題:アフリカのデジタル土壌マッププロジェクト始動:アメリカが2000万ドルの投資を表明

訳 : FAOが中央アメリカとサブサハラアフリカの土壌マップ作成を推し進める。

英題:‘FAO to boost soil nutrient mapping in Central America and sub-Saharan Africa

記事リンク:https://african.business/2022/07/apo-newsfeed/fao-to-boost-soil-nutrient-mapping-in-central-america-and-sub-saharan-africa/   
キーワード:農業 化学肥料 アメリカ FAO

こんばんは!pick-up!アフリカです。いつも記事をご覧いただき、ありがとうございます。

本日は、FAOが取り組んでいる、サブサハラ地域で行っている土壌マッププロジェクトについてご紹介します。

引用元の記事によると、現在FAOは中央アメリカ、サブサハラ地域を中心に、土壌成分のデジタルマップ作成事業に取り組んでおり、アメリカ政府が今回このプロジェクトに2000万ドルの出資を表明しました。

記事によると、デジタル土壌マップ技術は農業における肥料利用の効率化を促進し、食糧安全保障を高めることが期待されています。本プロジェクトの主なターゲットである中央アメリカ、サブサハラアフリカは、近年の石油燃料価格の高騰に伴う肥料価格の上昇、異常気象による気象災害リスクなどにさらされており、食糧供給の安定化が求められています。

今回のデジタル土壌マップは、専門家による実際の現地での土壌調査をもとに、そこから得られたデータを衛星写真や反射率に反映させて作成されます。

このように大陸の土壌に対するデータベースを作成し、誰もがアクセスできる情報を提供することで、政府の意思決定ツールとしての活用や、小規模農家の肥培管理の際のアドバイスツールとして機能すると見られており、これにより、長期的なスパンでの食糧供給の安定化が期待できるほか、短期的な視点においても、昨今問題になっている肥料の市場価格の変動に柔軟に対応することが可能となります。

加えて、土壌の成分を把握し肥料の利用効率を高めることは、土壌への余計な投入物の使用を減らし、持続的な農業をサポートします。それにより、農業が原因で発生する気候変動へのリスクを低減すると見られています。

引用元記事では、異常気象によって引き起こされる気象災害へのレジリエンスを高めるためにも、デジタル土壌マップから得られる情報に基づいた意思決定と、定期的な土壌のモニタリングを続ける必要があると述べられています。

加えて記事では、実際にデジタル土壌マップがアフリカで導入された事例が紹介されています。エチオピアの農業トランスフォーメーション庁(ATA:the Ethiopian Government’s Agricultural Transformation Agency)が2012年に開始したEthioSIS(The Ethiopian Soil Information System)と呼ばれるプロジェクトは、アフリカで初めて衛星データを用いたデジタル土壌マッピング技術が用いられた事例です。

10万点以上の土壌サンプルから22区分の土壌マップの作成を行っているほか、それらを元に、12種類以上の肥料成分から地域に合わせたオリジナル肥料の開発、提供を行っています。(2.3

デジタル土壌マップの例
(出典:https://esdac.jrc.ec.europa.eu/content/soil-map-soil-atlas-africa )

アメリカの対アフリカ戦略

続いて、今回のプロジェクトにおけるアメリカの動きについてひも解いてみたいと思います。

今回のプロジェクトにアメリカが資金提供を行った背景には、アメリカ政府がアフリカへの進出を促進し、大陸内での影響力を強めたいという狙いが見受けられます。

その根拠として、ホワイトハウスが公式に発表したアフリカ進出戦略が挙げられます。

同文書内では、アメリカ政府はアフリカの進出に対して、1.開放的な社会の育成2.民主主義と安全保障の提供3.パンデミックからの回復と経済の発展4.環境保全、気候変動、エネルギー転換におけるサポートという4つの目標が掲げられています。

さらに、1.開放的な社会の育成という点に関しては、アフリカの経済システムをより世界に開放的にすることは、アメリカとの貿易・投資を拡大し、中国・ロシアなどによる有害な行動に対抗する(counter harmful activities by the People’s Republic of China, Russia, and other actors)と文書内に記されています。(4

これは、すでにアフリカで強い影響力を持つ中国、ロシアに対抗したいというアメリカ政府の狙いがあると考えられます。(参考記事:AfCFTAと中国ルワンダの原子力産業

経済支援については、アメリカを含むG7参加国がアフリカを含む世界のインフラ投資に6000億ドルの投資を行うという目標を掲げており、その計画の一環として、アメリカも5年間で2000億ドルの投資を行うと表明しています。

加えて昨年11月にスコットランドのグラスゴーで行われた気候変動サミットにおいて、アフリカ経済の気候変動への対応に対する資金援助を約束しています。

その中には農業に関する支援も含まれており、気候変動へのレジリエンスを高め、サプライチェーンの効率化を計る取り組みに対して、アフリカ16か国に5年間で110億ドルの投資が計画されています。(5

アフリカとアメリカの関係性に関しては、12月にアメリカと大陸各国首脳間での首脳会議が予定されています。(6
気候変動に対する取り組みをはじめ、両国間における重要なターニングポイントとなりそうです。

今回のデジタル土壌マップに関する情報について、Pick-up!アフリカでは今後も続報を逐一ご紹介します。

またPick-Up!アフリカを運営するレックスバートコミュニケーションズは、アフリカ進出に関するご相談をお受けしております。ご興味がある方はぜひ下の「ご相談 お問い合わせ」からご連絡ください。

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