先月、甲子園が閉幕しました。そして今、春夏3度目の出場を遂げたおかやま山陽高校の監督でありながら、ジンバブエナショナルチームのマネージャーを務める堤尚彦氏が執筆された著書、『アフリカから世界へ、そして甲子園へ』が、注目を浴びています。

ということで本日は、ジンバブエをはじめとするアフリカ諸国における野球の普及度合いと、普及活動を行う日本のプレゼンスを解説いたします。

アフリカで野球はプレイされているの?強い国はどこ?

まず、世界野球・ソフトボール連盟 (WBSC)が今年8月15日に発表した競技別の世界ランキング(2023)に、アフリカがどのくらいランクインしているのかを見ていきましょう。

野球

男子野球では、南アフリカ共和国が28位、ウガンダが44位、ケニアが57位、タンザニアが75位。残念ながら、野球のトップ20にアフリカ諸国は1カ国も入っていませんでした…

アフリカの中で最も強いのが南アフリカ共和国。実は南アフリカのナショナルチームは2000年のシドニーオリンピックに出場し、そこで野球が国民に注目を浴びるきっかけになり、大きな宣伝効果となりました。(参考記事)そういえば、南アにいる知り合いの大学生が、幼い時に学校で野球をする機会があり、今でもプレイこそはしないものの、観戦はしていると言っていました。

<詳しく知りたい方必見!!>

WBCにちなんで投稿したこちらの過去記事では、WBCの予選に参加した南アフリカ、ナイジェリア・ウガンダ・カメルーンにおける野球の現状や、ガーナでご活躍されるJICA職員の方を紹介しています。
まだご覧になっていない方はぜひ、ご覧ください!詳細はこちらから↓

それでは、野球をベースとした他の競技のランキングはいかがでしょうか?

ベースボール5

2018年に新しく生まれた、ベースボール5(1チーム5⼈制・5イニングからなる野球/ソフトボールの競技)をご存知でしょうか?この競技のランキングを見てみると、なんと南アフリカが5位、ケニアが9位、ガーナが13位、ザンビアが17位、タンザニアが20位にランクインしていました!

野球となると、日米やヨーロッパの国々がやはり上位を占めてしまっておりますが、ベースボール5ではアフリカの国々が何ヶ国も活躍しているようです。

2022年に行われた第1回WBSCベースボール5ワールドカップでは、アフリカ枠で南アフリカ共和国とケニアが出場しました。上記のランキングにある国以外にも、チュニジアやウガンダなども予選に参加していたようです(参考記事)。

なぜアフリカ大陸では、新しい競技であるベースボール5が強いのでしょうか?

こちらの記事によると、都市型に作られたベースボール5は、ボールさえあれば練習場所が必要なく、どこでもプレイできる上に、従来の野球に比べ必要な道具が少ないため、ハードルが低いという特徴があるとのこと。このおかげでアフリカ大陸ではベースボール5がポピュラーなようです。

ソフトボール

驚いたことに、アフリカでは野球よりもソフトボールの方が存在感があるようです!

男子のランキングを見てみると、南アフリカが14位、ボツワナが18位、ケニア35位、ウガンダ38位。女子のランキングは、南アフリカ31位、ボツワナ32位、ケニア56位、レソトが61位でした。野球やベースボール5には出てこなかった、ボツワナとレソトが浮上してきました!

調べてみたところ、実は日本はボツワナにソフトボールの道具を提供するなど、関係を持っているようです。(参考記事

アフリカ唯一のメジャーリーグスターがアフリカの野球に風を吹かす?

実は、アフリカ大陸出身の元メジャーリーガーがいらっしゃるのをご存知ですか?

彼の名はギフト・ンゴエペ氏南アフリカ出身の元プロ野球選手です。彼は1990年に南アフリカ共和国のリンポポ州で生まれ、野球のクラブハウスで育ちました。

参照元
参照元 : Wikipedia

彼は10歳という若い年齢でナショナルチームに入り、18歳でメジャーリーグアカデミーに入りました。その後はルーキーレベルのガルフコースト・リーグ・パイレーツと契約し、8年間マイナーリーグでプレーしました。彼がメジャーリーグに入った2017年まで、10年かかったそうです。(参考記事

彼は現役を引退し、今年からアリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下ルーキー級のACLダイヤモンドバックスのコーチに就任し、今年3月に行われたWBCにも、南アフリカ代表として出場しました。

彼の夢は、南アフリカで野球をより人気に、そしてよりアクセスしやすいスポーツにすること、恵まれない子供達が野球をプレイできる機会を与えることだそうです。(参考記事

アフリカで野球がマイナースポーツである理由

そもそも、なぜアフリカでは野球がマイナーなのでしょうか。対照的にサッカーやラグビーなどの競技はメジャーなスポーツとして広く国民にプレイされている国が多いようです。

こちらの記事によると、アフリカ大陸におけるスポーツの浸透は、植民地宗主国の影響を色濃く受けているようです。サッカーとラグビーの発祥はイギリス、一方野球の発祥はアメリカです。植民地時代、イギリスは多くのアフリカの国々を植民地化し、サッカーやラグビーを普及させていきました。一方で、アメリカがもつ植民地化は少なかったために、そしてヨーロッパの国々はイギリスから独立したアメリカのスポーツに関心を持たなかったため、アフリカでアメリカ発祥の野球が普及するきっかけがなかったという背景があります。

ジンバブエで野球はどのくらい広がっている?実は日本の支援がすごかった!

