Pick-Up! アフリカの運営メンバーです! ルワンダで留学・インターン・プロサッカーチームの練習生をやっていました。 X→Hiro_Pick_Up

2026年に北中米(アメリカ・カナダ・メキシコ)で共同開催されるFIFAワールドカップ。今大会から出場枠が従来の32カ国から48カ国へと大幅に拡大され、アフリカ大陸の出場枠も従来の5枠から10枠へと倍増しました。過去最多となるアフリカ諸国が世界の舞台に立つことになります。

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この歴史的な大会を前に、アフリカの代表チームの勢力図に大きな変化が起きています。それは、ヨーロッパで生まれ育ったアフリカ系移民の選手、いわゆる「ディアスポラ(海外移住者・帰化選手)」たちが、自身のルーツであるアフリカの国籍を選択し、代表チームの中核を担うようになっているという事実です。

本記事では、2026年W杯に向けてアフリカの代表で急増する帰化選手の背景と、彼らの活躍によって一躍世界トップクラスの強豪へと成長したモロッコの戦略について、現地の報道を交えながら解説します。

代表選手の半数を占める? アフリカにおける「帰化選手」の圧倒的な存在感

現在のアフリカサッカーを語る上で、ヨーロッパ生まれの選手たちの存在は避けて通れません。かつては、ヨーロッパの強豪国で代表入りを果たせなかった選手が、やむを得ず親の出身国であるアフリカの代表を選ぶというケースが散見されました。しかし現在は、ヨーロッパのトップリーグで活躍する第一線のスター選手が、若いうちから自らの意思でアフリカ代表を選択するケースが急増しています。

この現象は数字にもはっきりと表れています。スペイン・カタルーニャの有力紙『Ara』は、アフリカの強豪国における帰化選手の多さについて次のように報じています。

「モロッコとセネガルは、アフリカサッカーにおける成長現象を象徴している。それは、アフリカ諸国で生まれた選手のチームを補強するディアスポラ(海外移住者)選手の存在だ。事実上、両チームの登録選手の半分は、彼らが代表する国以外で生まれている」

出典:Ara.cat “Africa Cup of Nations, the magic of a single night”

同記事によれば、セネガル代表には11名のフランス生まれの選手がおり、彼らはセネガルの国内クラブでのプレー経験がないとのことです。現代のアフリカサッカーにおいて、強力な代表チームを作るためには、いかにヨーロッパで育成された自国ルーツの才能を発掘し、チームに組み込むかが鍵となっているのです。

なぜ才能はアフリカへ還るのか? 帰化選手急増の背景

ヨーロッパで育った有望な選手たちが、次々とアフリカの代表チームを選択している背景には、「ルールの緩和」と「アイデンティティの探求」があります。

第一の要因は、FIFA(国際サッカー連盟)による国籍変更ルールの緩和です。これまではA代表召集前のアンダー世代での出場歴があるだけで、国籍の変更は認められませんでした。しかし、段階的にルールが緩和され他国A代表を経験した選手でも、一定の条件を満たせば、自身のルーツである国へ登録を変更することが容易になりました。これにより、多くの選手がキャリアの選択肢としてアフリカを現実的に捉えるようになっています。

期間主な条件
〜2003年アンダー世代(U-17/U-20等)の公式戦に一度でも出場すると変更不可。
2004年・2009年「21歳未満」であれば一度だけ変更可能(2004年)。その後「21歳未満」の年齢制限も撤廃(2009年)。
2020年〜現在A代表の公式戦出場後でも「3試合以下」「21歳未満での出場」「3年の待機期間」等の条件を満たせば変更可能。

しかし、根底にある最大の理由は、選手たちの「ルーツへの渇望」です。スペイン代表でのプレー経験がありながら、モロッコ代表への国籍変更を決断し、2025年のアフリカネイションズカップ(AFCON)でモロッコの主役となった至宝ブライム・ディアスは、自らの決断について次のように語っています。

