が増加することは、限られた海洋資源の乱獲につながる危険性があるほか、海洋汚染の原因ともなります。このままの状態で人口の増加が進んだ場合、2035年までにはアフリカの沿岸部に住む約1億4300万人の人々に、気候変動という形で影響が及ぶと指摘しています。

同記事内ではこの課題を解決するための手段として、沿岸海洋分野の科学力、データの蓄積の向上を挙げています。特に同記事では研究における南北問題(先進国と開発途上国間の格差)について触れており、アフリカにおける研究インフラが未整備であることが、科学的な知見の政治における意思決定に介入しにくく、結果として法整備の遅れにつながっているとまとめられています。

引用元の記事においても、研究開発、人材育成、研究設備インフラの整備などへのさらなる投資が必要であると述べられています。ブルーエコノミー産業の技術力の強化に加え、このような研究施設のインフラを整備することは、優秀な研究者の海外への流出(=brain drain)を防ぐという観点からも重要であることが言及されています。(詳しくはこちら

以前アグリテックの記事でご紹介した企業の中にも、ドローンを用いてティラピアの養殖管理を行っている企業がありましたが、漁業に限らず、今後このようなビジネスも増えてくるのではないかと思われます。

いかがでしたでしょうか。これからのアフリカのブルーエコノミー市場から、目が離せませんね。Pick-Up!アフリカでは、この話題に関して新たな情報が入り次第、逐一お伝えしていきます。

またPick-Up!アフリカを運営するレックスバートコミュニケーションズは、アフリカ進出に関するご相談をお受けしております。ご興味がある方はぜひ下の「ご相談 お問い合わせ」からご連絡ください。

参考文献:

1.【サステナブル・ブルーエコノミー】日本の「サステナブル・ブルーエコノミー」の規模を測る – Link

2.To Reap Benefits of ‘Massive’ Blue Economy, Small Islands, Least Developed Coastal States Need Multidimensional Vulnerability Index That Addresses Risks – Link

3.Africa can become a vibrant ‘blue economy’ – International Water Association – Link

4.Ocean Decade: Blue economy presents vast opportunities for Africa – Link

5.Taking charge of Africa’s oceans and blue resources | Africa Renewal – Link

6.アフリカ、医療従事者の頭脳流出問題について【Pick-Up! アフリカ Vol. 89:2021年1月25日配信】 – Link

7.2022年の資金調達から見る、躍進が期待されるアフリカのアグリテックスタートアップ企業7選(シリーズ:アフリカの農業とイノベーション 其の5)【Pick-Up! アフリカ Vol.51:2022年7月15日配信】 – Link

関連記事:

1.TRUE-FISHプロジェクト:東アフリカで養殖業の開発促進へ【Pick-Up! アフリカ Vol. 102:2021年2月9日配信】 – Link

2.アフリカの日が開催!今年のテーマは「栄養と食糧安全保障」【Pick-Up! アフリカ Vol.37:2022年6月3日配信】 – Link

3.SDGs8:南アで第5回児童労働撤廃国際会議が開催|アフリカ農業における児童労働問題の解決に向けて【Pick-Up! アフリカ Vol.39:2022年6月10日配信】 – Link

4.増加するアフリカアグリテック市場への投資:加速するスタートアップへの期待と課題(シリーズ:アフリカの農業とイノベーション 其の4)【Pick-Up! アフリカ Vol.50:2022年7月8日配信】 – Link

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