2月から始まったロシアのウクライナ侵攻から約半年が経ちました。ロシアのウクライナ侵攻は、これまで世界各国にさまざまな影響を及ぼしてきました。

その影響はアフリカにも及んでおり、さまざまな問題に悩まされています。これらは、現在の国際関係に基づくもので、現在貿易や外交といった国際関係に注目が集まっています。

本日は、ウクライナ侵攻を軸としたアフリカを取り巻く現在の国際関係についてまとめていきます。

記事リンク:

https://theconversation.com/russias-war-with-ukraine-five-reasons-why-many-african-countries-choose-to-be-neutral-180135

Russia’s war with Ukraine: Five reasons why many African countries choose to be ‘neutral’

「ロシアのウクライナ侵攻に、多くのアフリカの国々が中立の立場をとる5つの理由」

ウクライナ侵攻を受けて、現在の国際関係

現在の国際関係を簡単にまとめると、ロシアのウクライナ侵攻に反対する国々と直接的には批判しない国々の2つのグループに分かれます。反対している国は主に西側諸国の国であり、アメリカやヨーロッパ、また日本もウクライナ侵攻に反対の立場を取っています。これに対し、ロシアを批判する立場を公にとらないのは、中国インドアフリカの半数の国々などです。

これは、3月2日に行われたロシア非難決議の国連総会で明らかになりました。以前投稿したこちらの記事でも触れられていますが、西側諸国はロシアに対する軍事行動の即時停止を求める決議に対して賛成の立場をとっています。一方、中国、インド、アフリカの約半数の国は、棄権不参加等を通して直接的には反対しないものの、実質的なロシア支持を示しています。

なぜこれらの国々が、ロシア側の立場についているのでしょうか。以下では、それぞれの思惑について見ていきます。

中国は、以前から対米という立場をとっており、今回のウクライナ侵攻でもアメリカと対立する立場をとっています。しかし、ロシア批判を大々的にすることで自国が前面に出ることは避けており、他にも賛同する国を味方につけることで、中立国を増やそうとしているように思われます。

インドは、独立して以降、「戦略的自律性」を掲げています。これは、インドの国益を重視した外交を行うということです。インドに対しては、アメリカも中国・ロシアも接触を続け、自分と同じ側にしようと目論んでいます。インド自身は、上記でも触れたように国連総会において棄権という立場をとっています。というのも、2000年から2020年の間で兵器輸入の66.5%をロシアに頼っているからです。インドは隣国のパキスタン、アフガニスタンと国境や領土問題を抱えており、防衛力が必須となっています。

インドは、他国がロシアに輸出入制限をしていることを受けて、値下げされたロシア産原油を買っていたり、ロシアから大量の肥料を輸入していたりと、国益を重視した行動が見受けられます。インドは世界で第3位の石油輸入、消費国であり、その影響は非常に大きいと考えられます。また、人口の多いインドで食糧を安定的に供給するには、ロシアからの肥料の供給が不可欠であるとしています。インドはロシアからの輸入に依存していることが見て取れ、インドがロシア側から動くことは考えにくいでしょう。

アフリカでロシアを支持している国々は、西側諸国のロシアに対する経済制裁が、アフリカのエネルギー危機食糧危機の原因になってるとして、西側諸国を非難しています。アフリカがロシアを支持するのには5つの理由があると今回扱っている記事では紹介されています。

1つ目は、エネルギーを独善的に確保するために動いているように感じていることです。それまで、気候変動対策のために先進国が発展するためにたくさん使ってきた化石燃料を、途上国には使わないようにと促してきました。しかし、ウクライナ侵攻によるエネルギー危機で、先進国がこぞって化石燃料を使いたがっていることを不快に思っているようです。

2つ目は、ロシアへの食糧輸出制限がアフリカの食糧危機に起因しているにもかかわらず、アフリカへの資金援助が不十分であることです。以前投稿したこちらの記事にも書かれているように、ウクライナとロシアは世界的な小麦の産地であり、2019年時点で、ロシアは小麦の輸出量世界第1位でした。アフリカも小麦供給の多くをロシアとウクライナに依存しており、輸出制限はアフリカの小麦供給に大きく影響を与えました。このように、アフリカの食糧危機が西側諸国のせいであると考える風潮があります。

3つ目は、アフリカはNATOを東側に侵略してきている侵略者だと考えていることです。南アフリカの大統領シリル・ラマポーザ氏は、NATOが東方に勢力を拡大してくることが東側地域の不安定化に繋がるという警告に何年にも渡って注意を払っていれば、戦争は回避できたはずだ、と述べています。過去、NATOはリビアの内戦に軍事介入したことにより、北アフリカとサヘル地域に混乱を招いたとし、一部のアフリカの国々の間では嫌がられる存在となっています。そんなNATOと対立するロシアを支持しているということです。

