アフリカ中部に位置するカメルーンは、政治的に不安定であったり、武力紛争が絶えない一部の周辺国と比べると、比較的安定した国と見られることもありますが、実際に滞在する際は、「地域による治安差」と「日常的な犯罪リスク」の両方に注意が必要です。

本記事では、カメルーン全体の治安状況から、首都ヤウンデでの具体的なリスク、そして実践的な対策まで、ヤウンデ在住歴1年以上の外山が現地経験に基づいて詳しく解説します!

解説:ヤウンデの観光スポット「再統一記念碑(Monument de la Réunification)」からのヤウンデ市内の眺め。

カメルーン全体の治安状況

カメルーンの治安は地域ごとに大きく異なります。

特に以下のオレンジ・赤色で塗られた地域は、外務省などでも「危険レベル3(渡航中止勧告相当)」や「危険レベル4(退避勧告)」や「レベル2(不要不急の渡航は止めてください。)」に分類されることが多いエリアです。(※2025年08月04日時点の情報)

↑危険レベルごとに塗り分けがされているカメルーンの地図。ヤウンデ、ドゥアラ、クリビなど駐在者や観光客が訪れる地域は「レベル1」。ただ、北部州・極北州・英語圏・国境沿いの地域は治安場の危険レベルが高く、「レベル2」〜「レベル4」となっている。

※参考:外務省海外安全ホームページ

「危険レベル4(退避勧告)」の地域

  • 極北州

ナイジェリア北東部を中心に活動しているイスラム過激派組織(「ボコ・ハラム」や「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」など)がカメルーンに越境し、断続的にテロ活動を行っています。

外務省は同州への渡航について「どのような目的であれ止めてください。また、既に滞在されている方は、直ちに退避してください。」と退避勧告を出しています。

「危険レベル3(渡航中止勧告相当)」の地域

  • 北西州・南西州(カメルーンの英語圏地域)
  • 中央アフリカ国境地帯
  • 北部州のナイジェリア国境地帯及びチャド国境地帯

これらの地域では、英語圏の分離独立問題に伴う武装衝突や、イスラム過激派組織ボコ・ハラムによるテロ活動のリスクが存在します。

外務省はこれらの地域について「渡航は止めてください」と渡航中止勧告を出しています。

「レベル2(不要不急の渡航は止めてください。)」の地域

  • 北部州(ナイジェリア国境地帯及びチャド国境地帯を除く)、アダマワ州のナイジェリア国境地帯、西部州の北西州との州境地帯

北部州の州都であるガルア市(Garoua)はレベル2に含まれます。

野党の有力政治家イサ・チロマ・バカリ氏の邸宅が同市にあり、同候補に対する市民の支持が厚いことで知られます。2025年の大統領選挙では、選挙にて不正を訴えたバカリ氏を支持する市民と治安部隊との衝突が起き、政変時に最も荒れたエリアの一つとなった経緯があります。

※参考:カメルーンの政変

一方、カメルーンの広範の地域は比較的落ち着いているとされ、「レベル1(十分注意)」と評価されることが多いです。観光客や駐在者が訪れるであろうヤウンデ、ドゥアラ、クリビなどもレベル1に含まれます。ただ、これは決して安全を意味するものではありません。日常生活においても、軽犯罪から突発的なトラブルまで幅広いリスクが存在します。ここからは、現地生活約1年の私が、レベル1でも起きうる犯罪とその注意点について、自身や周りの体験談も交えて解説していきます

カメルーンでよくある犯罪と注意点

ひったくり・スリ(最も一般的な犯罪)

カメルーンでは、外国人だけでなく現地の人々も日常的に被害に遭う犯罪が、ひったくりやスリです。特に注意すべきは以下のような手口です。

  • バイクに乗った犯人による高速ひったくり(バッグや携帯など)
  • ナイフでショルダーバッグの紐を切断

特に、猛スピードのバイクによる犯行は、単なる盗難にとどまらず転倒や負傷といった重大事故につながることもあります。また、ブランド品は人目を引きやすく、盗難のリスクが高まる可能性があります。そのため、外出時には必要以上に持ち歩かないことをおすすめします。

