こんにちは!Pick-Up! アフリカです。

前回の外交シリーズでは、中国のアフリカ進出に焦点を当て、農業分野における中国とアフリカの関係増強に関して紹介しました。(過去記事はこちら:中国のアフリカ進出、なぜ農産物貿易にフォーカス?

そこで今回はアフリカ大陸という場で繰り広げられる中国とアフリカの緊張関係を見るべく、両国のエネルギー安全保障に不可欠な天然資源に関するニュースをご紹介します。

元記事:US eyes chance to challenge China’s dominance in key African trade corridor

アメリカ・中国からアフリカへの投資の動向

現在、アメリカと中国どちらの方がアフリカにおけるプレゼンスが高いのでしょうか。

参考記事によると、2019年時点で対アフリカ直接投資(FDI)のストックは、中国(440億米ドル)が世界4位で、アメリカの世界5位(430億米ドル)を上回っているようです。

実は、アメリカは2000年〜2020年における対外投資額のうち、アフリカへは全体の1%しか当てられていないのです。

一方、中国からアフリカへの直接投資は2003年から2020年にかけて100倍にまで増加しました。そして中国がアフリカに貸しているローンの額は、2000年から2019年の間で1530億ドルにも上るようです。中でも、中国は天然資源の豊富なDRC(コンゴ民主共和国)と南アフリカに最も多く投資しており、その2カ国だけで中国からアフリカ大陸へのFDIストックの63%を占めるようです。

日常でよく聞くように、中国は「一帯一路」構想の達成を測り、アフリカにおいてもどんどん投資を増やし(詳しくはこちら!)ていますが、アメリカも、かつての影響力を復活させるべく、アフリカへの投資に再び注力しています

例えばアメリカは昨年、アフリカが食糧安全保障のために取り組んでいるデジタル土壌マッププロジェクトへ2000万ドルの投資を決めました。(詳しくはこちら

南部アフリカの天然資源をめぐる、中国とアフリカの投資競争

前置きが長くなってしまいましたが、本題に入っていきたいと思います。

6月初旬の元記事によると、アメリカが南部アフリカの主要な貿易回廊建設に対し、2億5000万米ドルを融資することを検討しているとのことです。目的は、銅・コバルトなどの電子機器、電気自動車のバッテリーに使われる資源へのアクセスを守ること。この貿易回廊はロビト・大西洋鉄道回廊(Lobito Atlantic Railway Corridor)という名前で、アンゴラ〜コンゴ民主共和国のカタンガ(鉱山地帯)、ザンビアの銅ベルトまで伸びる回廊です。

China-Lusophone Briefより

この鉄道は、内陸部にあるコンゴ民主共和国やザンビアで採れた資源を、輸出のためにアンゴラのロビトの積出港に運ぶための大事なインフラで、この鉄道ができれば、今までは数週間かかっていた輸送時間が数日に短縮できるようになります。

中国はザンビアの銅採掘や、世界のコバルト採掘量の70%をも占めるDRCに巨額の投資をしており、もちろんロビト・大西洋鉄道回廊への投資にも熱心なため、今回のアメリカの声明は、アメリカと中国との投資競争に繋がりかねないようです。

しかし、この融資はアメリカの独断で行われている訳ではなく、中国の「一帯一路」構想に対抗すべく、G7で取り組むことになった途上国インフラ投資支援計画(PGII)の一部でもあり、バイデン大統領は今年5月に開催された広島G7サミットでもこの意向を表明しました。

というのも、今世界でグリーンエネルギーへのトランスフォーメーションが重要視される中、グリーンエネルギーに必要な資源(コバルト、リチウム、黒鉛など)の加工・精錬のマーケットはほとんど中国に独占されている状況なのです。

よって、アメリカや幾つかの国は、中国がアフリカの鉱山から港湾までの重要なサプライチェーンを支配する状況を防ぎたいと考えています。なぜなら、米中関係が悪化すれば、中国がその支配状況を利用し、アメリカのエネルギー安全保障が脅かされかねないからです。

この中国・アメリカの確執に対し、アンゴラ側は、中国に限らず他のパートナーとも交渉をする意欲を見せているものの、過去20年間に渡って中国が行ってきた力強い投資があるために、中国とのパートナーシップが崩れることはないということも示唆しています。

しかし、アメリカはロビト・大西洋鉄道回廊への投資だけでなく、少し視点を変え、より大きな枠組みである南部アフリカ開発共同体(SADC)への投資を狙っています。SADCに投資するということは、アンゴラとだけでなく、共同体に加盟する他の国々とのパートナーシップも増強することができるからです。こうすることで、前出のように政治的にもこの地域の国々との繋がりを強め、中国と西側諸国の経済的・政治的確執や情勢悪化の際の優位性を確保する一つの方法と捉えられています。

このようにして、中国とアメリカは南部アフリカを舞台に、天然資源を確保し自国のプレゼンスを向上させるための投資競争を行っているようです。


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