アフリカ最後の原野での大規模油田建設の中止を求めて

Calls to Halt Construction of Massive Oilfield in One of Africa’s last Wildernesses

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Calls to Halt Construction of Massive Oilfield in One of Africa’s last Wildernesses | Inter Press Service (ipsnews.net)

みなさんこんにちは!本日はエネルギー開発に関する話題をお届けします。

はじめに、アフリカにおける石油について簡単にご紹介します。

IEA(International Energy Agency=国際エネルギー機関)が発表したAfrica Energy Outlook 2019によりますと、2000年代前半には、ナイジェリアやアンゴラでの生産拡大に加え、チャドや赤道ギニアなどの新規生産国が加わったことでサブサハラアフリカは石油生産の著しい成長を見せました。その結果、2000年から2010年にかけての成長速度は世界平均の4倍を記録しました。その後2010年から2018年にかけては、世界情勢や国内の紛争や治安の悪化などの影響で、石油産出高は15%減少(2010年比)しました。このように、アフリカにおける石油産出状況は2000年以降大きく変動しています。そして近年、人口増加と技術進歩の発展が著しいアフリカ大陸では、エネルギー資源はますます重要なものになっています。

さて、今回ご紹介する記事は、ナミビアとボツワナの北部で行われている大規模油田建設に対して住民や環境活動家たちが中止を求めている、という内容のものです。

大規模油田建設は、カナダの石油・ガス会社であるReconAfricaがナミビア政府承認のもと行っています。ReconAfricaはボツワナとナミビアの北部の地域に34,000平方キロメートル以上の採掘許可付きの土地を所有し、油田の開発に取り組んでいます。

https://reconafrica.com/

ReconAfricaによると、この地域からは最大1200億バレルの石油が産出される可能性があり、これは過去数十年間で最大規模の量だといいます。この石油を商業的に利用することで、国家収入の大きな増加が見込まれ、地域に雇用や成長をもたらすことができるとして、ナミビアの鉱山・エネルギー大臣であるTom Alweendo氏をはじめとする政府関係者は期待を寄せています。

そのようなメリットをもたらすと考えられている油田開発は、なぜ地域の住民や環境活動家から中止の声をあびているのでしょうか。

これには大きく三つの要因があげられます。

一つ目は、油田建設がこの地域の自然環境に負のダメージを与えると考えられているためです。

この石油探査地域の大部分は、ユネスコの世界遺産であるオカバンゴ・デルタに流れ込むオカバンゴ川流域に属しています。この地域はカバンゴ・ザンベジ越境保全地域(KAZA)に重なっており、6つの野生生物保護区を有し、ゾウやサイやセンザンコウなどの絶滅危惧種や生存個体数の少ない動物たちが数多く生息しています。

このような豊かな自然や生物多様性に恵まれた地域で油田開発事業を行うと、例えば土地の調査を行う際の振動が野生のゾウの生活や行動に変化をもたらすなどの影響があると考えられます。また、建設事業や道路敷設やそれに伴う交通量の増加は、ゾウの通行ルートを変え、それまで通らなかった人が住む村や農業地域に近づくようになり、人間との対立の悪化も危惧されています。

さらに、国際エネルギー機関(IEA)が、2050年までに世界のエネルギー関連の二酸化炭素排出量を正味ゼロにし、地球温暖化を安全な範囲内に抑えるためには、新たな油田・ガス田の開発を行わない必要がある、と発表したことをうけ、いくつかの環境保護団体からは、このプロジェクトに対する疑問の声が上がっています。

二つ目は、に関する課題です。

石油や地熱などの地下資源を採掘する際には、「フラッキング」という、水圧で岩に亀裂を生じさせて取り出す手法がとられることがあります。しかし、この手法は水質汚染を発生させ、地域の水の供給に悪影響を与えるリスクをそなえています。ReconAfricaはフラッキングを行わないと述べていますが、万が一この手段がとられ、水の質や供給にトラブルが生じた場合、この地域の生態系や自然環境、住んでいる20万人もの人々の生活や命が脅かされると懸念されています。また、ナミビアは水不足に悩まされている国であるため、ますます飲料水や灌漑用水の不足が生じることも、反対への理由の一つとして考えられます。

三つ目は、地域住民の意見が反映されていないためです。

広大な面積にかけて行われ、数多くの地元住民にも大きな影響を与えるプロジェクトであるのにも関わらず、地元の人々がプロジェクトに参与できていないことが記事の中で指摘されています。ReconAfricaは説明会等を開いてはいますが、昨今のCOVID-19の影響で会場に行くのが難しいこと、オンラインでやろうにもインターネット環境が整っていないこと、紙媒体で説明されても読み書きができないために理解できないことから、住民たちはこのプロジェクトのことをほとんどよく知らないそうです。住民たちは必ずしも石油掘削に反対しているわけではないですが、計画に関して必要な情報が与えられないことに不満を抱いているようです。

こうした理由から、地域住民や野生生物活動家、環境活動家は大規模油田建設の中止を求め、地球全体の利益のための国際的な行動を呼びかけています。

これに対してReconAfricaは、プロジェクトはナミビア政府の規制と政策や国際的な慣習に従っていると述べ、考えられる課題に対しては予防措置をとり、「環境と社会に配慮した責任ある方法を用いて経済的・社会的利益を提供する助けとなる」ことができると信じているという旨の生命を発表しています。

アフリカの国々は先進国に原料や資源を供給するためだけの存在ではもはやありません。特に資源に関する問題は地球規模の影響をもたらすこともあるため、国際的な協力の下取り組んでいかなければならないでしょう。

連・参考記事:

  1. Questions remain over future of Namibian oil discovery – Link
  2. Test drilling for oil in Namibia’s Okavango region poses toxic risk – Link
  3. A Big Oil Project in Africa Threatens Fragile Okavango Region – Link
  4. ReconAfrica ホームページ – Link
  5. Africa Energy Outlook 2019(IEA)- Link

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