マラウイ:早期産児のケアの向上に努めるも、ギャップは消えず

Malawi is taking steps to improve care of preterm babies. But gaps remain

記事リンク:

Malawi is taking steps to improve care of preterm babies. But gaps remain (theconversation.com)

みなさまこんにちは!

本日は、マラウイでの早期産児に対する取り組みに関する記事をピックアップしてお届けします。


早期産児は、妊娠37週を迎える前に生きて産まれた赤ちゃんを指します。世界中で毎年1500万人ほどの赤ちゃんが早期産児として誕生しています。早期産児には危険な合併症が伴うこともあり、それによって亡くなる子どもの数は多く、5歳未満の子どもの死亡原因の第1位が早産とそれによる合併症というデータもあります。生存し成長を続けられる場合にも、多くは知的障害や聴覚障害や視覚障害などと付き合って生きていくことになります。

生存率には国によって大きな差があります。高所得国では早期産児の生存率は100%に近いですが、低所得国では、費用対効果の高く実行に移しやすいケアが十分になされていないことにより、早期産児の半数ほどが亡くなっています。また、中所得国では、不適切な技術の使用により、子どもたちの障害の重度が増すという事態が生じています。

アフリカ地域では、1000人あたり8.5人の割合の早期産児が命を落としています。これは高所得の国と比べると非常に高い数値です。そして、マラウイは世界的に見ても最も早産率が高い国であり、2015年時点では10人に1人の赤ちゃんが早期に産まれ、2016年の新生児死亡率は1000人あたり27人でした。

こうした状況から、マラウイでは早い時期から取り組みを始めています。そのなかで取り入れられているのが、「カンガルーマザーケア」というケアです。

カンガルーマザーケアは、早期産児や低体重児のケアに役立つ方法として広く知られています。母親の胸の上で赤ちゃんとスキンシップをとることで、赤ちゃんを温かく保つことができ、授乳の頻度を増やし、母親が赤ちゃんの病気の兆候に気づきやすくなります。こうしたはたらきにより、新生児や乳幼児の生存や健康や発達に重要な役割を果たします。

マラウイはこのカンガルーマザーケアを早い段階から導入し、2005年には日常のケアのための国家戦略にも組み込まれました。しかし、2016年の新生児死亡率は2004年からほとんど変わっていませんでした。

この原因として、病院の環境に着目し、記事では以下の点が指摘されています。

まず、早期産児の子どもへのカンガルーマザーケアが始まると、医療従事者は重症児を優先的に面倒を見るようになってしまいました。カンガルーマザーケアが行われている病棟は定期的な監視がされず、子どもたちに何か異変が起こった際には母親が助けを呼ぶことをスタッフたちも期待するようになっていたとのことです。こうして、子どもの危険にすぐに対応することができなくなり、治療が間に合わずに亡くなってしまうことにつながります。

続いて、病院での人員や機材や資金などが不足していることも指摘されています。特に地方の病院では夜勤の医療スタッフが少なく、重症児病棟に配属される看護師も少ないため、早期産児の病棟と重症児の病棟の両方を見回ることは難しいことが紹介されていました。病院のスタッフによる乏しいサポートのために、出産したばかりの母親たちが、子どもがまだ十分に大きくならないうちに退院するケースも見られるそうです。また、資金が不足しがちな病院では、医療に不可欠な基本的な設備が整わず、カンガルーマザーケアの導入さえもままならないところもあるようです。

このように、政府の方針もあり、カンガルーマザーケアを始めとする早期産児のケアの実施が国内で求められていますが、実際の現場では数々の不備により環境の整備が進んでいないというギャップが明らかになりました。カンガルーマザーケアは、WHOもその効果を認めるほどの良い策でありますが、実践するためには、医療従事者や設備や病院のサポートへのさらなる投資が必要となるでしょう。

今回ご紹介した記事では、主に病院での課題について記されていました。しかし、早期産児のケアや出産をめぐっては、他にも様々な課題があげられます。例えば、距離などの問題から病院に通うことができないこと、救急車の数が少なく、あるいは高額であるために緊急の際にアクセスできないこと、助産師や看護師などの専門の医療従事者数が不足していること、伝統的医療に頼っていること、などがあげられます。今日のアフリカは科学技術の発展が目覚ましく、医療分野においても、オンライン診療を始め、様々な革新的なアイディアや技術がうまれています。COVID-19によりその技術や導入がますますすすむなか、女性と子どもの健康がどの様に守られていくのか、注目に値するトピックだと思われます。

参考・関連記事

  1. Preterm birth (WHO) – Link
  2. Kangaroo mother care started immediately after birth critical for saving lives, new research shows (WHO) – Link
  3. アフリカの医療課題解決のための官民連携【面白記事 Vol. 61(2020年6月17日配信)】 – Link
  4. アフリカのヘルスケア- HIV検査プロジェクトとコロナ渦メンタルヘルスの課題【面白記事 Vol. 86: 2020年7月16日配信】 – Link
  5. アフリカのHealthTechスタートアップが史上最高数に!【面白記事 Vol. 95: 2020年7月30日配信】 – Link
  6. アフリカでのAI・テクノロジーによる医療革命【面白記事 Vol. 140: 2020年9月21日配信】 – Link
  7. マラウィ:「安全でない中絶」をなくすための議論【Pick-Up! アフリカ Vol. 19 (投稿:2020年10月26日)】 – Link
  8. コロナ禍で進む!アフリカのヘルスイノベーション分野【Pick-Up! アフリカ Vol. 40 (投稿:2020年11月19日)】 – Link
  9. 思春期の妊娠と健康問題に若者が挑む!【Pick-Up! アフリカ Vol. 149:2021年4月13日配信】 – Link

ご相談・お問い合わせ

アフリカ・ルワンダへのビジネス進出をご検討の際は、当サイトの運営に関わっているレックスバート・コミュニケーションズ株式会社までご相談・お問い合わせください。


コメントを残す