実践的な対策として、以下のような行動を挙げます。

  • 貴重品は外から見えない位置に!(ズボンのポケット+長めのシャツでカバー)
  • 貴重品とそれ以外の荷物を分ける
  • バッグは車道と反対側に持つ
  • 外ではスマートフォンや財布を極力取り出さない

※実際、カメルーンでは日本のような「歩きスマホ」はほとんど見られません。

実際に、筆者は貴重品でない持ち物(弁当箱や折り畳み傘など)は、トートバッグに入れて持ち歩いています。また、カバンは車道の反対側で握っています。そうすることで、万が一ひったくりにあっても、トートバックのためすぐに引き離すことがスムーズに身体から離れ、引きずられるや転倒などのリスクを軽減できるほか、貴重品が入っていないので、被害を最小限に抑えられると考えています。

集団リンチ

カメルーンでは、警察などの治安機関が十分に機能しないケースもあり、住民による「私刑」が発生することがあります。

窃盗犯などが捕まった場合、周囲の人々によって暴行を受けるケースも珍しくありません。実際に複数人による集団リンチの現場に筆者は遭遇したことがあります。

日本大使館は、「安全の手引き」にて、そのような集団リンチの現場に遭遇した場合は「巻き込まれないよう速やかに現場を離れてください」と勧告しています。

タクシー利用時のリスク

市内には黄色の乗合タクシーが広く普及しています。乗車前に目的地と希望価格をドライバーに伝え、了承を得られれば乗車できる、という仕組みです。がカメルーン市民の移動の足である黄色の乗合タクシーですが、車内での強盗被害が報告されています。日本大使館の「安全の手引き」にも実例が載っていますので、ぜひ参考になさってください。

また、カメルーンにも配車アプリがあり、当地ではロシア系の「Yango」というアプリが利用可能です。「Uber」と似たような使い方で、アプリ上で目的地を入力すると、料金が事前に表示され、配車を確定すると車がやってきます。(※アフリカあるあるかもしれませんが、地図やGPSが不正確な場合が往々にしてあり、ドライバーが配車を確定したユーザーに直接電話して、位置情報を確認することがよくあります。そのため、フランス語力が試されます… 位置情報をうまく伝える自信がない場合は、周りの信頼できる人に電話を代わってもらうのが良いでしょう)

黄色タクシーに比べて信頼性は高いと言われており、外国人にも広く使用される一方で、注意すべきリスクも存在します。例えば、呼んだ車に既に別の人物が同乗しており、そのまま乗車すると複数人で強盗被害に遭う、といったケースも報告されています。

そのため、以下のような対策が必要です。

  • 黄色の乗合タクシーは極力避ける
  • 黄色の乗合タクシーを利用せざるを得ない場合、単独乗車はせず、現地事情に詳しい、信頼できる人物と乗る。
  • 配車アプリ「Yango」のタクシーは評価4.8以上のドライバーを選ぶ乗合タクシーは極力避ける
  • 乗合タクシーを利用せざるを得ない場合、単独乗車は避けて、現地事情を詳しく知っており信頼できる人と乗る。
  • 配車アプリでは評価4.8以上のドライバーを選ぶ
  • 廃車アプリ「Yango」で呼んだタクシーの車内に他人がいる場合は絶対に乗車しない 乗らない

偽札の流通

カメルーンは現金社会であり、偽札の流通も問題となっています。

特に「2000フラン紙幣」は偽札が多いと言われています。

偽札は本物の紙幣と紙の質感が異なったり、印字やデザインがボケている、といった違いが見られます。お釣りは必ず確認するほか、不自然な両替の誘いには応じないようにしましょう。

麻薬使用者への注意

都市部では、薬物の影響下にあると見られる人物に遭遇することがあります。

実予測不能な行動を取る場合があり、実際に筆者が徒歩で帰宅途中、前方にいた不審な人物が通行人へ液体をかけるところに遭遇したこともありました。

どのような時も、不審な人物を見かけた場合は、距離を取り速やかにその場を離れることが重要です。

交通事情の危険性

カメルーンの交通は非常に荒く、以下のような状況が日常的です:

  • 無理な追い越し(対向車線侵入)
  • ウィンカーなしの急停止・急発進
  • バイクタクシーの無秩序な走行

徒歩でも事故に巻き込まれるリスクは高く、歩く際は「車の動きが見える左側」を歩くのが基本です(カメルーンは右側通行)。

夜間外出はリスクが高い

夜間は照明が不十分で視界が悪く、人通りも減少するため犯罪に巻き込まれるリスクが大幅に上昇します。(もちろん、日中であっても人通りの少ないエリアでは、同じくリスクは高いと言えるでしょう)

