元記事:Egypt issues multi coloured integrated services cards for disabled people

こんにちは!Pick-Up!アフリカです。

本日は、エジプト政府が障害者支援を進展させ、福祉・公共サービスへのアクセスを容易にするための3色の「統合サービスカード」を配布し始めたというニュースをご紹介いたします。

アフリカ全体では、現在6000〜8000万人が障害を持っていると推定されており、アフリカでは障害者支援に関する取り組みが推進されています。2015年に採択されたアジェンダ2063においても、優先事項として「障害者を含む人々の社会保障と保護」が掲げられています。

アフリカの障害者の割合は10%ですが、貧困地域では20%に上り、障害者は教育や雇用の機会を得られず、最貧困層として乞食生活を余儀なくされる人が多くいます。障害を持つ主な原因は、栄養失調・病気・災害・紛争などで、アフリカの障害者数は増加傾向にあります。(参考記事

そこで本日は、画期的な障害者支援の一つとして、エジプト政府の新しい取り組みをご紹介いたします。

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エジプトにおける障害者の現状・今回の取り組みに至った背景

エジプトにおける障害者の現状

国連の推定によると、エジプト国内には1200万人の障害者がおり、これは全国民の約15%に相当します。(日本は936.6万人、全人口の7.4%)エジプトにおける障害の原因や問題はアフリカ地域全体と似通っており、障害の原因としては栄養失調や衛生的な水へのアクセスがないことがあげられます。そして、エジプトにおいても障害者の生活水準は障害のない人と比べて低いのが現状で、貧困率や失業率、識字率において差が出ています。また、貧困の結果としての高い出産率は、女性の体を弱くし、障害を持った子どもが生まれやすくなります。

また、エジプトでは障害者に対する差別も深刻です。障害は神からの罰、悪霊のせいだと思われています。この思想は、政府による障害者支援への道が遠のいている原因の一つでもあります。(参考記事

これまでの障害者支援とその課題

エジプト政府は、2000年代から障害者支援に着手し、法改正や国際的な取り組みへの参加を通して障害者支援を進めてきました。ここでは、政府による取り組みの歴史と、既存の取り組みが抱える課題についてご紹介します。

憲法への明記

2014年の憲法では、国家が障害者の健康や教育の権利、娯楽等の基本的人権を保障し、雇用機会や障害者のニーズに沿った公共施設や環境の提供、政治的権利の確保することが義務付けられています。(参考記事

障がい者の権利に関する条約(UNCRPD)の批准とSDGsの採択

エジプトは2008年に障がい者の権利に関する条約(UNCRPD)を批准しました。また、障害者雇用や同一賃金、差別解消を掲げるSDGsも採択しています。この二つの取り決めの批准によって、エジプト政府は障害者支援の現状を定期的に報告することになっています

障害者に関する法改正

エジプトでは1979年から「リハビリテーション法」という法律の中で障害者に関して言及されていましたが、2018年に新しく「障害者の権利に関する法律」が制定されました。

具体的には以下の内容が加わりました。

★全ての公共施設を障がい者が利用できるような造りにする。

★障害者に課す公共交通機関の税を軽減する。

一方、新しい法律には、以下のような課題があるとされています。(参考記事

★障がい者向けの建物の改修について具体的な規定が示されていない

★公共施設以外に障がい者が利用を必要とするサービス(民間の建物やビジネスサービスなど)に関する規定がない

このように、エジプトは障害者に対する積極的な姿勢をアピールしてきましたが、法改正の進展とは裏腹に実際の障害者支援の実施に手が回っていないことが問題視されてきました。これによって障害者が暮らしやすいインクルーシブな社会の構築が進まないことが課題となっていました。(インクルーシブな社会はこちらで詳しく解説しております)

今回始まった「統合サービスカード」の先駆け、ホワイトカードの導入

ホワイトカードは2018年に導入されたカードで、特別なニーズのある障害者に対し、心理的・身体的検査を通過した場合に提供されるものです。このカードを持つ障害者は、交通費・学費・病院での無料診療などのサービスを受けられることになりました。(参考記事

