★目次★
アフリカには、マラリアやデング熱、エボラ出血熱など、世界的にもよく知られる感染症が多く存在します。適切な対策や対処を行わない場合、アフリカ渡航を十分楽しめないどころか、最悪死に至る可能性があります。
この記事では、アフリカを取り巻く感染症の背景や、現在行われている公衆衛生上の取り組みについてわかりやすく解説します。
なぜアフリカでは感染症の課題が大きいのか
★脆弱な医療インフラと経済的要因★
アフリカは先進国に比べて公衆衛生インフラが非常に脆弱な地域です。世界銀行やWHO(世界保健機関)のデータによると、世界の人口1万人当たりの医師数は国によって最大56.7人に達する一方で、最小0.5人にとどまるなど大きな格差があります。また、貧困や医療体制の未整備により、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ地域)における2023年の1人当たり医療費はわずか79.37米ドルにとどまっており、多くの人が十分な医療を受けることが難しい状況です。さらに、アフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)によると、公衆衛生インフラの不備や迅速診断テスト(臨床検査)の不足、医薬品の供給体制の弱さなども重なり、感染症の早期発見や治療が遅れる要因となっています。
★衛生環境の悪化と紛争・人口増加の影響★
感染症の拡大には、生活環境や社会情勢が大きく影響します。気候変動や貧困に加え、安全な飲料水や適切な衛生設備の不足が重なることで、コレラなどの水を介した感染症が広がりやすくなります。 さらに、戦争や内戦などの紛争が発生すると、インフラの破壊や避難民の増加によって感染症リスクが一気に高まります。実際に、スーダンやイエメンなど紛争の影響を受けた国々では、重要な指標となるワクチンの接種率(DTP3)が大きく低下しました。現在、低所得国においてワクチンを一度も接種していない「ゼロエーズ」の子どもたちの約30%(290万人)が、紛争の影響を受ける脆弱な地域に住んでいます。 また、人口増加も課題であり、Gaviの支援対象国では2024年の出生数が2019年と比べて250万人増加したため、より多くの子どもにワクチンを届ける必要が生じています
★野生動物や媒介生物による感染リスク★
人と動物の間で感染する人獣共通感染症が多くあり、その多くは野生動物に由来しています。特にアフリカでは、野生動物との接触機会が多いことや、蚊などの媒介生物が豊富であることから、感染症のリスクが高くなっています。
例えば、野生動物の肉の取り扱いが、サル痘やエボラ出血熱などの感染拡大に関与しているとされています。
動物と人の間で感染する「人獣共通感染症」や、薬剤耐性(AMR)といった新たな公衆衛生上の脅威も存在します。これらのリスクに対応するため、気候変動にも強い「One Health(ワンヘルス)」という包括的なアプローチの推進が求められています。
アフリカで感染可能性のある病気
データや各機関の報告において、アフリカ大陸内で監視や対策の対象となっている代表的な感染症には以下のようなものがあります。
・マラリア:マラリア原虫(Plasmodium)という寄生虫によって引き起こされる疾患。最も多い症状は発熱と悪寒で、適切な治療を医療機関でうけなかった場合最悪死に至る。
アフリカで非常に感染可能性の高い病気。
・黄熱病:黄熱ウイルスによって引き起こされる感染症で、主にネッタイシマカに刺されることで感染する。発熱や頭痛、吐き気などの症状が出た後、一度回復したように見えてから重症化し、黄疸や出血症状、腎不全を引き起こすこともある。致死率も20〜50%と高く、注意が必要な病気の一つである。
・エボラ出血熱 / エムポックス(サル痘):
アフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)が緊急事態として監視や情報更新を行っている感染症です。 エボラ出血熱は、エボラウイルスに感染した動物(コウモリ、霊長類など)や感染した人の体液から感染する感染症。過去にコンゴ民主共和国で大流行しました。治療が遅れると致死率が非常に高くなるため、突然の発熱、全身倦怠感、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどを感じた場合には、すみやかに医療機関を受診しましょう。
大規模なアウトブレイク(感染爆発)を防ぐため、ワクチンの普及や備蓄が国際的に進められている疾患です。
その他にも、以下のような病気に感染する可能性があります。
- 炭疽症
- 鳥インフルエンザ
- チクングニア熱
- 新型コロナウイルス感染症
- クリミア・コンゴ出血熱
- デング熱
- B型肝炎
- C型肝炎
- E型肝炎
- HIV
- ラッサ熱
- マールブルグ熱
- 髄膜炎菌性疾患
- 中東呼吸器症候群(MERS)