「私は100%スペイン人であり、100%モロッコ人だと感じています。スペインで育ちましたが、私にはモロッコのルーツがあります。(中略)私は常に心で決断を下します。今回もそうでした。私が愛する2つの国の間で選ばなければならなかったのです。モロッコは私にこの機会を与えてくれましたし、彼らが示してくれた愛情とプロジェクトは、私にとって非常に素晴らしいものでした。私は自分の決断を100%確信しています」

出典:Goal.com “Brahim Diaz has shown his class at AFCON – now Morocco’s star forward deserves a bigger role at Real Madrid” 

このディアスの言葉が示すように、欧州社会で育った選手たちにもルーツのあるアフリカ諸国への思いがあり、その思いを国籍変更ルール緩和が後押ししているかたちになっています。

「欧州の技術」と「アフリカの情熱」を融合:モロッコサッカー連盟(FRMF)の戦略

こうしたディアスポラ選手の取り込みにおいて、現在世界で最も成功しているロールモデルと言えるのがモロッコです。

モロッコ代表は、2022年のカタールW杯でアフリカ勢として歴史上初めてベスト4に進出する快挙を成し遂げました。この成功は偶然ではなく、モロッコサッカー連盟(以下、FRMF)が10年以上にわたって推し進めてきた「ディアスポラ選手召集プロジェクト」の賜物です。

ケニアのメディア『KBC Digital』は、モロッコが世界的強豪へと躍進した背景にあるFRMFの緻密な戦略について、次のように詳細に報じています。

「彼ら(モロッコ)の賞賛に値する4位という結果は、ディアスポラを統合し、ヨーロッパのスキルとモロッコの情熱を融合させた選手でチームを強化するという国家的な戦略の証であった。10年以上にわたり、FRMFは、国際的なタレントスカウティング、家族との関わり、そしてトレーニングプログラムを融合させた枠組みを構築してきた。

(中略)

このアプローチは現在、大きな成果を上げている。連盟は、フランス、オランダ、ベルギー、スペインの各アカデミーで強力なプレゼンスを確立している。これは単なるタレントの『引き抜き』ではない。元モロッコ代表監督のワリド・レグラギ(彼自身もフランス生まれのディアスポラである)が説明するように、帰属意識、アイデンティティ、そして機会を育むために、選手とその家族、そしてコーチとの関係を構築することなのだ。」

出典:KBC Digital “Morocco’s football success in rising to become a global powerhouse”

この記事が指摘するように、FRMFは欧州各国に「草の根のスカウト網」を張り巡らしています。彼らはヨーロッパ各地に独自のスカウトを配置し、有望なモロッコ系選手が10代前半の頃からコンタクトを取ります。そして選手本人だけでなく、その両親や祖父母といった家族コミュニティと深い関係を築き、選手のモロッコ代表選択を後押ししています。

アクラフ・ハキミ(スペイン生まれ)やハキム・ツィエク(オランダ生まれ)、ブライム・ディアス(スペイン生まれ)といった世界トップクラスの選手たちが、最終的に生まれ育ったヨーロッパの強豪国ではなくモロッコを選択したのは、連盟が長年かけて培ってきた繋がりがあったからこそです。

おわりに

モロッコの圧倒的な成功を目の当たりにした他のアフリカ諸国(アルジェリア、セネガル、ガーナなど)も、現在急ピッチで欧州各国のディアスポラ選手との関係構築を強化しています。

2026年W杯では、10カ国のアフリカの代表がピッチに立ちます。高度な戦術理解とテクニックを持つ「ヨーロッパ育ちの帰化選手」たちと、身体能力に秀でた自国出身選手たちが融合した新時代のアフリカ代表は、もはや「身体能力頼み」というかつてのステレオタイプには当てはまりません。

欧州で育まれた才能が、祖国への誇りを胸にアフリカのユニフォームを纏うとき、2026年の北中米の舞台で「アフリカ旋風」が巻き起こることを期待しています!

また、日本代表はグループステージでチュニジア代表と対戦します。

熱い闘いに大注目です!!

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