新しい「統合サービスカード」の導入

2022年9月、エジプト政府は「深刻な障害を持つ270万人の国民に統合サービスカードを2023年までに配布すること」を目標として掲げました参考記事)そして、エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、12月に開催された障害者祝賀会にて、その実施を社会連帯省に課しました。大統領は、エジプト国民の生活向上のためには、障害者支援が最優先事項だと主張し、交通通信省や青少年スポーツ省などの行政機関にも協力を呼びかけました。(参考記事

それを受け、社会連帯省は今年の2月16日、障害者が福祉サービス・公共サービスを平等に受けられるようにするため、三色(青・緑・紫)の「統合サービスカード」を配布し始めたと発表しました。障害者は、持っている障害の深刻さに応じ、配布されるカードの色が決まり、それに応じて受けられるサービスの内容が変わります。青色は深刻な障がい者用、緑色は中程度の障がい者用、紫色は軽度の障がい者用となっています。具体的な提供サービスの内容は以下のようになっています。

・2種類の年金の受給

・学校や大学への受け入れ

・雇用の5%を障害者のために用意すること

・税・関税の免除

・病院の無料検診

・政府が持つ住宅の提供

・交通費の割引

・スポーツクラブや背少年センターの会費の免除 など

この新しい「統合サービスカード」を多くの障害者に提供することで、エジプトは障害者支援の実践を進め、障害者の生活向上を図ると共に、障害者が様々なサービスへアクセスしやすくなる、インクルーシブな社会が構築されることを期待しています。

アフリカの他国における障害者支援の取り組み例

冒頭で触れたアジェンダ2063にも掲げられている障害者支援は、アフリカ全体で進められているものの、国によって進捗状況は異なります。私たちPick-Up!アフリカは、過去にもアフリカ各国におけるさまざまな政策を紹介してきました。ぜひ参考にしてみてください。

南アにおける障害者支援

南アフリカでは、教育や雇用、言語の面で障害者に寄り添う取り組みが活発に行われています。

南アでは近年インクルーシブ教育が推進されており、2020年には、障害サミットの一環として障害を持つ数百人の学生に対し、就労準備プログラムを提供しました。このような取り組みは、障害者が抱える学校→社会への移行の難しさを解決するポテンシャルを持っているとのことです。

南アフリカでは、The Sub-Machineという障害のある人だけを雇用する世界初の字幕制作会社が創設されました。この企業は、ろう者向けの手話を含むインクルーシブな字幕サービスを提供しています。

南アフリカでは、手話を公用語に含めようという動きがあり、手話を法的に承認することによって、障害者にとってより住みやすい環境を作ることが期待されています。また、南アフリカの学校では手話が教育言語として公式に認められている他、「手話言語」という科目もあるそうです。

ケニアにおける障害者支援

ケニアでは、LeaveNo One Behind(LNOB)連合という団体が、障害のある人々が公共サービスを問題なく利用できるようにするため、データを収集し、ターゲティングや政策に関する課題を明らかにし、働きかけを行っています

ルワンダにおける障害者支援

ルワンダでは、新型コロナの影響を受け、多くの子どもたちが教育を受けられない状況に置かれました。それを受け、政府とCSOの協働で、障害のある子どもに対し、太陽光エネルギーを利用したラジオと、レッスンの内容を録音したフラッシュディスクを配布しました。

アフリカ全体で進む障害者支援 ーアフリカ障害者議定書ー

アフリカでは、国家レベルだけでなく、地域レベルでの取り組みも進んでいます。例えば、2018年にはアフリカ障害者議定書(African Disability Protocol)が採択されました。これはバンジュール憲章の選択議定書の一つで、エジプトを始めとする国々がAU盟国に採択を促しています。このような地域単位での枠組みは、アフリカの文脈に沿った独自の課題を扱っており、画期的なものです。(参考記事)直近の2月13日、この議定書はエジプトなどの支援のもと、ナイジェリアが批准しました。(参考記事

今後、アフリカにおける障害者支援はどのように進んでいくのでしょうか。引き続きニュースを発信して行きますので、お楽しみに!

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