- ペスト
- リフトバレー熱
- 結核
- ジカウイルス感染症
渡航者ができる感染症対策
渡航前に適切な準備をすることで感染のリスクを大きく減らすことができます。
以下では、必ず検討するべき感染症対策を二つご紹介します。
①ワクチン接種
渡航前にワクチン接種を検討しましょう。近くのトラベルクリニックなどで、ご自身の状況に合わせて必要なワクチンを相談することをおすすめします。
アフリカ渡航前に打ったワクチンの種類や値段は、こちらの記事にまとめています↓

②蚊対策
マラリアやデング熱など、蚊を媒介して感染する病気は非常に多いため、蚊除けは感染症対策として非常に重要です。以下のような対策が日常的に求められます。
・虫よけスプレー…日本の虫除けは優秀なため、渡航前にドラッグストアなどで購入することをおすすめします。部屋用と体用を準備すると心強いでしょう。厚生労働省のマラリアの対策ページでは、濃度が高いDEET(ディート)製品が効果があるとされています。
・長袖・長ズボン…アフリカの多くの国は気温が高いため、半袖や半ズボンを着用したくなりますが、蚊除けには物理的な対策も必要になります。日本から渡航する際には、長袖長ズボンを忘れないように持っていきましょう。
・蚊帳…蚊は夕方以降、活発になるので、寝ている間に刺されないように蚊帳を使用しましょう。多くのホテル・宿では、蚊帳が準備されているため、日本から持っていく必要はありません。
感染症対策に向けた現在の取り組み
アフリカでは感染症対策のため、国際機関や各国の専門機関がさまざまな取り組みを行っています。
★ワクチン普及の取り組み(Gaviなどの支援)★
Gaviワクチンアライアンスは、2000年の設立以来、低所得国で12億人以上の子どもたちに予防接種を行い、小児死亡率の半減に貢献してきました。特に紛争地域では、NGOなどの人道支援組織と連携した「ゼロエーズ予防接種プログラム(ZIP)」を通じて900万回分のワクチンを投与し、これまで見過ごされていた100万人の子どもたちに免疫を提供しています。
★Africa CDCの設立とグローバル連携★
アフリカ大陸内全体での感染症対策の強化も進められています。アフリカ連合(AU)の公衆衛生機関として、2016年1月に「アフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)」の設立が承認され、2017年1月に公式に発足しました。Africa CDCは、加盟国が疾病の脅威を早期に検知・予防・対応できるよう、公衆衛生機関の能力強化を支援しています。 近年では、日本の「国立健康危機管理研究機構(JIHS)」とも協力覚書(MOC)を締結しました。これにより、感染症サーベイランスの強化や共同研究、公衆衛生人材の育成など、グローバルヘルス・セキュリティ強化に向けた連携が推進されています。
おわりに
アフリカでの感染症リスクは依然として存在しますが、決して悲観的な状況ばかりではありません。Gaviワクチンアライアンスなどの国際的な支援により、低所得国で各種ワクチンの接種を受けた人数は過去最多となり、着実に感染予防が進んでいます。また、2017年に発足したアフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)を中心に、日本の国立健康危機管理研究機構(JIHS)との連携など、アフリカ大陸全体での感染症監視体制や人材育成も力強く推進されています。
正しい知識を持ち、渡航前にワクチン接種や防蚊対策などの準備をしっかりと行うことで、感染リスクは大きく減らすことができます。アフリカへの渡航を安全で実りあるものにするためにも、出発前には最新の情報を確認し、万全の対策を心がけてください。
参照情報一覧
World Bank(世界銀行):Current health expenditure per capita (current US$) – Sub-Saharan Africa
World Health Organization (WHO):Density of physicians (per 10 000 population)
Africa CDC(アフリカ疾病予防管理センター):About Us (Objectives, History)
国立健康危機管理研究機構(JIHS):アフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)と国立健康危機管理研究機構(JIHS)が協力覚書を締結(2026年3月5日プレスリリース)
厚生労働省検疫所(FORTH)/国立感染症研究所(NIID)/厚生労働省:各感染症(マラリア、エボラウイルス病、黄熱、コレラ、デング熱など)の概要・症状・予防法に関するトピックスおよび疾患別情報

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