原則、夜間の徒歩移動は避けて、車での移動に限定するようにしましょう。

性犯罪リスク

女性に対する性犯罪は深刻な問題であり、子どもから高齢者まで幅広い被害が報告されています。強盗侵入時に発生するケースも多いです。できるだけ一人で行動せず、外出時は複数で行動することを心がけましょう。

(参考:在カメルーン日本大使館「安全の手引き」

警察によるチェックと賄賂リスク

市内では警察の検問や職務質問が頻繁に行われますが、不当な理由で賄賂を要求されるケースもあります。身分証明書を持っていないと、警察署に連行されたり、賄賂を請求されるリスクもあります。そのため、身分証明書を常に携帯するほか、ビザや滞在許可証は常に有効な状態にしておきましょう。

なお、長期滞在者の場合、身分証明書を常に持ち運ぶと失くすのが心配だ、という方もいらっしゃると思います。そのような場合、身分証明書のコピーを警察署まで持っていき、警察署による認証スタンプをコピーに押してもらう(フランス語で「Légaliser」と言います)ことで、身分証明書として代用可能です。ただ、スタンプを押されてから3ヶ月しか有効でないので、有効期限の失効には注意しましょう。

混雑エリアは特に危険

混雑する場所の中でも、特に様々な人が行き交う市場(マルシェ)は特に犯罪リスクが高い場所です。例として、ヤウンデにはいくつか青空市場がありますが、その代表格であるモコロ市場では、スリ被害が多発しているほか、暴力集団の出没例も報告されています。

※2025年には、「Microbes」と呼ばれる若年暴力グループがコロ市場へ出現しており、同市場への外出は控えた方が良いでしょう。

写真・動画撮影のリスク

無防備にスマートフォンやカメラを取り出すこと自体が盗難リスクになります。そのほか、軍事施設・政府施設・政府関係者を撮影した場合、警察の拘束を受けることがあります。また、カメルーン人には、写真や動画を勝手にとられることに抵抗を示す人が一定数いることに留意しましょう。

「ただ風景を撮っただけのに…」というつもりでも、政府・軍事施設や人物が写ってしまう場合、トラブルに巻き込まれてしまうリスクがあります。あらぬ疑いをかけられないためにも、また盗難のリスクを回避するためにも、むやみやたらに撮影することは避けましょう。

ヤウンデのエリアごとに治安レベルを紹介

筆者が住むカメルーンの首都「ヤウンデ」の治安レベルを、主要なエリアごとに紹介していきます。

バストス・ゴルフ地区

外国人居住者が多く、大使館や国際機関が集中する比較的安全なエリアです。警備員がアパートや大使館前に配置されているため、治安は比較的良いです。

ただし:

  • スリ被害は発生
  • 人通りの少ないエリアでは空き巣リスクあり

Tsinga・Briqueterie地区

イスラム系住民が多いエリアで、商業活動が活発です。ただ、外国人は少なく目立ちやすいほか、混雑しておりトラブルリスクがあります。訪問時は現地事情に詳しい人と同行するのが望ましいでしょう。

中心街(Centre-ville)

ヒルトンホテルや政府機関が集まるエリアですが、浮浪者も多く、スリのリスクがあります。また、中央市場(Marché Central)は非常に混雑するため注意が必要です。

モコロ市場周辺

犯罪リスクが高いエリアの代表格です。スリ・強盗が多発し、暴力集団の活動例もあります。基本的には近づかないことが推奨されます。

まとめ

カメルーンの治安は「戦争状態ではないが、日常的に注意が必要な国」と言えます。まず、訪問時には、外務省が危険レベル2以上に指定している危険地域は明確に避けることが第一でしょう。

その上で、都市部でも軽犯罪は日常的に発生することと、自己防衛意識が極めて重要であることを意識することが大切です。適切な対策を講じることでリスクは大きく下げることができますが、「日本と同じ感覚」で行動することは非常に危険です。

現地では常に一歩引いた警戒心を持つことが、安全に生活するための鍵となります。

コメントを残す