ジンバブエにおける野球の普及は、甲子園がきっかけで日本でも注目されましたが、実は30年以上前から、日本はジンバブエで野球の普及を始め、支援をしていました

こちらの記事によると、青年海外協力隊の初代野球隊員である村井洋介氏が、1992年にジンバブエで野球普及活動を始められたのが、日本による野球支援の始まりでした。

その後、日本から支援を募り、ジンバブエ初の本格的な野球場「ハラレドリームパーク」が建設されました。

そして、こちらの記事によると、堤監督は1997年、初めてジンバブエに訪れ、青年海外協力隊として野球の普及活動を始められたそうです。きっかけは、ジンバブエで野球を振興する日本人がいなくなることを嘆く村井洋介氏をテレビで見て、使命感を覚えたことだそうです。(参考記事

2007年には、堤監督は一度日本に戻られましたが、ジンバブエ野球協会(Zimbabwen Baseball Association)からの依頼を受け、ジンバブエの代表チームを2020年東京五輪に出場させるためのサポートを始められました。その中でジンバブエの選手を3名日本に派遣し、日本で野球について深く学んでもらったそうです。ちなみに、こちらの記事によると、堤監督は、ジンバブエで2年普及活動をされた後、ガーナやインドネシア、タイでも子どもに野球を教えたり、ナショナルチームへの指導を行ったそうです。そこで彼は、人材不足や必要な道具の不足に問題意識を持ったそうです。そのため、堤監督が高校野球の監督を始められた目的には、野球を世界中に広める次世代の人材を育成することもあったようです。

また、こちらの記事によると、野球場のあるジンバブエの首都・ハラレでは、青年海外協力隊の活動の成果もあり、学校や街で野球が少しずつ浸透し、特に若者から関心を寄せられているようです。

堤監督は、著書「アフリカから世界へ、そして甲子園へ」で得た印税で、ジンバブエ第二の都市・ブラワヨに球場建設を設立する計画を進められているようです。(参考記事

堤監督によると、ジンバブエナショナルチームは、日本企業からの支援は得ているものの、ジンバブエの青年・スポーツ・芸術・レクリエーション省からのサポートは不十分だそうです。具体的には、宿泊施設や食事などは援助してもらえているものの、報酬はもらえていないのが現状で、練習するのも経済的な負担が大きいようです。(参考記事

アフリカで野球を普及するために、日本はどんなことをしているのか?

J-ABS(アフリカ野球・ソフト振興機構)の活動

前回の記事でもご紹介したように、WBSCの一部の期間として、Japan-Africa Baseball & Softball Foundation (J-ABS)を設立し、日本式の野球をアフリカに普及する活動を行っています。(理念や概要はこちらの記事をご覧ください。)

J-ABSは、「アフリカ55 甲子園プロジェクト」というプロジェクトを行っています。これは、J-ABSが独自に開発した「ベースボーラーシップ教育」というものを軸として、コーチや審判の人材育成、日本の甲子園のような全国大会の運営支援、野球道具やグラウンドの環境整備、研修生招致を行っているようです。このプロジェクトはサブサハラアフリカ地域で展開されています。東アフリカはケニア・ウガンダ・タンザニア・南スーダン、西アフリカはガーナ・ナイジェリア・ブルキナファソ・ベナン、南部アフリカは南アフリカ共和国・ザンビアです。(詳しいプロジェクトの概要や写真はJ-ABSのサイトをご覧ください。)

KONAMIによる野球道具再利用プロジェクト

KONAMIは、日本の野球ファンと連携し、WBSC Africaを通して、野球の道具を寄付するプロジェクトを始めました。100人以上の日本ファンが参加した結果、バット29本、グローブ29個、ボール313個、キャッチャー1個が寄付され、WBSC Africaの選手に与えられたようです。(参考記事

日本国大使館からの支援

こちらの記事によると、去年12月にブルキナファソ(西アフリカ)の首都・ワガドゥグーに、新しい球場が立ったようです。敷地は21,822平方メートルで、なんと建設費の83,400米ドルは全て日本大使館の援助によるものだそうです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。アフリカ大陸では、野球はまだマイナースポーツと言える状態ですが、日本の普及支援もあり、少しづつ野球のプレゼンスが高まりつつあるようです。

これからアフリカで野球がより人気を増していくことが楽しみですね。

私たちPick-Up! アフリカは、これからもスポーツイベントの機会などに、アフリカのスポーツ事情について取り上げていく予定です。お楽しみに!


Pick-Up! アフリカを運営しているレックスバート・コミュニケーションズ株式会社では日本企業のアフリカ進出をサポートしています。

気軽にお問合せ、ご相談ください!

ご相談・お問い合わせ

アフリカ・ルワンダへのビジネス進出をご検討の際は、当サイトの運営に関わっているレックスバート・コミュニケーションズ株式会社までご相談・お問い合わせください。

コメントを残す