4つ目は、過去10年間でロシアがアフリカのいくつかの国と重要な軍事同盟を組んだということです。リビア、エチオピア、マリ、ナイジェリアなどがそれにあたり、武器の輸入や民間軍事会社による請負業者の雇用が行われています。

5つ目は、ロシアのウクライナ侵攻をアメリカとロシアの代理戦争と考え、冷戦を回想していることです。アフリカは冷戦により独立したものの、内戦など様々な苦難があったため、巻き込まれたくないという意識があります。このことから、中立の立場をとっているということです。

その他にもアフリカは西側諸国に対して不満を抱いており、ロシアを支持しています。一つは、西側諸国のウクライナ避難民に対する援助とアフリカ・中東の避難民に対する支援に差があることです。ウクライナ侵攻が始まってから、西側諸国はウクライナ避難民に対する支援はたくさん行われてきたのに対して、今まで、中東やアフリカの避難民に対しては支援が不十分であったことに対して不満を抱いています。

またもう一つは、そもそも西側諸国は植民地時代の宗主国であったことです。植民地から独立した後も、宗主国はアフリカに対して自国の利益になるような行動をとってきました。例えば、フランスは西アフリカを他国から乖離させるために、主要都市以外のインフラを整えなかったり、フランスの利益になるようにアフリカのお金を設定してきました。

また、アフリカに大きな影響を及ぼす中国がロシア支持の姿勢をとっていることから、それに続いている国もあります。

このようなことから、アフリカではロシアのウクライナ侵攻に対する国連総会での棄権、不参加が目立ったということです。

アフリカのロシアとの関係、西側諸国の努力

これに対して、アフリカとロシアは長い間経済的・軍事的に関係を持っていました。アフリカは様々な民族が行き交う土地であり、クーデターや紛争などが度々起きています。そのようなクーデターなどが起こった場合に軍事的な支援を行っていたのがロシアで、特に独立時などのクーデターに支援を行うなどして独立の手助けを行っていたことがあげられます。また、ロシアは中国と同様アフリカに対する投資を行ってきており、宗主国からの乖離を手助けしてきました。こうして、西側諸国への悪いイメージと押し後の長年の関係から、アフリカの国々の中にはロシアのウクライナ侵攻を批判しない国があります。

このような傾向に対して、西側諸国の中にはアフリカと協力しようと考え、行動する国があります。フランスのマクロン大統領は、7月25日から7月28日までカメルーン、ベナン、ギニアビサウを訪問し、軍事支援や食糧増産による関係強化とアフリカをフランス側につけることを目指しました。しかし、長年のロシアや中国との関係からフランスの思惑通り運ぶことは難しいように考えられています。

また、アメリカも8月7日から12日までアフリカの3カ国を訪問したものの、長年に及ぶ中国の投資やロシアの軍事的支援といった観点から、思ったようにいかないようです。

今後のアフリカの可能性と国際関係

中国、インド、アフリカの半分の国々はロシアのウクライナ侵攻を批判しないという立場で一致しています。また、ロシア、中国、インドは今後成長が見込まれるアフリカへの影響力を高めようとしており、貿易や投資の拡大を目指しています。

以前投稿したこちらの記事の通り、アフリカでは、長い間中国が最大の貿易相手国となっています。中国との貿易額は2019年の時点で1920億ドルであり、16年間順調に成長し続けているとのことです。中国は、アフリカと「win-win」な関係を構築するとして、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)にも好意的であるとされています。

2020年はその貿易高が1870億ドルまで落ち込んだものの、中国は12年間アフリカの貿易最大相手国であるとのことです。(参考記事

インドも2005年から続くCII-EXIM Bank Conclave on India–Africa Project Partnershipなどを通して、インド企業がアフリカに進出し拡大していくための活動が行われてきました。インドは、2018年度会計においてアフリカの第4位の貿易相手国であり、2020年から2021年の間にその貿易額を560億ドルから895億ドルに増加させているとのことです。また、1996年から2021年の間でインドの対アフリカ投資額は730億米ドルにまで及び、世界トップ5に入るとのことです。

今後も進行しているウクライナ侵攻と、各国の反応には目が離せません。

ご相談・お問い合わせ

アフリカ・ルワンダへのビジネス進出をご検討の際は、当サイトの運営に関わっているレックスバート・コミュニケーションズ株式会社までご相談・お問い合わせください。

コメントを残す